第3話

 ③某月某日某時

 電子メール


 親父が入院したので部屋の掃除やら整頓をしていた。なんだか不思議と親父との色んな思い出の物が出て来て中々整理がつかなかったんだけど、実は思いもしないものが出て来たんだ。

 それは、躰が木製の仏像で顔がマリア様のへんてこな彫像何だ。

 そう、これはね。

 今でも思い出すんだけど、此処では夏になると巌流島から花火が打ちあがるんだ。その最中に散歩していて浜辺で拾ったんだ。薄暗い浜辺で打ちあがる花火を見ながら波の音を聞いていたら足元に転がって来てそれを親父が拾った。

 なんせ顔はマリア、躰は仏様。

 何とも言えない奇妙なものだろう。でもさ、そいつを見ていたら不思議と子供心に親父と過ごした夏の思い出が浮かんできてさ。

 なんか涙が出てきちまった。

 

 だから急に海岸沿いを歩いてみたくなった。そしたら不思議とそこで赤い風船を拾った。それを拾うと何とも言えない程、僕の心をより一層哀憐の思いにさせたよ。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る