第6話 1ヶ月後

アイリが王都に向かってから1ヶ月が過ぎようとしていた。


ルクスも最初の1週間は"アイリと分かれてしまった悲しみ"を利用して魔法の勉強をしていたが、それをずっと続けていくと流石に怪しまれる可能性があるため、村の人達が"少しずつ立ち直っている"と思わせる様に外に出始めるようになった。


勿論、村の人達からの目線で、の話だ。


その頃、村はルクスの事もあるが、別の事でも慌てていた。


それは、勇者パーティの来訪である。


勇者パーティが全員揃い、魔王討伐の為、それぞれの村や町に行き最後の挨拶に行くそうだ。


魔王討伐は遠足の様に数日で終わるわけがない、下手すれば何十年もかかる、それまでは里帰りだって出来るはずがない、なので悔いが残らない様にと彼らは仲間を連れて来るのだ。


仲間を連れてくるのも理由がある、人は自分で確認しないと安心できない生き物だ、例えばアイリが1人帰ってきて、仲間と共に魔王を倒しに行くと言っても、その仲間がいなければ"もしかしたら勇者はいないのかもしれない"等変な憶測が生まれ、村の人達も安心して見送れない(そもそも魔王討伐に行く事自体が心配の種なのだが)


とにかく、双方憂(うれい)がない様に勇者パーティとしてこの村に帰ってくるのだ。


ルクス(そうなると、俺は出迎えか?)


ルクスはアイリと婚約関係にある、つまりこれが最後になるかもしれないのだ。


そんな事を考えていると、不意に声をかけられる


ルクス父「ルクス!お前こんなとこにいたのか!」ハァハァ


息を切らしながら父が駆け寄ってくる


ルクス「父さん?一体どうしたの?」


ルクス父「話は知っているな?」


唐突に言われる、が多分これだろう


ルクス「アイリが帰ってくる事なら知ってるけど」


ルクス父「なら大丈夫だ、お前暇だろ?」


どうやら当たっていたらしいそうなると


ルクス「まぁ、暇だけど」


ルクス父「ちょうどいい、お前村長達と一緒に出迎えに行ってこい!」


やっぱり、そうなるか


ルクス「わかった、行ってくるよ」


そう言って村の入り口に向かう、ここで何か言っても結局"婚約者"又は"幼馴染み"を理由に向かわされるだろう、なら文句は言わずさっさと行くべきだろう。


ルクス父(やっぱり彼奴もアイリに会いたかったんだな)


そうとは知らずに父は息子の後ろ姿を微笑ましく眺めていた。


————————————————————

~村の入り口~


村長「おールクス、よく来たなぁ」


「チッ」


「なんだよ彼奴」


「死ねばいいのに」


村長「今しゃべったやつ密告な」


ルクス(相変わらず村長は真面目だなぁ)


曲がったことが大嫌いな村長、特に相手の前だと何も言わないのにいなくなって、陰でこそこそ言う人間を嫌っており、陰湿な虐めをしているもの達などには相当きついお仕置きをしている。


ルクス「遅れてすいません、大丈夫でしたか?」


村長「いや、まだアイリが帰ってきていないから大丈夫じゃよ」


そう言って集団の中に入る、目線がこちらに向くが、いい加減諦めるか、学習してほしい。


ルクス「あとどれくらいで着くのですか?」


村長「なんじゃ、そんなに会いたいのか?」


ルクス「まぁ、そんなとこです。」


本当はこんなところにいたくないから早く来てほしいだけなのだが、相手が勝手に解釈してくれるのならそれでいい。


村長(全くお熱いのぅ、ルクスに剣の才能がないのは悲しいが、まぁ大丈夫じゃろう)


そうこうしているうちに馬車の音が聞こえ、そして


アイリ「ただいまみんな!」


アイリが帰ってきた。


————————————————————

リムル「へぇ中々良いところじゃないか」


賢者「そうですね、私たちの村となんか似ています」


聖女「空気が美味しい、久々に自然の中に入れた」


村長「よくぞ来てくださいました。勇者様、........してそちらのお二人は?」


リムル「ああ、紹介が遅れたね、改めて僕の名前はリムル、勇者だ、そして」


賢者「ミアよ、賢者に選ばれたのそして」


聖女「アミです、私達は双子で私が姉、ミアが妹です、あ!聖女です。」


村長「リムル様、アミ様、ミア様ですね、わかりました、ささどうぞこちらへ、失礼ながら宴の用意が出来ておりますのでどうぞご参加ください。」


リムル「悪いね、じゃあ行こっか」


アミ「はい」


ミア「うん!」


そう言って3人は村長に連れられていく、そしてアイリはと言うと


アイリ「........久しぶりね」


ルクス「...........ああ」


真っ先にルクスに気付き、ルクスのところに来ていた。


しかし


ルクス(目付きが全然違うな、まるで汚物を見ている様な目だ)


声とは裏腹に、仕草や態度、目付きがとてつもなく変わっていた。


アイリ「リムルが行ったから私も行くね」


ルクス「ああ」


そう言って横切ろうとするとふと思い出したかの様に止まりこちらを見る


アイリ「後で用があるから、呼ばれたら来てね」


そう吐き捨てる様に言い、去って行った


ルクス「.......................」


ルクスは黙って、会場まで歩いて行った


————————————————————

~宴会場~


今代の勇者はノリが良く、村の人達も勇者と共に楽しんでいた。


リムル「いやー!久しぶりにこんなに楽しめたよ!」


村長「楽しんでいただき光栄です。」


リムル「ああ!王都だと不慣れな食事ばっか出されてたから、こう言うのが食べたかったんだよ!あー僕の愛しの妹にも食べさせたかった!」


ミア「リムルまた妹の話をするー」ぶー


アミ「仕方ないでしょ?でも、たしかに妬けますね」


アイリ「同感同感、妹ちゃんが羨ましいよ」


リムルは周りの村人達に気を配りながら、本当に楽しそうに食べていた。


話を聞く限り重度のシスコンらしい


ただ問題は、アミとミアの2人はまだわかるが、ルクスという婚約者がいながらまるで恋人の様にイチャイチャしているアイリである。


一部の人間はルクスを見てニヤニヤと笑い、ある一部はルクスに同情の目を向けていた


ルクス(...........帰りてえ)


久しぶりの再会なのにほとんど話す事がなく、周りからはさまざまな目線を向けられる、とてもじゃないが居心地はよくない、すぐ様ここから離れたかったが、後で用があると言われた以上勝手に帰るわけにはいかず、この地獄を耐えている。


リムル「...........!!!」


ルクス「...................」


ミア「リムルどうしたの?」


リムル「いーやなんでもない」


少しの間リムルとルクスは目があったが、すぐに顔を変え、すぐにリムルの方を見る


そして、この宴で1回も話さないまま、終わり、リムル達勇者一行を今日泊める予定だった家まで案内しようと他の村人がいて、ふと止められる


リムル「ごめんね、ちょっとそこの彼に用があって」


ルクス「..............」


そう言ってルクスを指をさす


リムル「他の人達は離れてほしい、これは僕達の話なんだ」


そう言って、ルクス以外の村人をこの場から離れさせ、ここには勇者パーティとルクスしかいなくなった


リムル「さて、君を呼んだのは他でもない」


リムル「........彼女、アイリとは僕が結婚する」


ルクス「...........は?」


アイリ「は?じゃないわよ、全く本当に無能なんだから」


ルクス「いや、唐突に言われて、はいそうですかと納得できる人間がいるかよ」


リムル「それもそうだね、じゃあ教えてあげるね」


リムル「彼女は君のような、剣の才能がない無能婚約者のせいで辛いんだって、だから僕が婚約者を変わってあげれば、万事解決かな?と思って」


リムルの話は続く


————————————————————

続く

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