坂道の花屋

彼女と出会ったのは

坂道にある花屋の店先だった

薄いシフォンが幾重にも重なり合ったドレスは

鮮やかな黄色に見えた


初めて会ったのに思わず微笑んでしまったのは

雲ひとつない晴天だったから

そんな空を眺めていた彼女は

わたしと目が合って微かに首をかしげた


青い空に黄色の衣装

その色の組合せに

わたしの心は

楽しげにおどりだした


ひとしきり躍ったあと

目で挨拶をして残りの坂道を下った


振り返ると

彼女はまた空を見ていた


坂を下りて横断歩道を渡った後

わたしは思った

連れて帰ればよかった


彼女の名はラナンキュラス

丸くなるほどに花びらを重ねた

おとぎ話のような花だ


https://kakuyomu.jp/users/rubylince/news/16817330654474161324

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る