悲しみの質量

きみを送りひとり帰る

山へと続くなだらかな坂道は

綺麗に整備されたドライブウェイ

歩道を行く人はほとんどいない

鈍色にびいろに広がる雲

風には少しだけ春の気配


住宅街を過ぎ

民家が間遠になり

さらに高みへと続く道には

いよいよ人影もなく

白い箱に収まったきみと

異世界を歩いているような

夢路となる


冬枯れの木々のアーチをくぐると

雪が舞い始めた

なごり雪だろうか

独り言



きみを託したおごそかに静かな建物を振り返ると

不意に日が射してきた

その光の中

きみとの最後の散歩道を

ひとり帰る


下界の沿道の植樹帯は

冬の前に剪定されたのか

てっぺんが平らなまま

けれども

そのうち

陽射しが暖まるとともに

早緑さみどりの新芽が

自由に

元気に

伸びてくるのだろう


https://kakuyomu.jp/users/rubylince/news/16817330653622349630

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