詩を少々 2022~2023

紅瑠璃~kururi

宇宙の記憶

海という宇宙

楽園リゾートの海でさえ

海原に面と向かうと恐怖を感じるものだ


海面の下は未知なる宇宙であり

海神わだつみの気配を感じるからなのだろうか


とはいえビーチは燦燦と明るく

寄せる波は繊細なレースのようだ


浅瀬に一歩足を踏み入れると

太陽に温められた海水が身体にまとわりつき

ほどよい浮力が心地よい


光が戯れる砂地の明るみを経て

クマノミが遊ぶサンゴ礁を抜け

さらに深い青の方へといざなわれる


海の断崖ドロップオフは青の階調で

深くなるほど黒に近づく


その薄闇から唐突に現れるのは

巨大なナポレオンフィッシュ

窪みの暗がりには

いぶし銀のサメが並んでいたりもする


こちらが観客なのか

あちらが観客なのか


底知れないドロップオフの中空の

アンダーウォーター劇場


息継ぎで海面に浮上するまでの

束の間の観劇は

恐怖を畏怖へと変容させてゆく


https://kakuyomu.jp/users/rubylince/news/16817139556652239568

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る