ブライング5 - パライソ

| 斉藤 博之



「さあ、次は誰だ?」


「次わたしー」

「えーまた? あんた一回多いって」



「よっしゃ! 二人同時だ! 壁に手をつけ!」


「いやーん、やった! ライトきてきて」

「もう! マコト、私も同じだけ突いてよ! 差つけたら怒るかんね!」


「当たり前だろ? おら、いくぜ!」



俺はここに来て何日経つかわかっていない。


わかっているのはここにいる女の子が飛び切りステキなやつばかりだってことだけだった。


心と身体が満たされたなら顔なんてどうでも良いことで。



「おま、もう濡れ濡れかよ」


「当たり前じゃん。ねーレン、早くぅ」



みんな股を濡らして笑顔で俺を待ってくれている。


「う、イク!」


「もーそんなにうちの具合が良いの〜嬉しい〜シンジ〜」



藤堂のやつはわかってたんだな。


ありがとうよ、藤堂。こんな愛の巣を用事してくれてよ。


お前こそが勇者様だぜ!



「うら〜」


「ちょっと! おっそい! もっと早く! あっ、そう、あっ、そ、あん、いい、いいよ! ターちゃん! いけそう、かも!」



まったく可愛い奴らだぜ! 正直今体重がどれくらいかわかってないが、全力で愛すぜ! うっ!


「もー早い〜こんだけ? 全然垂れてこないじゃない!」


「いや〜出しっぱなしでさ〜ごめんよ〜」


「嘘嘘〜嬉しい! ちゅ、ちゅ」


「ヤマト〜次あーし〜」


ここは、楽園だ! おっしゃぁ! イクぜ!





休憩を少し挟んでいたら、葛川さんが話しかけてきた。


どうやら今日中までしかここを使えないようだった。


長いようで、短いような、そんな楽園生活だった。



「すみません。これから身辺整理をせねばならず。藤堂さんは好きにしろとおっしゃっていたのですが、やはりきちんとしたいので」



藤堂が何をしたのかわからないが、どうやら葛川さんは出るところに出て、最終的には捕まるらしい。


この人には随分とお世話になった。


着替えに、食事、アフターピルからオモチャまで、至れり尽くせりだ。


こんなに良い人なのに、一体なぜだろうか?



「ああ、人攫いと、麻薬と、強姦と、監禁と。あとAV販売ですね」


「……」



全然良い人じゃなかった。


極悪人だった。


驚愕の新事実だよ。


藤堂は一体何をしたらこんなやつを顎で使えるんだ。


こえーよ。


久しぶりに小物センサーが顔出してきたよ。



「あはは、もうしませんよ。藤堂さんに歯向かうやつがいたらその限りじゃありませんが。どれくらいかわかりませんが、初犯ですしね。また戻ってきますよ。まあ私より親の方が大変でしょう」


「……親、ですか?」



そういえば、葛川っていやあ、政治家一家の葛川なのか?



「ええ、その父と祖父に女子高生の援交を斡旋してましてね。ははは。政治家仲間にもね。それを今度大暴露するんです。ははは」


「……」



やべぇ。それも聞きたくなかった。


めっちゃニュースになるやつじゃん…


母ちゃん応援してなかったか? たしか六期ほど当選してる怪物だったような…


選挙のとき気をつけよ…



「ねー難しい話? まだ終わんないの?」


「あー、失礼。そんな訳ですので、マコトくんを巻き込みたくはないので、ギリギリよりは早めの方が宜しいかと思い、伝えておきました。親戚連中もここの物件、欲しそうでしたから」


「…わかりました。明日の朝には出ます」



正直すぐ出たい。


小物センサーがびんびんに反応している。


でもこいつらの身嗜みとかもあるだろうし、な。綺麗に身支度させてやってからここを出たい。



「あ、そうそう。マコトくん。次からは気をつけて。多分天養市は和光家が幅を利かせるでしょう。それはつまり夜光組も出てきます」


「…はあ」



和光はわからないが、夜光組っていやあ、武闘派だ。結構夜の繁華街で幅を利かせてるって話だ。でもそれは、俺と関係なくないか? ああ、もしかしたらまた恋アポとかで俺が? いや、ないない。



「藤堂さんの幼馴染の女の子がそのどちらにもいるので、もしかしたらドンパチがあるかも、です。だから繁華街では気をつけて。どちらも一度拝見しましたが、目がヤバかったんですよ。まあ、私の予感ですけどね。ははは。流石藤堂さん」


「……っ」



あいつ、学校のヤンデレだけじゃねーのかよ…権力持ったヤンデレとか、ガチヤバすぎんだろ。しかも幼馴染? どんなラブコメだよ。


殺伐としすぎてコメディになんかなりゃしねーよ。任侠の世界じゃねーか。人死ぬやつじゃねーか。


いったいどんな星に生まれりゃ、そんな目に遭うんだ。あんな良いやつがいったい何やったってんだ。


可哀想すぎだろ…泣けてくる…



俺は恩人である勇者藤堂の冥福を、一人祈った。


南無。

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