ほのぼの2 - 違う勉強会
─
最近、なんだかソワソワする。
京介は、ふと思った。
衣替えが終わり、期末テストを目前に控えている中、学校終わりにそのまま聖の家に向い、勉強会を開いていた。
参加者は同じ享和高校の京介、聖、瑠璃。
そして、大前女子高校の詩乃と純。二人は学校は違うが、まだ高校の始め。そんなに変わらないでしょと強引に参加した。
京介にとって、聖の部屋は随分と久しぶりで、割とピンク塗れだった記憶があったが、落ち着いた雰囲気の部屋に変わっていた。
室内は全体的に白色でまとめられていて、全ての白色は青みではなく、赤みに振った色味で、優しい感じの乳白色のトーンが多かった。
壁と天井は白色、床はウォールナット色のフローリング。白のアンティーク調のベッドに白のローテーブル。白色の勉強机…は変わってなかった。
そして小さな時に閉じ込められていたクローゼット。こんなに小さかったんだな。京介はしみじみ思った。
それから真っ白な丸いローテーブルを囲うように五人で座り、勉強会を始め───
2時間ほど経った。
「…きょんくぅん、ここ、わかる? 教えて? いっ! 詩乃…」
「聖さん、私が教えますよ〜」
「京介くん、瑠璃も〜痛っ! じゅんじゅん!」
「知らねーな〜」
聖の横の詩乃が。瑠璃の横の純がそれぞれ何度かテーブルの下でやり合っていた。
「詩乃…あなた学校違うじゃない。そこの馬鹿を教えてなさいよ」
「京介、馬鹿って言われてんぞ」
「純さん…あなたよあなた。京介さんは昔から出来ました。聖さん、そもそもそんなに出題範囲は変わらないでしょう?」
「なー、京介ー、俺もう
「えーわたしじゃないよー? じゅんじゅん昔から勘違い多かったし、それじゃないかなー」
女子四人は、1時間程は大人しくしていた。だが、徐々に肘鉄、腿をつねる、足を伸ばして蹴る、消しゴム借りる振りからの親指付け根グリグリなどがそこかしこで始まりだした。
小学生の時、教室でなんかこんなのあったような。そんな事を京介は思った。
そして、昔は出来ていたと聞かされた京介は、実際のところ、中学で学習した事が全部吹っ飛んでいて一人焦っていた。
「ん〜〜〜、ちょっときゅーけーい」
「賛成ーよし! 京介! ご休憩しようぜ! 聖! ベッド貸し…いでっ! 京介! 殴ることないだろ! 照れ屋か! いだっ!」
「…純くんってさ〜全然色っぽくないよね。こういうのはさ〜こう、チラリとしないと。ね? 京介くん?」
瑠璃が休憩宣言したあと、すぐに純は京介に違う休憩に誘った。
それはご休憩で、休憩ではない。休憩出来ないやつだ。
京介は身体を伸ばし、純にとりあえず拳骨を二発落とした。瑠璃は、京介の視線を確認しながら真っ赤なパンツをワンチラした。
京介は ソワソワ した。
「純さん、すっかり元に…良いのか悪いのか…ルーリー、チラリも駄目でしょう! なんです、その派手な色は!」
「…ねえ、それ詩乃んが言う? スカート、さっき短くしたでしょ。わたし見てたよ。正座したらおっきなお尻でスカート押し上げてるじゃん。こっちからなら…丸見えじゃん。どしたの? いつも大昔の不良くらい長いのに。長過ぎて逆に校則違反してるのに」
「い、良いじゃないですか! 本当は短いスカートに憧れてたんです!」
京介達、享和高校の女子の夏服は淡いブルーの半袖シャツに赤いタイ。スカートはチャコールグレーのプリーツスカート。
詩乃、純の大前女子高校の夏服は、丸襟で、肩がふわっとした白シャツに青い細リボンタイに、伝統の真っ黒なプリーツスカート。スカート丈は膝下が規定されていた。
こんなにもソワソワするのは「おもひでのアルバム」に夏の制服がなかったからだろうかと京介は思った。
「あら、本当ね。しかも…そんなエグい食い込み…痴女ね。ちょっと私の部屋でそんな格好しないでくれる?」
「あ〜わかった! 詩乃、京介に褒められたんだろ? お前の檄コンプレックスが簡単に裏返るとは思えねー。言えよ、聞いてやる。散々聞いてもらったしな」
聖は人の部屋で何してんだと詩乃に憤慨し、純はベッドに腰掛け膝をパシンと叩き詩乃に促した。
話は体験談の話にシフトしそうになっていた。
そういうの本人の前でやめない?
テスト勉強しない?
そう京介が言おうとした時、ふと思い出した。テストと言えば、ゴブリンハーレムのことがあったと。
結局、マコト-ライト-ヤマトくんは、
マコト-ライト-ヤマト-レン-シンジ-ターちゃんくんだった。
妖精はあと三人いたのだ。
今もなお彼は桃源郷で魅惑の妖精達と
彼の生存は確実で、京介には、何かあった時だけ連絡がくるようにしていた。
ただ…テスト前だけど、学校は来なくていいのだろうか。
巣を用意した手前、少し考えてみる。
んー…ま、いっか。
学校やめて、働かなくちゃいけなくなるかもしんないし。
テスト、無意味かもしんないし。
さ、勉強勉強。
すぐに思考は閉じた。いつものことである。
「い、言いませんよ! そう言うのは秘めておくものです!…皆さんみたいに私は特殊では無いんです!」
「あ〜ん? お前、昔風呂で京介のちん──もがっ! 何すん、おお! 抜けねぇ! お前鍛えてたのか!」
「昔のままだと思わないでください! 東雲参る! うりゃぁぁ!」
言い合いはなおも続き、ついには肉体言語での語らいへと発展していった。
詩乃はベッドに腰掛けていた純に正面から覆い被さり、倒れ込んだ。右手で口を塞ぎ、流れるように左足を純の背中側に差し入れ左手は────
つまり、取っ組み合いで詩乃と純のスカートが大変な事になりそうだった。
京介は また ソワソワ した。
「何なに? 詩乃ん、昔何したの? ってか…スカート捲れそ…うわっ! お尻…すっご…エッロ…見て見てほらほら、京介くん! 聖ん! あ…京介くんはもう見たのか…ん〜〜ペローン、こんなエロ尻は〜〜ぺしーん! うわっ……えっ?」
「いたぁい! ルーリー今はやめて! 積年の恨み! 晴らすから! このぉ!」
「うが───! 詩乃! お前やっぱ根に持ってたのか───!」
瑠璃はベッドの上二人にススッと近づき、仕返しに夢中な詩乃のスカートを思い切って捲り、京介と聖に呼びかける、が、パンツのエグい食い込みになんかムカついたので、右尻をパチーンと叩いた。が、手は跳ね返され、瑠璃は自分の手のひらを見て驚愕した。
何このお尻、すご! と。
その詩乃のお尻は良い音がしたのだった。
そしてその音は京介に気付きを与えた。
夏服のボタンの真ん中らへんの2個だけ最初っから外している聖。
スカートを学校の時よりさらに短くして、何回も足を組み変えている瑠璃。
制服スカートのまま胡座をかき、何度もパタパタさせる純。
そして目下、純に覆い被さるようにして短くしたスカートを瑠璃に捲られ、お尻を向けている、詩乃。
京介のソワソワはただの15歳男子高校生のムラムラだったのだと気付かせたのだ。
いや、知ってた。
「…きょんくん…何されたの? 吐きなさい吐くわよね吐くに決まってるわ吐くでしょ。ね、きょんくん…」
そして、思い出には殊更こだわりがある聖のの瞳が濁り出した。人の部屋で私以外の思い出だぁ? あぁん? そんな気持ちがヤる気スイッチを入れた。
これはまずいとばかりに京介は聖に声をかけようとした。
「ひーちゃ…」
「黙って! そのクローゼットに入りなさい! そこで聖の下で懺悔しなさい!」
あ、駄目だコレ。全然聞いてない。仕方ないとばかりに京介は聖の頭を撫で回し、クールダウンに努めた。
このままじゃテストがまずいことになる京介は、お茶でも飲んで落ち着かそうと考えた。
「…ひーちゃん、紅茶…飲みたくないかな?」
「頭撫でないで! 誤魔化さないで! も〜〜ふにゃ〜ってなる…じゃ…ない…うん…ひーちゃん入れてくりゅ」
微回復の魔法付き頭ナデナデされた聖はご機嫌さんになり、台所に向かった。
それに、
京介の絶対に負けられない戦いが今始まった。
◆
それから、詩乃と純の攻防はひとまず落ち着いた。紅茶を聖が用意するからと京介が落ち着かせたのだ。
「あの聖の目が…あんなに優しくなんて…」
「そだよ。聖んは変わったの。じゅんじゅんもガサツをさー卒業し───」
「ばっかだな…ルーリー。こうやっておけば一番にお仕置きくらうんだぜ? あの未知瑠も唖然として泣いて帰ったんだぜ?」
純はやっぱり誘い込みだった。実は京介を煽りに煽るつもりで今日は来ていた。勉強をする気などさらさらない。聖、瑠璃、詩乃も以下同文だった。
だけど、純以外は建前を大事にする。あくまで勉強会なのだ。京介が中断したら全力で答えるつもりだった。
しかし、一向にそんな気配はない。もしかしたら魅力がないのだろうか。一回致したらポイ捨てする気だろうか。そんな一抹の不安がよぎった。
まあ、そんな事は許さないが。
だからこそ背伸びして脇を見せたり、ボタンを外したり、スカートパタパタさせたり、短くしたりと試行錯誤を重ねることとなったのだ。
そして、その全てを余す事なく目にした京介の某は、はち切れんばかりになってしまっていた。
彼女達の攻撃はきちんと届いていたのだ。
だが、彼は勇者。戦いの場で表情は読ませない。
今日じゃなきゃ純をキャン言わせるのに…京介は太腿にシャーペンをブッ刺し、性欲を抑制しようと何度も試みていた。
「そうなの?! あの未知瑠んが……ねー京介く〜ん。最近あっつくなった、ねー」
「ルーリー、女子高みたいな事マジやめて。うちはまだマシですけど、そんなスカートパタパタしてるの純さんくらいですよ。まあ秦野派の女子は鼻血出してますけど」
「何なに! じゅんじゅん女子にまだモテるの?! ひゃー昔のまんま! 小学校から変わんないねーウケる! あだぁ! やったな! この…あ、あ、バカバカスカート捲るなってば!」
「さっきまで自分からしてただろーが。ウリウリ〜ガサツって言うからだろーが。ウリウリ〜」
瑠璃の煽りを受けた純は、試合以外は冷静になれない。すぐさま肩パンし、反撃されるもなんなく躱し、素早く彼女の後ろに回り込んだ。
そして瑠璃の足と手を器用に両手で羽交締めし、M字を作り、徐々に後ろに倒れるようにゆっくりと倒した。
瑠璃では純から逃げるのは無理だ。強制的にスカートの中の真っ赤なパンツが晒される。
どうやら純は結構気にしていたようだった。
「違うよ! 京介くんの反応きちんと見てしてんの! 瑠璃は! そういうとこだからね! 馬鹿じゅんじゅん! こいつ! 強っ! 力つよ! 離せぇ!」
「ウリウリ〜」
アイスティーを持ってきた聖が部屋の扉を開けるなり瑠璃に言った。
「本当…瑠璃、人の部屋でM字とかしないで」
「聖ん! どー見ても自薦じゃないでしょ! やめてみんな見てると恥ずかしいから! ああ! ヤバ! でちゃう! じゅんじゅん! 純くん! 離して! いや────!」
瑠璃はまだお漏らし癖は完治しておらず、そんな体勢とアイスティーのグラスの水滴とみんなの注目とで、すぐに臨界に達しようとしていた。
いや、達した。
「私…こうなってたんですね…恥ずかし貰い…京た〜ん…ノノメ上書きして〜」
「瑠璃も〜え〜ん〜京介くん、じゅんじゅん拘束してよ〜ぅえ〜ん〜」
詩乃にもお漏らしダメージが入り、瑠璃はガチで泣き出した。純は誇らしげだった。流石に悪ふざけが過ぎると、見かねた京介は拘束の魔法を振った。
「あ、やめろ! それ辛いやつ──────」
「拘束…? 何ですか? え! 動かない…目も開いたまま…キモっ…ふふふははは! 京介さんありがとうございます! 純さーん…ほら丸出しですよー端ないですねーお下品ですねーお似合いですねー。さあ喰らいなさい! うりゃ───!」
「、!───!!」
詩乃は初めての拘束の魔法に驚き、感心するとともに、すぐさまこの機会を逃すものかとスカートを捲り、割と手加減無しで鳩尾辺りに横手刀をぶちかました。
幼馴染ゆえ出来る、手加減なしの攻撃だった。
晒された純の黒パンツはネリア推薦の一枚だった。
こうして部屋に平和が訪れた。
「よし、純を静かにしたから───」
「……きょんくん…聖の部屋の色、昔は何色だったでしょう? 正解は、この…スカートの中だよ?」
「あー、瑠璃、じゅんじゅんのせいで濡れちゃったー、あー、気持ち悪いな〜…脱ごっかな〜?」
「京介さん…Sの次は……何でしたか?」
そんな京介の発言など、聖、瑠璃、詩乃達三人には届かず、スッと一斉に立ち上がり、まるでクリスクロスパスのように交差しつつ滑らかに動き、最初から立ち位置が決まっているアイドルのコンサートのようにピタリと三人揃って京介の前に立った。
そのまま三人はスルスルと両手でスカートをたくし上げ、ギリギリで止めた。詩乃だけは身体を捻りお尻を突き出している。
そして、戦争、平和ときたら、次は産めよ増やせよでしょ? と言わんばかりに煽り出した。
どうやらムラムラしたのは京介だけでは無かったようだ。
幼馴染の連携って何気に凄いよね。
京介の心からの感想だった。
「………ごくり」
そうして、アイスティーを飲み干し、違う勉強が始まってしまったのだった。
京介の絶対に負けられない戦いは、割とあっさりと幕を降ろした。
「、!、!〜〜!〜!」
純はそのまま放置された。プレイとも言う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます