GB7
| 藤堂 京介
「今日は朝から元気なくない? 瑠璃が癒そっか? パンチラする? ワンチラいっとく?」
昼休み。みんなと食堂に来ていた。
その瑠璃ちゃんの申し出は大変嬉しいんだけど、横に愛香いるし、朋花いるし、聖いるし。
由真だぁって〜、響子だぁって〜、未羽もだぁって〜、みんなみんなここにいるんだ
友だちなんだ〜
何を軸にした友達なのかは置いておこう。
ナニが軸かは置いておこう。
違く…ないな…
ワンチラ、貰おうかな……
僕は…落ち込んでるんだ。
◆
昨日は久しぶりの敗北だった。
相手は女子校生だった。
訓練や特訓では枷を掛けたりしてローゼンマリー達と戦い、敗北する事だって何度もあった。
だから敗北自体は別にいい。
それにもし、あと一歩早く手を出していたら肋骨の隙間に抜き手を突き刺すところだった。
だいたいは指が突き刺さってから拳を薄く握り、肋骨を折らないよう回復の魔法も使いつつ、ジワリと押し広げながら内臓を掴み、交渉するまでがワンセット。
突然の敵に対する殺さない対処法だった。
交渉後、回復の魔法を手を引き抜きながら使い、あたかも何もなかったかのように立ち去るのが格好良くてスマートなやり方だとアートリリィは言った。
囚人で何度も何度も練習させられた。
囚人達は吊るされ、瞳の色は次第に無くなっていった。何十人と居る囚人達の服には腕があと二本出せそうな穴が空いてしまっていた。両手で練習したからだ。
サムソンなティーチャーなら着れそうだった。
元々はやられる前にやる。そういう価値観を植え付けられていた。守りたいものが守れなくなるからと。反射がそれだ。しかし、勇者が認知されるにつれ、政治的なものも絡み、それだけではいけないと、渋々身に付けさせられた。
今度はそればっかり多用し出したら、まずは突き刺すんじゃなくて、話聞くの! 服、大事。わかった!! 穴空いたら最後売れないじゃん! 四本腕なんていないの! ティアクロィエにそう言われた。
アートリリィのクール推しとティアクロィエの実利推し。だいたい口喧嘩していた。ローゼンマリーは聞いたフリをしてすぐ素振りしていた。
そんな技だった。
松葉杖の女の子はぱっと見た感じ、儚げだった。そんな子が、流石に生きたまま内臓を掴まれるのは可哀想だ。トラウマになるかも知れない。
だから咄嗟に動きそうになった両手は封じた。
いくら回復の魔法があってもトラウマには効かない。
そう思ってカカト落としを逸らしてから距離を取ろうと思い、右に身体をずらした。なぜなら松葉杖側が弱いと踏んだからだった。
そしたら顎に右から迎えが来た。
松葉杖はブラフだったのだ。
暗器を使うと錯覚させ、本命に似せたカカト落としで松葉杖側に逃げ道を誘導させ、捲れ上がったスカートの中身のピンクな布に目線を釘付ける。そして、暗器は五寸釘だった。釘と釘付けとか、それ上手ぁぁい!と思った瞬間に本命の一撃がきた。
痛恨の一撃だった。
15歳の性欲を弄ぶ、小悪魔の恐ろしい虚実織り交ぜた攻撃だった。
そして僕は敗北した。
だけど、敗北はいい、別にいいんだ。
彼女の下着センスがいいんだ。
違くて。
そうじゃなぃんだよ。
レかも知れないんだよ。
逆レかも知れないんだよ。
まあ…未経験ってわけじゃない。
そんな初心ではない。
それに未羽の鼻センサーの勘違いの線も
まあ、何に覚醒したのかは置いておこう。
そして、何で覚醒してるのか全然わかんない。
違くて。
問題は相手を特定出来ていない事だ。
相手を特定し、おかわり汁だくしていない事が問題なんだ。
おかわり汁だくの際に仕込むはずの避妊魔法を確実に仕込めていないのが問題なんだ。
逆レからのおかわり汁だくマシマシ避妊魔法を今までしなかったことなどない。100%だ。
そう、いかな勇者といえど、無意識下でガンガンいこうぜな時に避妊魔法は使えない。今までは相手もだいたいガンガンいこうぜだったからだいたい途中で気付いて対処できた。もし対処出来なくとも、位階差による追跡では勇者に勝てない。だいたい路地裏でだ。
見逃しは無かった。
つまり今回の件の本当の敗北とは、
逆レ勇者は避妊魔法が間に合わない。だ。
……なんかラノベタイトル感…いや、ないか。売れないか。18禁か。出禁か。危ないな。
それに彼女、起きたら居なかったし…
跡を濁さないくらい丁寧に丁寧に拭き取っていたのか気づかなかったし…
ふっ、だがその程度でうちの義妹の鼻センサーは騙せない。でもなんで騙せないのか全然わかんない。
何でわかるんだよ。
つまり、何が言いたいかと言うと、僕はピロートークが出来なくて落ち込んでいるんだ。
◆
「瑠璃、パンチラとかやめなさい。恥じらいと躊躇のなさが絹子みたいよ」
「聖んがそういうならやめるけど、それよりさぁ〜被るのはやだなぁ〜ねぇ〜浅ちゃ〜ん?」
「あ、あー、そうね。でも例え被ったとしてもそっからスタートってゆーか〜。被ったくらいで踏み出さないのは愚かってゆーか〜。ねぇぇ〜響〜子ぉ?」
「え、ええ、そうですね。でも本当に愚かなのは何年も手をこまねき、道端の亀に先に行かれたウサギさんではないでしょうか。ねぇ、三之宮ウサギさん?」
「〜きょんくん! 今日暇?!」
周りを見渡すと、この話題に勝ち目の無さを悟った聖はそう聞いてきた。
「聖ん! 協定! 円卓一周するまでダメだからね!」
「〜だってだって〜そんなの待てな……愛香、目が笑ってるわよ。初芝さん、なぜ目を逸らすの、義妹は……なんで目をキラキラさせてるの…」
「そ、逸らしてないし…」
「いえ、三之宮との匂いはまだゲットしてないな、と」
「きょんくん! な、何なの、この子!」
「義妹だけど」
「〜知ってるわよ!そ〜じゃないわよ!
「あらぁ…聖さんも……大層立派なご趣味をお待ちですわよね? まるで童心に帰ったかのようなご趣味を未だ手離せず、ましてや恥じらいすら忘れ、無邪気で純真な幼子のように浅ましくも何度も何度もおねだりするだなんて……お可愛いこと」
「〜〜〜きょんくん! 愛香に話したの! 信じらんない! きょんくんの馬鹿ぁ───! あ! 躱した! このっ! あ! また躱したぁ! もう馬鹿ぁ────! きょんくんの串刺しやろぉぉぉ! この種馬ぁぁ──好きぃ───!」
「あ!聖ん、待ってよ! みんなお先〜京介くん、ちゅ。じゃ〜ね〜! 京介くん!…ちらっ、ふふっ、待ってよ〜聖ん!」
「あっ、聖。僕は話してないよ〜瑠璃ちゃんありがと〜元気出たよ〜」
なんかほんと、元気出たな。
聖のワンツーは昨日の件もあって、反射は切っていないからつい躱してしまった。
瑠璃ちゃんのパンツはフルーツ柄でビタミンカラーいっぱいだった。しかも投げキッス付き。
きちんと周りを把握し、僕らにしか見せなかった。
「…ほんと、お元気だこと。ねぇ……京ちゃん……?」
そう言いながら愛香はみんなに見えないように、僕の太腿の付け根辺りをサスサスしてくる。
………なんかほんと、違う元気、出ちゃうよね。
放課後、まずは釘の彼女を探しに行こう!
その前に教員用トイレ、行こっか。
「愛香、いつまでそのムーブやるし」
……ほんと、それな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます