ダズンローズ3 - 雑草抜きの魔女

| 飛鳥馬遊子



最近、変な事が立て続けに起きてる。


まず、はるはるの様子がおかしい。更新もまちまちだし、新規の情報無いし、昨日あったらクネクネソワソワしてなんか雑草っぽいし。


次にターゲットの草三本がどこにもいなかった。一本はれんれんが仕留めたって話だし、私も一本くらいは抜きたい。悔しいし。


うみうみは駄目って言ってたけどねー。


こればっかりは抜かないとねー。


享和高校最寄駅、享和駅にも行ってみたけど…まあ、あわよくば京介さんに会えるかも、なんて考えてたけどそんな都合よく逢えないし、雑草三本もいないし。


そして、赤城先輩。


麻理お姉様。


最近なんかおっかしいの。


今日の剣道部の部活動は中等部と高等部の合同練習の日だった。麻理お姉様とは普段から先輩のご実家で一緒に稽古しているから私はあまり遠慮しない。



「麻理お姉様先輩っ」


「……飛鳥馬あすまそれはやめろ。先輩くっつけたらいけるって思わないで」



ほんっとに嫌がる顔が、もう、ほんっと可愛いんだから。ぐいぐい腕を掴んで言っちゃいますよ。


まあ、そんな事するから、赤城派の右左どちらともに私は毛嫌いされているのだ。


ほら、そこの窓から覗いてる雑草! お前だお前。何睨んでんだはぁん? 悔しかったら部活入ってこいよなぁー先輩だろうが後輩だからなぁ?www言わすからな〜あ?



この大前女子で、女生徒人気No.1がこの麻理お姉様だ。


刀のように研ぎ澄まされた立ち姿に憧れ慕う人間は数知れず。学内には強烈な赤城信奉者が多い。チラッと周りを見渡すと、まあ、ギラギラした目でこっちを見てやがります。


はっはーん、かかってこいよなぁ!


そしてちなみに…人気No.2は、にっくき円卓の秦野純。秦野無天流の後継。無手こそが最強なんて謳ってやがります。……まあ、一回試合見たけどおしっこちびりそうなくらい怖かった。


斬りかかる、───あっ!

待ってみる、──あんっ!

フェイント、─ああんっ!


全然勝つイメージが掴めなかった…


うみうみとからんらんとかなんでカジュアルに口聞けるかあいつら全然訳わかんない。


知らないって罪だわ。は────っ。



ん? ふと見上げた麻理お姉様は、何か、ボーっとしてるというか…何だろう…草? 少し、煽ってみる? 



「最近、麻理お姉様先輩、なんだかおかしいですよ? んー? なんといったら…あ、そだ。なまくら? ですね〜」


「……しって、…なんでもない」



…やっぱりおかしい。


普段なら雑草を引き抜くような視線で私を見てくるのに…


そこがまた良いのに…


しかも、妙に私の視線を避ける。いつから…今週から?…何か私したっけ?



「ご機嫌よう。飛鳥馬あすま後輩。なんてね、こんにちは、遊子」


「あ、イリア姉様…海子先輩。ちょっと聞いてくださいよ〜最近なんだか麻理……赤城先輩がおかしくないですか? 道場でも。気付きませんでしたか?」



海子イリア。イリア姉様。


海子はだいたいどこかよその流派に人を送り込む。三つ子三姉妹のうちイリア姉様は赤城に、妹のネリア姉様は秦野に。幼少の頃から通っているらしい。


ただ三つ子の一番下の妹だけは見たことがない。お二人に尋ねても何故か誤魔化される。


そして、一見馴れ馴れしい態度は罠だ。


踏んじゃダメ。刈られる。



「麻理嬢もやっぱりそうですか……実は最近、ネリアの様子もおかしくて……いったいどうしたのでしょうか? あの、麻理嬢、少し宜しいですか? おほん、期末テスト! …じゃない…んー? 肥えた! …これも違う…ん…? あっ、おっぱ─痛っ! んー……これも違いますか…」


「……イリア、来い」


「んーでもそんなに…遠くない……うふ。是非」



「……」


…イリア姉様、いつも何か怖いんだよね。


身とか心とか、ものすごく汚されそうというか…全て丸裸にされそうって言うか…





「恋アポ?」


「ええ、そのサイトに特徴とか名前とか書き込むのです。先程の話を要約すると、麻理嬢は探したい人がいるのでしょう?」


「イリア……私は別に探したいというわけじゃないというか…」


「麻理お姉…赤城先輩の事だから何か武芸に感銘を受けたのではないですか?」



麻理お姉様は、かなりストイック、に見えるが単純に学ぶものが少ないのだ。剣の大前と有名になったのは麻理お姉様のおかげだしね。



「ただ……したいというか…」


「やりたい?!」

「ああ、試合ですか〜」



麻理お姉様が全力を出せることなんて余りないしね。イリア姉様にもなんだかんだで手抜きしてるみたいに見える時があるし。



「ただ……わからせて欲しいって言うか…」


「ワカラセ?!」

「ああ、光るものをお持ちなのですね〜」



なかなか、そんな人いないでしょ。私もその頂きに立ってみたい。でもお姉様に教えるくらいのレベルなんて…そんな人、秦野くらいしか…これは是非私もお会いしたい。



「ああ、マイプリンス…」


「マイプリ?! …麻理嬢が……恋?…え、ヤバくないですか?……お相手の方……」


「…王子様か〜 良いですよね〜 素敵ですよね〜 麻理お…赤城先輩、ちなみに、お名前は?」



麻理お姉様の照れ屋さん! 


武芸の話を前置きにしてからの王子! 誰か気になる人が居るんだ! 最近の雑草具合はこれか〜! これは聞き出さないと! やっと王子様談義、出来ますね! いっつも私の話、聞いてくれないし!



飛鳥馬あすまには言ぇ…わない」


「何でですか! 教えてくださいよお! 私、麻理お姉様と一緒に恋バナしたいです! あ〜私の王子様の話もこれでやっと出来ますね! あれ?! もう貝になった! 早い! まだ話してないのに!」



ダメだったか…貝になったらもう聞けない。こじ開けるには麻理お姉様のお兄様か、白崎先輩の力がいる。


あ〜聞きたかったなあ。剣の話もいいけど、王子様談義したかったな〜



「…遊子嬢には言えない…なるほどなるほど……うふ」





「ちょっと…今の…麻理様が…」


「ええ。さっきおっしゃっていた特徴は覚えてるわ───探すわよ」





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