四匹の悪魔2 - 普通

| 葛川 翔




「くっすん、どうする?」


「あ"ぁっ!?…ふー、あーそうだな…」



今日、結局愛香は来なかった。藤堂もだ。温めていた策がハマらなかった事に久しぶりに頭にきていた。だがキレるとまずい。


下手したら退学だ。もう兄にも親父にも頼れない。俺はキレた自分を信用していない。


俺はシモと一緒に駅近くの歩道橋の上に来ていた。通学路からは外している。下は車の群れだから、多少大きな声を出しても問題ない。


キレそうな時はシモとこうやって二人で駄弁る。これが俺のクールダウンだった。


こんな時ウエとナカがいるとつい普通に殴ってしまう。


あまりにも喋るやつと、喋らないやつ。どちらにもキレちまう。仲違いしたいわけじゃないんだ。


だからいつもシモと二人だ。


そうだ、シモは良い奴だ。信用できる。ちょっと女に実験しながら撮影するのが大好きなだけの良い奴だ。



「ふー、まあ…藤堂は週明けに様子を見てから決めよう。この策に必要なだけだったからもう放流しても良いが、ナカに任せよう」


「あーナカは気に入ってたしね。いいんじゃない。いい奴だし」



そうだ、ナカはいい奴だ。ちょっと小さな女が好きで、人を殴ることが大好きなだけの良い奴だ。



「NTRの悲劇役、くらいで置いておこう」


「いや、BSSだよ、くっすん」



「……どっちだって!いいーんだよっ!」


「おお、くっすん、落ち着いて落ち着いて」



「あぁっ!?俺は落ち着いてる!」


「そういえば、もうひとりの藤堂、よかったよな。ウエがくっすんの為に頑張るって言ってたよ。いい奴だよな」



そうだ。ウエは良い奴だ。いつも他人のために頑張る。ちょっと仲間と一緒に強姦するのが大好きなだけの良いやつだ。


ああ、そうだな。なかなかの美少女だった。スタイルも良い。


あんな女、普通に手枷をつけて監禁して、普通に壊したくなる。



「…ああ、なかなか唆ったな」


「他の二人もいい感じだった」



そうだ、三人だった。普通にそれぞれに鍵を飲ませて殴り合わせてみたくなる。普通に友情とか壊したくなる。



「っああ、ああ、いい感じだった…いい感じの拒否反応だった。壊して欲しそうだったよな?」


「うん。壊して欲しそうだったよ」



そうだよな?普通にまとめて壊して欲しそうだった。



「三人まとめて」


「そう! 三人まとめてね。媚びたらそんな思いしなくてもよかったのにね」



そうだ。最初から媚びていたらクソゲーだ。そんなの監禁して何が楽しいんだ。


普通に考えて。



「そうだ、それが出来ない三人が悪いしな。普通に考えて」


「仲間外れは可哀想だしね」


「そうだ。一人じゃかわいそうだ。普通に考えて」



普通に考えて。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る