1 / 100 | 成瀬 愛香
「カーストトップに居るとね。いろんな情報が集まるの。それこそ体験談とか」
「…うん?」
なんか急に始まり出した。
「心が温まるとか、結ばれて幸せだったとか。ポジティブな意見の最上級はそれくらいで、全体の一割くらい。そもそも気持ち良かったなんて聞かない。それが初体験」
「…?」
「それ以外は全てネガティブ。痛かった。痛いのに辞めてくれない。びびるからこっちも不安になる。猿にしか見えない。がっつき過ぎ。獣。けだもの。目が怖い。取れるかと思った。犯される。殺される。死ぬ、死ぬかと思った」
「そ、そう」
「だからあんなに気持ち、良いのはおかしいの」
「…本番は違うかも?」
「でも…あんなに降りて来れなかったのは初めてだった」
「…そうなんだね」
何が、とは聞けない。
もじもじしながら愛香は聞いてくる。
「ね、京ちゃん。別れてから、その…ね?初めてじゃなくなった?いや、別れた私が言うのは、その、変ってわかってるんだけど…わたし、その、ね?…欲しいんです」
なんて言おうか…。
お嬢様、バージンブレイクには、打ってつけの人材です、と?
魔力操作に長けた僕は良く娼館のオーナーに呼び出されていた。
丁稚からあがり、今から嬢となる女の子達に、せめて最初は痛い思いをしないようにと僕に依頼を出してきたのだった。
噂が噂を呼び、いつしか僕は乙女100人斬りを達成したことから一部では畏怖も込めて吸血鬼なんて呼ばれていた。
僕、魔族じゃないんだけど。
勇者なんだけど。
「…信じて貰えないかもしれないけど、初めてはまだだよ。そもそも初めては愛香と交換したかったしね。信じてくれないかな?」
この身体は初めてだし、嘘じゃあない。ないったらない。自分に言い聞かす。嘘を吐くと魔法が安定しなくなるし。
「…わかった。信じる。だって京ちゃんだもん…」
「……」
「…」
「じゃあ、僕の童貞、もらってくれる?」
「はい。わたしの初めて、もらってください」
そうやって口付けを交わした。
「優しくしてね、京ちゃん」
「優しくするよ、愛香」
僕たち二人はリビングで口付けをし、場所を移しながら服を脱ぎ、最終的には僕の部屋に籠りーーー
それから2時間が経った。
◆
覆いかぶさるようにして抱き合い、果てた。愛香は腕の中でビクビクしていた。
「京ちゃん、しゅきー…、しゅきー…」
それから息も絶え絶え、体は濡れ濡れな愛香の身体を優しく拭き上げ、丁寧に整え、持ってきていた麦茶を飲みながら二人でお話する。
「…しんじらんない」
「愛香があんまりにも可愛いから仕方ない」
「…やさしくするっていったのに」
「愛香があんまりにも素敵だから仕方ない」
「…やめてっていったのに」
「愛香があんまりにも我儘だから仕方ない」
「…べっどやくざ」
「…愛香は良かった?僕は最高だったよ」
これ以上は僕にダメージが入りそうなので話題転換しよう。
「……もう、ばか、幸せ、ばか、好き」
「…僕も幸せだよ」
身体を少しだけ起こし、額に汗を貼り付け、蕩けた笑みで、目を合わせてからのバードキス。
恥ずかしがりながらも答えてくれた。
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