擬似
「はい、麦茶だよ」
「…ありがとう、京ちゃん」
僕らは風呂から出て着替えて、喉を潤した。服は僕のを貸したのだった。
◆
あの後、流石にぶっかけたまま帰すわけにもいかず、風呂を進めた。満面の笑みで制服を脱ごうとするので、彼氏に悪いから僕は出るよと告げるとボロボロと泣き出した。
曰く、葛川とは付き合ってない、暴力を振るうなんて思わなかった、京ちゃんに嫉妬してほしかった、本当は別れたくなかった、ずっとずっと好きだった、嫉妬して欲しくて別れた、未羽に嫉妬していた、もっとわたしを見て欲しかった、嫉妬されるのは気持ち良かった、自慰も最高だった、昨日で目が冷めた、葛川なんかになんにもあげてない、綺麗なままだから、京ちゃんのものだから、なんて涙ながらに語り出した。
瞳の色を見ると不安、不安、不安、とほぼ不安だったので、僕は安心して欲しくて、笑顔を向けた。
つもりだったけど、白く塗り潰した顔に涙なんて、どうみても犯罪臭が半端ないので、自分でもわかるくらい、どうにも苦笑いになってしまった。
それを見て、またボロボロと泣き出し、信じてないんだ、信じて欲しい、お願いします、なんでもします、捨てないで、なんて錯乱し始めた。仕方ないので抱きしめた。
5年以上振りの抱擁。
ただいま、愛香。
だけども、with全裸。
いや、僕的には愛香と会うのは五年ぶりだし、割と感動の再会のはずだったんだけど。
ダメだこれ。
どうかこういうのを見て勇者とか言わないでほしい。
なんて思ってると、抱きしめ返してきた。
うん。ただいま。愛香。
嗚咽も収まってきて、涙も止まってきた時。僕はさっと制服を脱がし、ブラもショーツも脱がしてやった。それはもうまるで魔法のように、ささっと。愛香も目を白黒させていた。これが異世界を救った勇者の真の実力よ。違うか。
お互い全裸になってから僕は幼い頃を思い出すようにして全身をくまなく洗ってあげた。
愛香は何にも抵抗する事なく、全てを僕に任せた。
泥んこになった時、台風ではしゃいだ時、川に落ちた時、どれもこれも心がほっこりするような暖かい思い出だった。
だがしかし、身体はまた熱くなってしまった。
そうして、洗い終わったあとのことだった。
「おっきい」
「そう?比べたことがないからわかんないかな」
暗に挑発してみた。いや、まあ、比べた事あるんだけどね。屈強な戦士達とだけど。だけど異世界での評価基準は大きさよりも、カタチと持続力と魔力だった。
つまり総合的な継戦能力だった。
何せ冗談みたいな大きさの種族も居る上に、魔法もあったのだ。僕は魔法に精通していたので、魔力操作はお手のものだった。それを使い、数多くの相手を沈めてきた。
勇者の名は伊達じゃない。いや、違うか。
「ち、違くて、そ、想像より、ぉ、ぉ、おっきいっなって言うか!昔と違うなぁって!だいたい、京ちゃんのしか見たことないんだからねっ!」
「ふーん」
「っ!ほんとなのっ!ほんとにほんとなんだから!そもそもわたしのここは京ちゃん専用のお部屋なんだからっ」
「あはは。久しぶりに聞いた。うん。大丈夫だよ」
焦った愛香なんて小学生以来だった。体感では10年くらい前だ。なんだか懐かしくって意地悪しちゃったな。
というか、いつも言ってたお部屋って意味、やっとわかったよ。その当時は全然わからなくて、とりあえず相槌していたけど、小学生でわかるわけないよ。淫魔かな?
揶揄ったのがわかったのだろう。ホッとしていたので、少しお願いさせてもらおう。このままじゃ辛い。
「じゃあ…少し…万歳してもらっても良い?」
「?うん…恥ずかしいけど…」
「すっごく綺麗だよ」
改めて愛香を見る。異世界の基準に照らし合わせても随一の美姫だった。少し猫っ毛なふわふわとした色素の薄い栗色の髪の毛は肩口まであり、今は洗われ大きめな房になって顔に張り付いていた。
大きな薄茶色の瞳を長いまつ毛が縁取り、ぱっちり二重瞼で纏めている。すっとした鼻立ちに小さな薄いピンクの唇。頬は期待値で薄く色付いていた。
記憶にある顔立ちより少し大人だった。
肌は色白でシミ一つなく、胸は手のひらよりも殊更大きく、綺麗なカタチをしていた。中央の突起は小さめで薄い桜色なのにピンピンしていてこちらを煽ってくる。
腰は括れ、決して大きくはないお尻は上向いていて格好良かった。足も長くすらっとしているのに肌にはムチ感があり、何というか。
そう、イカしてた。
あ、ダメだ。
───頭にスイッチが入った音がした。
「え?あ、え?待って待って待って、あ、だめっっ」
◆
風呂から出たあと、身体と頭を乾かし、昨日の出来事から話し始めた。
「なんか…ごめんね。元はと言えば僕が情けないとこ見せちゃったから」
「情けなくなんてないっ!ビンビンでもぅすっごぃ格好良かったっ!」
「……そっちじゃないんだよ」
「ぅえ!」
格好良いビンビンってなんだよ。
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