第4話 再生
自室に戻った実親はベッドに仰向けになった。
右手の甲を額に当て瞳を閉じる。
(今日は色々あり過ぎた……)
実親は深々と溜息を吐く。
今日はイベントが押し寄せて精神的に疲れてしまった。
父の再婚話は別に構わない。
父が幸せになるのは嬉しいし、めでたいことだ。幾らでも応援する。
週末には再婚相手の家族との顔を合わせもある。
父の為にも相手の女性に悪い印象を与えないように努めないといけないが、最低限礼儀と誠意を尽くせば問題ないだろう。
「俺に妹が出来るのか……しかも二人も……」
無意識に口から言葉が漏れた。
実親は一人っ子だ。
妹がいる生活を上手くイメージ出来ない。
ライトノベル作家の端くれなので想像は出来る。
だが、いざ自分の立場に置き換えて考えると中々実感が湧かなかった。
「いや、まあ、一人はタメだし兄として接する必要もないか」
一人は実親と同い年だ。
彼は既に誕生日を迎えているので十六歳になっている。
同い年の中では誕生日が早い方なので、必然的に自分が兄にある可能性は高かった。
兄になるとは言え、同い年である以上は妹扱いする必要はないか、と思い至る。
寧ろ相手が嫌がるかもしれない。同い年の男に兄貴面されても良い気はしない確率の方が高いだろう。
友達感覚で接した方が良好な関係を築けるかもしれない。
もう一人は中学生なので兄として接しても問題ない筈だ。勿論、いきなり兄貴面しても迷惑だろうし戸惑いもするだろう。
適切な距離感を保ちつつ少しずつ距離を縮めて行けば良い。
週末の顔合わせで対面して最低限
「久世紫苑……」
今実親の精神をかき乱しているのは、脳裏に焼き付いた同級生のことだ。
父と話している間も紫苑の痴態が頭から離れなかった。
あまりにも衝撃的過ぎる光景であった。
まさか女子の情事を目撃することになるとは思いもしない。
紫苑が自慰をする姿も、彼女の胸と秘部も、快楽に浸っている表情も全て鮮明に思い出せる。
彼女のことは学校で何度か見掛けたことがあるくらいで交流はない。
会話したのも今日が初めてだった。
クラスメイトが話しているのを耳にしたところによると、紫苑は男子から人気があるそうだ。
誰とでも分け隔てなく接するが、等しく一定の距離感を保ち群れることはない。
一人でいることも多く、口数も多い方ではない。
大人びていて人目を引くスタイル、そしてミステリアスな雰囲気とクールな性格も合わさり、立誠高校での美少女の一人に数えられ一目置かれている。
次学校で遭遇した時は少し気まずいな、と思ってしまう。
どんな顔をして対面すれば良いのか、と苦悩する。
(あいつだって気にしていないようだったし、こっちが気にする必要なんてないだろ……)
痴態を目撃されても紫苑は恥ずかしがることもなく、焦る様子も見受けられなかった。
実親の足が扉にぶつかって響いた音に少しだけ驚いてはいたが、自慰を目撃されたことに関しては表情を変えることすらなかった。
寧ろ平静な態度で話しかけて来たくらいだ。
紫苑が気にしていないのならば実親も気にする必要はないだろう。
実親は馬鹿らしくなり、割り切ることにした。
だが自慰を目撃したことは割り切れても、紫苑の痴態は脳裏に焼き付いて離れない。
今も脳内で再生されている。
快楽により紅潮した顔。
艶のある吐息。
淫靡な匂いと音。
丸見えの胸と秘部。
秘部を弄っている姿。
絶頂するところ。
全てが鮮明に映し出される。
堪らず実親の下半身に血が巡り熱を帯びる。
(童貞じゃあるまいし……)
元気になった自分の下半身に目を向けると、情けなくなり溜息を吐いてしまった。
童貞でもないのに同級生の女子の自慰を目撃したくらいで何を興奮しているのか、と我ながら呆れてしまう。
実親は童貞ではないので女性慣れしていないということもない。
にも拘らず下半身が元気になってしまっている。
それほど紫苑が自慰をしている姿は淫靡であり、尚且つ幻想的で耽美だった。
(駄目だ)
このままでは眠れそうにないと思い、上体を起こしてベッドから降りる。
(シャワー浴びて来よう)
一度落ち着く為にシャワーを浴びることにした。
部屋を出て一階にある浴室へ向かう。
脱衣所に着くと後頭部で結んでいた髪を解いてから服を脱ぎ去り、洗濯機に入れる。
浴室に入ると蛇口を捻ってシャワーを流し、まだ冷水にも拘わらず頭から浴びる。冷たいが熱を冷ますのに丁度良かった。
段々と冷水がお湯になっていき、冷えた身体を温めていく。
一度シャワーを止めて頭を洗い、身体も洗っていく。
全て流した後も暫くシャワーを浴び続けるが、それでも下半身は落ち着かず元気なままであった。
幾ら気持ちを切り替えようと試みても紫苑の痴態が脳内で再生されてしまう。
完全に脳裏に焼き付いてしまっている。
「はぁー」
最終的に実親は落ち着く為には大人しく自分で処理するしかないと諦め、この後自分で三発も抜く羽目になった。
三発も抜かないと鎮まらないほど紫苑の痴態は蠱惑的であった。
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