【後日談】初めてのデート①
「ふう〜緊張するなあ……」
「マサヨシ様、お待たせしました。あの、いかがでしょうか?」
「……うん、サーラさんにとっても似合っていますよ!」
今のサーラさんの格好はカーディガンにロングスカート、その上にはアウターにマフラーと、完全にこちらの世界の服装をしている。そしてハーフエルフであるサーラさんの長い耳は大きめのニット帽に隠されている。
さて、なんで俺が緊張しているかというと、今日はこちらの世界でサーラさんと初めてのデートなのだ。
アンデのおかげで異世界へと繋がる扉が再び繋がって、サーラさんとアンデに学校の屋上で再会したあの日から1週間が過ぎたが、いろいろと大変であった。
まずは魔法で眠らせていた安倍と渡辺を起こして、ものすごく簡単に2人に事情を説明した。2人ともいきなり異世界なんてことを話した割に、すぐにある程度までは理解してくれた。というのも、アンデが実際に目の前で魔法を使ってくれたからだ。
……いきなり目の前に空中に浮いている火の玉やら水の玉やらを見せつけられては、魔法というものの存在をある程度信じざるを得なかった感じだ。詳しいことはまた今度説明することを約束して、今日のところは2人と別れた。
そして大魔導士の力をアンデから継承してもらうための準備を進めていく。幸い今日は金曜日で明日は休みだったため、母さんに今日は友達の家に泊まると電話で伝えておいた。
アンデの転移魔法により、俺達は一瞬で俺の部屋へと戻ってきた。部屋の天井には、本当に前と同じように、異世界への扉である黒い面ができていた。久しぶりに異世界へ行けることに興奮しながら扉を通り、大魔導士の家へと移動した。
サーラさんに話を聞くと、アンデの転移魔法で屋敷を飛び出してきたも同然だったようなので、一度サーラさんの屋敷までアンデが転移魔法で送ってくれた。そしてそのまま大魔導士の家で、アンデから継承魔法により大魔導士の力を継承した。あの地獄のような苦痛はもう二度と味わいたくなかったよ……
前回と同じで、苦痛を受けながら気絶と覚醒を繰り返した。下手をしたら気が狂いそうになるほどだったが、なんとか半日を耐えきった。今思うと、最初に大魔導士の力を継承した時は、何の覚悟もなくあれだけの苦痛によく耐えることができたと思うよ。
とはいえ、おかげで無事に大魔導士の力を継承することができた。アンデのほうと俺のほうで確認してみたが、本当に俺がすべての力をアンデに継承する前に戻っていた。
俺には使えないから必要はなかったのだが、異世界へと扉を繋げる魔法も継承してもらっていた。個人的にはまた異世界への扉に何かが起こった時のためにアンデが持っていたままにしてもらいたかったんだけどな。最悪、またアンデに継承魔法を使わなければならない。その場合はもれなく、お互いに継承魔法によるあの苦痛を受けなければならないんだけよね……
無事にまた大魔導士の力を継承した次の日には、力が戻ってあちらの世界へ行けるようになったことをリリスさん達やギルダートさん達に伝えにいった。久々に会ったこともあり、リリスさん達には抱きつかれて、冒険者ギルド中の男の冒険者に睨まれたのは本当に怖かったな……
そして後日改めてサーラさんと会って今後のことについて話し合った。プロポーズをして、サーラさんと結婚するということになったが、こちらの世界では法律的に18歳にならないと結婚することができない。というよりも、そもそも戸籍がないから法律的には結婚することができないんだよなあ……
どちらにせよ、俺も高校までは通いたいので、俺が高校を卒業するまでの1年と数ヶ月の間は
そんなわけで今日の休みは、こちらの世界でサーラさんと初めてのデートである。まずはサーラさんの服をなんとかするために服屋に来ている。
今ある服の中で、こちらの世界でも問題なさそうな服を着てもらい、耳をニット帽で隠してもらいながら街を歩く。当然今まで女性と付き合ったことがない俺が、女性がどういうお店で服を買うのかなんて知るわけがないので、とりあえず無難なチェーン店にやって来た。
……ごめん、サーラさん。次に来る時までちゃんと勉強しておきます。参考に川端さんに聞いてみようかとも思ったのだが、さすがに振ってしまった女性にそんなことを聞くことはできなかった。川端さんとは最初どこかぎこちなかったが、今では普通に話せるようになっている。
「マサヨシ様、お待たせしました。あの、いかがでしょうか?」
「……うん、サーラさんにとってもよく似合っていますよ!」
今のサーラさんの格好はカーディガンにロングスカート、その上にはアウターにマフラーと、完全にこちらの世界の服装をしている。そしてハーフエルフであるサーラさんの長い耳は大きめのニット帽に隠されている。
「ありがとうございます! マサヨシ様の世界の服はとても軽くて薄いのに温かいのですね。それに肌触りも良くて、どれも素敵なデザインです」
ハーフエルフといっても、特徴的な耳さえ隠してしまえば、綺麗な外国人の女性と変わらない。それにしても、こちらの世界の洋服も本当に似合っているな。いつものドレス姿と違うので、とても新鮮である。
「……なんだか、こちらの世界の服を着ているサーラさんをより身近に感じられますね」
「そ、そうですか!? それは嬉しいです! マサヨシ様の格好もとても素敵ですよ」
「サーラさんに褒められて俺も嬉しいですよ!」
俺も今日の日のために多少はお洒落をしてきたつもりだ。こちらの世界でデートなんて初めてだから、ものすごく緊張している。さあ、デートはまだまだ始まったばかりだ!
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