21.事なかれ主義者は、久しぶりに冒険者ギルドに行く
ゴリマッチョの猫耳親父のライルさんがしてきた長ーい説教も終わり朝食を食べる。
とってもこってり絞られてもうしんどい。
僕のせいじゃないんだけどなぁ。
ラオさんをちらっと見ると、もう食べ終わっていて、食後のデザートとして魔力マシマシ飴を2つ舐めていた。
目が合うと、彼女が口を開く。
「今日、冒険者ギルドに行くからついて来いよ」
「なんか用事あるの?」
「イザベラから連れてくるように言われてるんだよ」
なんかしたかなぁ。
納品はホムラに任せっきりだったし、身に覚えがない。
うーん、と悩んでいたら食べ終わっていたポトフもどきが増えていた。
おかしいなぁ、と思いつつ食べ終わるとまた増えている。
ルンさんのこの行動はなんで起きてるんだろうなあ、不思議だ。
ホムラとドーラさんと別れ、ラオさんが押す台車に乗りながら移動する。
……ドーラさん用の新しい魔道具なんか作ってたっけ?
まあ、ホムラがうまい事やってくれるかな。
「ほら、ぼけーってしてんじゃねぇよ。ギルド入るぞ」
気が付いたら冒険者ギルド前だった。
ギルドに入るとすごく視線が集中する。
だいたいラオさんを見てから僕に来るんだけど、何度も視線が往復している。
居心地悪いなぁ。テンプレ展開とかありそう。まだ会ってないから、ここまで来ると一度くらい会ってみたい。まあ、解決はラオさん任せになるんですけどね!
とか思っていたら、特に問題もなく空いている受付へと進み、そこに座っていた銀髪の眼鏡の似合いそうなお姉さんのイザベラさんを見上げる。
今日もきれいなお姉さん、って感じだ。胸が絶壁だけど。
なんか育乳ブラとか聞いた事があるんだけど……あ、閃いた。
まあ、それは置いといて、イザベラさんに挨拶をする。
「おはようございます、イザベラさん。なんか連れて来られたんですけど、何の用ですか?」
「……ええ、浮遊台車を少し多めに納品してほしいんです。できれば1日に3台で」
「3台もですか?」
3台も作ると結構ギリギリなんだよなぁ。ブラジャー作ってる場合じゃない。
別にそこまでお金が必要、ってわけじゃないからホムラには今ある分を売ってもらうくらいにしてもらうのもありかな。
「今こいつが魔道具売り始めてるのは知ってんだろ。あんまり儲けにならねぇんだったら断ってもいいんだからな」
「領主様から直々の依頼で、できれば受けてほしいのよ」
ラオさんとイザベラさんがなんか言い合っている。
領主様からの依頼を突っぱねたらなんか嫌がらせとかされないかなぁ。
受けてもいいかなとは思ってたけど、なんかやる気なくなってきた。
出来れば関わりたくないタイプの人たちだけど、いつかは領主とか国とかそこら辺からちょっかいかかると思ってたから覚悟はしてたけど――。
「領主様から、大金貨1枚までなら出すと言われているわ」
「やりましょう」
ええ、長い物には巻かれます。
めっちゃお金がもらえるからとかではないですよ!
ほら、有用性を示せば守ってもらえそうだしね。
「へー、外壁の拡張工事するんだ」
「そうらしいです。思った以上に浮遊台車がレンガ以外の物流に影響を与えているからみたいです、マスター」
「まあ、魔力さえあればいろいろ運べるからねぇ」
人が運ばれる姿は未だに見たことはないけど、時々街を散歩すると大通りを小さな子たちが浮遊台車を押して走り回る姿を見かける。
時々事故ってトラブルになっているのも見かける。
勝手に止まる機能でもつけた方がいいのかなぁ。
「とりあえず、これから浮遊台車を3台を毎日作る事になったから新しい魔道具どころじゃないかも。ドーラさんに謝っといて」
「かしこまりました、マスター。……別に毎日新しいのがなくてもいいと思います、マスター」
「え、そうなの?」
「ドーラ様の様子を見ていると、とりあえず収集しているように思われます。実際に使っている姿は今の所ダンジョンで使えるもの以外見かけていません、マスター」
魔力マシマシ飴を買ってるはずだけど、舐めている姿を見たことないしな。
いや、あの兜の下で舐めている可能性はあるんだけどさ。
「ふーん……よし、とりあえず3台完成!インスタントホムンクルスは……作る魔力がなさそう」
「少し大きめのサイズでオートトレースを作ってください、マスター」
「ん? うん、いいよ」
とりあえず、ホムラの求めるサイズの紙を【加工】で作って、そこに【付与】を繰り返して――気づいたらベットで横になっていた。
ホムラがじっと寝顔を見ているのに昨日よりも驚かない自分が怖い。
ラオさんが勝手に当たり前のように入ってくるのにも慣れてきた気もする。
とりあえず今日はちょっと立ち上がるとまずいので、それとなく伝えたら二人とも出て行ってくれた。
……ちょっと普段より外に出るのに時間がかかった。
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