9.事なかれ主義者は道案内をする
ランクが上がってからまた一週間ほど経った。
すぐにダンジョンに行こうというドーラさんに対して断固拒否の構えを見せ、僕は魔力マシマシ飴を舐めながら浮遊台車を作りつつ、余った魔力で冒険のための準備を進めた。
背負い袋は口が広いものに買い替えて、【付与】をした。
次の日ひどく気だるい感じだったけど、何とか収納背負い袋を作れた。
魔力を流すと袋の口を通れば何でもしまえる魔法の袋。
とりあえず、アイテムバッグと呼ぶ事にする。
仕組みはよく分かんないけど、まあできたから良し。
ほんとは時間停止とかそういう機能を付けたかったんだけど、時間を止めたり過去に戻ったり、未来に行ったりするのを想像しても閃かなかった。
時間に関係する魔法とかがないのかな、とかなんとか考えて魔力マシマシ飴を舐めて過ごしていたら日が暮れていた。
ゆっくり過ごした次の日は広げた新聞紙くらいのダンジョン産の紙? に【付与】を二回した。
イメージ的には『オートマッピング』と『ソナー』を【付与】した。
とりあえず自動探知地図とでも呼ぼう。
「レーダーに感あり! お隣の部屋になんかいる!」
まあ、多分ラオさんだろう。
ちょっとこれ、平面上でしか分からないからか、下の階の様子が分からない。
まあ、問題なく使えているからいいでしょう。
【付与】する内容によっても魔力の消費量が変わるのか、今日は気絶する事はなかった。ただ、浮遊台車を作る事ができなかったので、一階に降りて猫耳少女のランとおしゃべりをして過ごした。
その次の日は浮遊ランプを作った。
浮遊台車の応用で、魔石があれば使えるタイプにした。
一番ランクの低い魔石をセットして、灯りをともしてどのくらい持つか様子を見る。
まあ、スライムの魔石でもついているし、なくなったらダンジョンで補充すればいいか。
ただ浮いているだけだと動かないので、起動した人の近くに浮いているように設定してみた。
……これ、お化け屋敷とかで使えそうだなぁ。
そして、約束の一週間が経って、僕はハイキングに行くような恰好で、はじめのダンジョンの前にいた。
周りの冒険者も僕と似たような格好に武器を持っている人が多い。その次で、革鎧を身につけている人。
そんな中に全身鎧のドーラさんがいるのですごく浮いていた。
周囲の視線を集めながら、ガチャガチャと音を立てて僕たちの前を歩いている。
ただ、背中には黒い大盾を背負い、腰には本人曰く、護身用の剣を身につけていた。ただ、あくまで盾役なので攻撃はあんまり期待しないように、と言っていた。
僕の後ろを歩くラオさんもいつものタンクトップ姿ではなく、なんかの魔物の甲殻で作られた防具を身につけていた。
黒い防具がきれいに磨き上げられているようで、光沢がある。
胸部は女性らしさを表すように大きく曲線を描き、足元もぴったりサイズなのか、いつもと同じシルエットがまるわかりだ。
防具は重くないのか疑問だったが、とても軽い素材らしい。以前つけていたグローブを身につけていて、後ろをついてくる。いつものように魔力マシマシ飴を舐めているけど、それ僕のだからね?
ホムラは無表情で僕の隣を歩いていた。とんがり帽子に大きめのローブを身につけている事から魔法使いっぽい。魔法を使ったところは見た事ないけど、使えるのかな。
ホムラ以外の人のいつもと違う装いに意識が向いていたが、もうダンジョンの入り口前だった。
街を出て数十分ほどの距離にあるダンジョンの周りには商売人がいたり、ギルドの監督官がいたりする。
ダンジョンの出入り口は四方を壁で覆われていて、魔物が出てきても対応できるようになっている。唯一の門をくぐり、壁で囲まれた内側に入ると、小さな公園くらいの広さがあった。
魔法陣が描かれていて、そこから時々出てくる人もいるが、中央にあるくぼみから人が出たり入ったりしている。
他の冒険者と同じように、くぼみの奥にある階段を下りていく。
階段を下りきると大部屋のようなところにでた。辺りは薄暗いが、他の冒険者が出した灯りで照らされている。照らされている先に通路のようなものが無数に広がっている。
「ここのダンジョンの特徴として、最初の階層はただ迷路になってるだけなんだ。その日によって正解のルート変わるからめんどくせぇが、魔物は出てこねぇ。ただ、罠は時々あるから気をつけろよ」
「地図はある。任せて」
ラオさんが後ろから教えてくれた。
ドーラさんは荷物の中から地図を取り出した。
迷路だったら使えそうだ、と僕もアイテムバッグから自動探知地図を取り出して、眺めてみる。
ちゃんとマッピングされているようで、全体図を表示してくれた。
マップ中央が現在地になっていて、たくさんの魔力の反応がある。
自動探知地図を眺めていたらちょっと陰った。顔を上げるとドーラさんがのぞき込んでいる。
「なにそれ」
「地図です」
「……とりあえずポーターに道案内任せるぞ。ほら、どっち行くんだ」
ため息が後ろから聞こえた。
なんかあったんかな? とりあえず気にせず進む事にした。
ちょっと見辛いので鞄の中から浮遊ランプを取り出す。
くず魔石を入れると灯りがついて自分の真横の目の高さくらいで手を離すとその場で静止した。
「なにそれ」
「灯りです」
「…………さっさと進むぞ」
ラオさんのため息を合図に、僕たちは歩き出した。
地図には階段のようなマークも書かれているので、多分そこまで進む感じでいいだろう。
通路の先はまた大部屋だった。今度は分岐がさっきよりも少ないが、どんどん行こう。
罠とかはこれに反応しないのか、時々ラオさんに首根っこをつかまれて止められたり、立ち止まったドーラさんにぶつかって止まったりしたけど、特に危なげなく階段についた。他の冒険者が上がってきたり下って行ったりしている。
僕たちも流れに逆らわず、そのまま進んだ。
第二階層も特に見た目は変わっていなかった。ただ、冒険者の数は少なかった。
「第二階層も迷路だが、魔物も出るから気を引き締めていくぞ」
ちょっと初めて見る魔物に緊張して手が汗ばむ。
ただ、手に持っている魔道具は変わらず、魔力の反応を示してくれている。
所々の部屋で魔力反応が団子状になって微妙な動きがあるのは多分戦っているんだろう。
魔物と人の判別が出来るようにしたいなぁ……あ、閃いた。今度改良しとこ。
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