第50話 アルフレッドの伯母からの手紙

 教会の騒動も落ち着き、穏やかな日々が続いていた。


 朝食を終えたアルフレッドにトレヴァ―が声をかけた。

「アルフレッド様、お手紙が届いております」

「分かった。トレヴァー、そこに置いておいて」

「緊急のご用件のようですが」

「ん? そうなのかい?」

 アルフレッドはトレヴァーから手紙を受け取り、宛名を見て眉をひそめた。


「伯母から? 嫌な予感がする」

 アルフレッドはトレヴァーから受け取ったペーパーナイフで手紙を開け、便箋を取り出した。便箋をめくるたびにアルフレッドの眉間のしわが深くなる。

「……まいったよ、伯母が見合いをすすめてきた。今回は逃げるのが難しそうだ」

「そうですか」

 トレヴァーは落ち着いた表情でアルフレッドの顔をちらりと見た。


「どうしようか……。あ、そうだ! フローラ、ちょっと来て!」

「はい? なんでしょうか?」

 フローラは食堂の片づけをやめてアルフレッドのそばに駆け寄った。


 アルフレッドは紅茶のおかわりを頼むような気軽さでフローラに言った。

「僕と婚約してくれないか?」

「え?」

 フローラは怪訝な顔をしてアルフレッドを見つめた。

「私がアルフレッド様と? 婚約?」


 アルフレッドは、にこやかに言葉を続けた。

「ああ、悪い話じゃないだろう? 君は行くところがないし、僕は結婚する気がない。それなら僕とフローラが婚約すれば……解決だろう?」

 無邪気に微笑むアルフレッドにフローラは冷たい一瞥を与え、頭を下げた。

「……失礼いたします」


「ちょっと待って、フローラ!」

立ち去るフローラにアルフレッドが慌てて声をかけたが、フローラはふり返らなかった。

「僕、何か悪いことを言ったかい?」

 きょとんとしているアルフレッドに、トレヴァーがあきれた顔で言った。


「……アルフレッド様が悪いと思いますが?」

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