第27話

「ユリアの母親のマリーは、ユリアを身ごもっている時に魔女として教会に殺されました。魔女の刻印を押されたのです。かろうじて生まれたユリアにも、魔女の刻印が刻まれていました……」

 リーンの言葉を聞いてフローラが硬直した。

「魔女の刻印ですか!?」

 フローラが思わず大きな声を出すと、アルフレッドが驚いてフローラを見つめた。

「魔女の刻印? 前に聞いたこともある気がするけれど、僕は詳しいことは知らないな。フローラは知ってるのかい?」

 フローラは青ざめた顔でアルフレッドに説明をした。


「魔女の刻印というのは教会に伝わる秘術で、印を刻んだ相手の魔力を吸い取ります。そして、魔力が尽きると今度は相手の生命力を吸い取るという恐ろしい呪いです」

 フローラの説明を聞き、アルフレッドは渋い顔をした。

「……フローラさん、よくご存じですね」

 リーンの言葉を聞いて、フローラは言いにくそうに答えた。


「あの、私も一時期教会で御子見習いをしていましたので……その時に教会の図書室にあった本で読みました」

 フローラの話を聞いたリーンは、とまどっている。

「では、フローラさんも教会の味方なのですか?」

 リーンは警戒するようにフローラの目をするどく見つめた。


「リーンさん、フローラは大丈夫ですよ。御子失格と言われて教会を追い出されていますから」

 アルフレッドが柔らかな笑みを浮かべてリーンに話しかけた。

「でも、魔女の刻印が刻まれているなら……早急に手を打たないとユリアさんの命が危ないです」

 フローラはアルフレッドに訴えた。


 それを聞いたリーンもアルフレッドに懇願した。

「どうか、ユリアを助けてください」

「教会を敵に回すのは避けたいけれど……ユリアさんを見捨てるわけにもいかないね……」

 アルフレッドは少し考えた後に、トレヴァーに言った。

「トレヴァー、外出の準備をしてくれないか?」

「……かしこまりました」


「それじゃあリーンさん、家まで案内してくれますか?」

「はい!」

「フローラも来てくれるね?」

「……はい」

 アルフレッドは外出の準備が整うと、リーンの家に向けて馬車を走らせた。

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