第四話 良くない兆し
テンランが俺の背後に迫っていたので、それは即ち何か伝えるべきことがあるということだ。気配に気づいて振り向かずに問う。これはただかっこいいと思っているからやっているだけで本当なら気づいた瞬間正面を見ている。
「テンランの気配は感知しやすいからな」
長年一緒にいるのでテンランだけは神傑剣士の中で1番気配がわかりやすい。
「それで、急いでるみたいだけど?」
「ああ、
「明日?!いきなり過ぎないか?」
「それは皆同じ気持ちだよ。だから私もこうしてここで君と話してる」
今まで
「了解。いつものとこに何時に行けばいい?」
「17時らしい」
「了解」
おそらく学院生の俺のために時間に余裕を持たせてあるのだろう。国王に感謝だ。
「それじゃ私はここで」
ここでのでの部分で後ろをパッと見たがすでにテンランは消えていた。さすがは空虚、何事もなかったかのように消えていくな。
誰もいないこの決闘場で1人いるのは変に思われる。なるべく早く外に出るとする。
それにしてもリュートはテンランがこの学園の理事長と知っていて俺をテンランの前でボコボコにするんだから相当なメンタルの持ち主だ。普通なら神傑剣士の前ではみんな真剣にやるんだが。
まぁそんなリュートもちゃんと裏では神傑剣士に媚び売ってるから真剣っちゃ真剣なんだろうけどな。
決闘場を出て教室に戻る。すでにそこには生徒は誰もいない。俺って担任にも生徒扱いされてないってどれだけなんだよ。
俺のクラスは俺以外みんなレベル4以上のエリートたち。これはクラスを決めたやつが俺のいじめの原因でもあるんじゃないかと何度もテンランに愚痴ってたが、完全ランダムで決められたらしく運の無さもレベル3だった。
ホントはレベル6なのにな……。
数少ない荷物を持ち玄関を出る。幸いリュートたちは俺の私物に手を出すことはしてないので
外は時間に合わない薄暗さで不気味だった。こんな日もあるんだとのほほんとしながらも歩く。そして周りも警戒しながら。
しばらく歩き広場前まで来ると、殺意むき出しで鋭利な物が投げられた。俺はそれを靴紐が解けたことにして屈むことで躱す。傍から見ればたまたま、神傑剣士から見れば当たり前と思われる回避だ。
頭の上を通り過ぎる鋭利な物に、うわぁ、と驚き、腰を抜かしたふりをする。まじ、演技だけなら俺この学園で1番取れるわ。
少し先の木に刺さり、それと同時に殺意と気配は消える。
すぐに俺は刺さった物がなにか確認しに向かう。こんな薄暗くなったのは今のやつのせいか?タイミング良すぎるだろ。
「
それはこの世界の短刀と言われるレベル1でも扱える武器で、短刀ならいついかなる時でも扱うことができる。
もちろんこんなものでは俺はやられない。が、気になるのはなぜ俺を狙ったのかということ。たまたま見かけたやつなら誰でもいい主義ならありえるが、殺意の域が俺を知っていてのものだった。
もーめんどくさいこと増やさないでくれよ。俺はいろいろと探すことが苦手なんだよぉ!
一応短刀を持って帰ることにする。テンランに見せれば何か分かるかもしれない。そして雨が降り始めたころ、俺も急いで自宅へと帰った。雨に濡れるのは好きじゃない。風邪をを引けば体力が落ちるしバカにされる。そんなのゴメンだ。
自宅にはテンランが居た。俺よりも先に戻ってきているということは理事長の仕事をほったらかしにしてきたということ。今日もか。これで合計500日いったんじゃないか?
頻繁に理事長のしごとをサボっていて、その尻拭いをするのは悲しいことに副理事長であるダウティ・ウェイン。ウェインはレベル5で、現
つまりこの王国には序列が100まであり、それに名を連ねることが皆の憧れとなる。100位以内に入ると、第◯位とランキングがつけられ、101位以下とは比べ物にならないほど地位と名誉とお金が与えられる。そのために皆、剣技を磨く。そして神傑剣士に挑み勝利すれば、第◯座とランキングがつけられ、最強の称号を手に入れることができるのだ。
ウェインは第8位ぐらいだった気がする。レベル5の中でも飛び抜けた才を持つ天才だ。
「ウェインが今ごろ泣きながら、テンラン様ヒドイですってなってるぞ」
「それは私も想像できる。でも君もあの仕事をやってみれば辞めたくなる気持ちも分かるさ」
「んー学園全体ってなると約1万人だろ?無理無理、考えるだけでやる気削がれる」
「それが毎日なら私は褒められるべきでは?」
「テンラン様様ですね……」
1万人の生徒は多いと思うかもしれないが、実際王国内で見るなら少ないほうだ。エリートしか入れないため1万人で済んでいるが、近くにあるレベル制限なしのリウェル学園なんか10万人は超えていると言われているほど生徒が多い。
考えるとなんか頭痛くなってきたな。
そんな中でエリートばかりを教育するのだ。テンランもなかなかにハードスケジュールだろう。
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