エルフの村
第10話 帰省
メル、リア、そしてランとパーティを結成して数か月が経ったある時、依頼で遠出をした際に近くにランの故郷であるエルフの村があることを知った。
ランも久方ぶりの故郷にソワソワしているようだったので、せっかくだから立ち寄ることにした。
かくいう俺もメルもリアもしばらく村に帰っていないな。冒険者という稼業の特性を考えると、帰れるうちに顔を見せておくべきかもしれない。
「故郷に帰るのはいつぶりだろうか。長らく帰っていないから皆驚くだろうな」
「長い年月を生きるエルフもやっぱり故郷が恋しくなったりとかあるのか?」
「無いと言えば嘘になる。だが冒険者である以上、そんなことは言っていられないからな」
ランはそう言うが、それでもやはりどこか落ち着きがないように見える。きっと故郷に帰るのが楽しみなのだろう。
「エルフの村って森の奥にあるって聞いたけど魔物とかは大丈夫なの?」
「高い城壁に囲まれている上に、高レベルの兵士が常に巡回しているからな。少なくともSランク魔物でも来ない限りは大丈夫だ」
「それってSランク魔物が来ると不味いってことなんじゃ……」
「昔から一度もSランク魔物に襲われたって話は聞かないからな。あの辺りにはそもそもいないのだろう」
ランにエルフの村について聞きながら歩いている内に、村へとたどり着いた。
「確かに強固そうな城壁だな」
ランの話の通り、高い城壁が村全体を覆っている。高いだけじゃなく、相当な厚みがあることが見て取れた。
素材には鉄よりも硬いとされる竹の一種を使用しているようだ。魔物に攻撃されたと思しき傷がいくつかあるが、そのどれもが奥に届かずに表面で止まっている。確かにこれなら魔物に襲われることは無いのだろう。
「止まれ。何者だ」
「私だ。ランだよ」
「ラン様! 申し訳ございません、どうぞ中へ」
門を守っていた兵士はランの顔を見るなり、急に態度を変えて俺たちを中へと通した。
「ラン、この扱いはいったい……」
「そうだな。サザンにはまだ言っていなかったか」
ランがその続きを言おうとした時、恐らく村長であろう恰好をした人物がランを出迎えに建物から出てきた。
「ラン……どうしたのだ急に帰ってきて。それに、勇者の方々はどこに……?」
「ああ、それなんだが……。私、勇者パーティを追放されてしまったんだ」
「なん……だと?」
村長はその言葉を聞くなり、血相を変えて辺りをウロウロと動き回り始めた。
「え……ランって勇者パーティにいたの?」
「勇者パーティって魔王を倒しに行くあの勇者パーティでしょ!?」
俺もかつて聞いたことがある。選ばれし存在である勇者は、この世界に災いをもたらす魔王を討伐するため旅を続けていると。ただのおとぎ話だと思っていたが、本当に存在していたのか……!
「私、剣の腕を認められて勇者パーティに迎え入れられたんだ。……でも、結局追放されたんだ」
「あの時言っていた追放されたパーティというのが……?」
「そうだ。勇者パーティの魔術師に急に追放を言い渡されてな。理由は以前話した通りだ」
まさかランが勇者パーティのメンバーだったとは。
ダンジョン内で追放するなんて碌な奴じゃねえって追放した奴に文句を言ってやろうと思っていたが、さすがに勇者パーティとなると尻ごみしてしまうな……。
「ランよ。勇者パーティから追放されたというのは事実なのだな?」
「ああ。期待に沿えず申し訳ない。だが私はこの者、サザンたちと新たなパーティを組んで」
「……この恥さらしが」
「……え?」
村に帰ったランに村長が言い放ったのは、労いの言葉でも励ましの言葉でも無かった。
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