異世界女神様に溺愛された ~アイは宝石魔図鑑で世界を楽しみます~
色石ひかる
第1部 大切な宝石
第1石 オパール
第1話 女神様に溺愛された
目を覚ますと宇宙にいた。正確には見渡す限りの星空だった。さきほどまでミネラルショーに行っていた。勝利品を片手に家へ帰る途中で世界が揺らいだ。
「意識と体が繋がりました。これで償いができます」
声の方向を向くと女性が立っていた。全身が光輝いてダイヤモンドみたい。理想とも言える顔立ちで長い髪も素敵だった。まるで女神様みたい。
「私に何かあったの? 今の状態が飲み込めない」
声に違和感を憶えた。同じ女性の声だけれど、幼い少女の声だった。
私は
「ワタシはこの世界を管理している、イロハ・ミララッテです。あなたはワタシの世界で残りの人生を楽しんでください。元の体は再生不可能で妹と同じ姿にしました」
「ちょっと待てよ。私が私でなくなるの?」
「見た目が異なるだけで、あなた自身です。ワタシの姿でも可能ですが、生活が成り立たないでしょう。新たな人生です。あなたの名前は妹と同じアイです」
目の前に鏡が現れた。鏡の中に少女が写し出された。見慣れない服装で中学生くらいだった。本来よりも十歳くらい若いかもしれない。発育もよくて、中学時代に憧れていた容姿だった。肩まで伸びた髪は青白かった。
「本当に少女の姿ね。私の知らない科学技術よ。ここは日本なの? 海外に連れて来られたかもしれない。償いも意味が分からない」
「ここは地球ではありません。別世界です。地球は妹が管理しています。妹の手違いであなたを消滅させてしまいました。元の世界に復活できませんでした。姉であるワタシが管理している世界に復活させました」
小説や漫画にある異世界転生みたい。現実するとは思わなかった。普通に考えれば別人の姿にはなれない。私を騙して得する人もいない。
「イロハさんは、この世界を作った女神様なの?」
「概念は合っています。ワタシを信仰している人間も多いです。人間は魔物を退治してくれます。信仰心の厚い人間にはワタシの加護で神聖魔法が使えます。怪我や病気を治せる回復魔法です。極僅かですが、直接会って話した人間もいます」
姿だけではなくて本当の女神様だった。本来は対等に話せる立場ではなさそう。せっかくもらった機会だった。有効に活用したい。
「内容を整理すると、第二の人生をイロハさんが作った世界で過ごす」
「その通りです。ワタシからの指示はないです。あなたの好きなように、ワタシの世界を楽しんでください。世界を破滅させなければ、何をしても構いません」
私は両親を知らなかった。児童養護施設で育った。施設の人に恩返しができない。友達と別れるのは悲しい。昨日も友達と一緒にカラオケで歌って踊った。もっとルースを拝みたかった。魅惑的な宝石は地球の奇跡だった。
この姿を見れば悟るしかなかった。元の世界に戻れない。
前向きに考えてイロハさんの世界を堪能する。元の世界に彼氏はいなかった。素敵な出会いがあるかもしれない。イロハさんの世界にも宝石があれば嬉しい。イロハさんの様子が変だった。真顔で私を見つめていた。
「呼び方を変えましょう。あなたの姿は妹のアイです。精神以外は全て再現しました。アイは別世界で滅多に会えません。でも今はあなたがいます。いえアイがワタシの世界にいるのです。アイはワタシをイロハお姉様と呼ぶのです」
最後は命令口調だった。理由はわからない。でも逆らうつもりはなかった。
「イロハお姉様。これでよいですか」
「愛しいワタシのアイ。ワタシの楽しみが増えました」
抱きついてきた。いくら同じ女性でも、素敵な女性に抱きつかれると赤面する。振りほどける力はなかった。私の気持ちは気にしないのか、頭を撫でて頬ずりをしてきた。
心の中までイロハお姉様では恥ずかしい。心の中ではイロハ様ね。イロハ様は妹が好きみたい。いや溺愛している次元よ。時間が経つと暖かな雰囲気に包まれた。精神が癒やされて気持ちも落ち着いてきた。
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