Augustarより

@LagZet

Foreword

それは、ある夜のこと。

横殴りの雨つぶが傘の無力さを強調する。

特に意味もないが、わざと水溜りのふちにぴちゃりと足を染めて歩く。

時折飛来する大きな雨玉が自然と顔を俯かせる。

重力がかかっているみたい。

下を向けば繁華街の明かりが乱反射でボクを襲う。あんまり強い光は、だけど暗い。そんな気分。

行き交う人びとは一ミリも濡れていないのは、きっと魔法のおかげだろう。いや、ボクが濡れているのが、科学のせいなんだ。彼らからすれば。

耐えきれなくなったシャツから肌に伝わる冷感。

同じものが前髪の先から頬を走る。涙の感覚。


同じ感覚を持った少女がそこにいた。

それも、もっと、リアルな。


スチームパンク調の街灯に照らされた少女の姿はあまりに寂しげだ。

サイダーみたいに透明な髪は滴りまとまりを覚えていて、濡れた衣服はその華奢な姿形を映し出している。

頬には光を求めて集まった虫たちの影ができている。斑点模様の肌からでも伝わる確かな、一本の水の線。

きっと彼女も泣いている。




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