第6話

 それはある冬の日、とある山奥に貧しい暮らしをする老夫婦がいて、そのおじいさんが出かけている時の事です。

 山奥で木の近くでバタつく鶴がいました。

 近づいて確認すると、どうやら草が脚に引っかかって飛べないようでした。


「かわいそうに。助けてあげよう」


 そう言うと、手に持った刃物で草を切り鶴を解放するとそのまま飛んで去っていきました。


 その日の夜、老夫婦の家にとても美しい女性がやってきました。その女性は雪の中道に迷ったらしく、「今晩泊めてほしい」と言ってきました。


 快く老夫婦が承諾し、その女性を泊めることにしました。


 そしてそこから少し時間が経ちました。


 バンッ!


 入口から大きな音が鳴りました。

 慌てて駆け寄る老夫婦。

 そこにはまた別の麗しい女性がもう一人。

 今度は鬼の形相で立っていました。


「何じゃ何じゃ?!」


「すみません、失礼します」


 女性は強引に家の中に上がります。

 それをポカンと眺めている老夫婦の目の前では女と女の目があっていました。


「あなたの企みは分かっている。観念なさい」


「何故ここが分かった?!」


 先に上がっていた女性はすぐ距離を取ると、腕が植物になり後から来た女性を襲います。


「な、何じゃこりゃあ?!」


 老夫婦が怯える中、後から来た女性が捕まってしまいました。


「これじゃクレーンバレットが打てない!」


「くはは、観念するんだな。それじゃあまずお前から頂こうか!」


 変形した女の顔がウツボカズラのような顔に変形し、女性を筒で包もうとします。




「応援して!」




 おじいさん達はポカンとしました。


「お、応援?」


「お願い、おじいさん達の応援が力になるの。私を応援して!」


 ……全く理解ができませんでしたが、それでも頭の中がてんやわんやな老夫婦は応援することにしました。


「が、頑張れあんた!」


「そうよ、負けないで!」


「ああ、ありがとう。力が……溢れてくる!」


 すると、女性の体は神々しく光り、次の瞬間捕らえていた触手が細切れになりました。


 女性は怪物の背後に、合金のように輝く羽を背中に生やして立っていました。

 次の瞬間。植物は倒れ、爆散しました。


 次の日の朝。家の前で話をしていました。


「私は、あの時助けてもらった鶴です」


「何ですと」


「怪人ウツボカズーラの罠にかかり、力の失くした私が食べられかけているところを助けてくださいました。それを恨んだ怪人があなた達を食べようとしたのです」


「そうだったのですか……」


 おばあさんの感嘆に言葉を続ける人型の鶴。


「驚きました。おじいさん達に恩返しをしようと、人に変わり会いに行こうとしたらあいつの気配を感じたのですから。……でも、あの姿を見られてはもう恩を返すこともできません。これくらいしかできませんでしたがそれでも……ありがとうございました!」


 そしてさようならと言いながら背中から羽を出し、音速で飛び去っていきました。

 おじいさん達は叫びます。


「こちらこそありがとうございましたーー!」


 これからも彼女の戦いはまだまだ続く!

 ありがとうクレーンヴァルキュリア!

 頑張れ、クレーンヴァルキュリア!!






第六話 「弥生聖女・クレーンヴァルキュリア 五十三話 恐怖、返し!」

ー完ー

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