七節「久崎と鏡夜」
あの後の沈黙を破ったのは俺だったのだ。
「なぁ、久崎。俺の宝石の灯をお前が灯したのか・・・?」
すると先ほどまで下を向いていた彼女は顔をあげた。
「あ、はい!鏡夜先輩が気絶している間に・・・あ、だめでしたか・・・?」
「いや、そんな訳ではないよ。お陰様で少し懐かしい夢を見れたから・・・」
「夢ですか・・・」
窓を見つめ外の景色を見た。すると久崎が立ち上がり窓を開けてくれた。軽く笑顔で「ありがとう」と返すと彼女も笑って「どういたしまして」と返す。
「家族との夢・・・少しだけ懐かしくなったよ・・・」
「先輩、申し訳ございません。私・・・」
「俺を殺そうとしたんだろ?」
言おうとしていたことを言われて驚いた顔をしていた。
「どうして・・・?」
「だって顔を見ればわかるし。昔からお前はわかりやすいからな」
「やっぱりかないませんね・・・」
「でも殺さなかった・・・俺を信じたんだろ?」
「はい、私の憧れ、最強と呼ばれた先輩が憧れでしたから!」
久崎は席を立ち、ドアの前に立った。
「完治したら、私がいる家に来てください。渡したいものがあるので」
「わかった。向かうよ」
ドアを開けて、久崎はその場を後にした。
数分後
ドアがノックされゼノンさんと食事を持った看護師が入ってきた。
「キョウヤくん。ご飯を持て来たよ」
看護師の人は食事を置いてどこかへ行ってしまった。
「ゼノンさんはここに残るんですね」
「そりゃ、聞きたいことがあるからね」
そういって椅子に腰を掛けるゼノンはメガネを上げて真剣なまなざしで
「風神様との関係ってなんだ・・・?」
と聞いてきたのだ。
「古い友人。戦友であり殺し合った仲間だ。それ以上でもそれ以下でもないけど、俺にとっては大切な仲間なんだ・・・」
「古い友人・・・なるほど、これは詮索しない方がいいな・・・すまない、今聞いた話は忘れるよ。その方がいいと思うし」
「まじめだな・・・」
「まだ死にたくないからな・・・」
俺は渡されてた病院食を口にする。
「いいのか?ほかの患者のところに行かなくて」
「あぁ、上の方から君専属になってとの要望で暇なんだ・・・」
「実質サボりだな、味うす・・・」
「サボりじゃない。病院食だからな、我慢しろ」
そんな他愛もない会話で3日が過ぎてゆくのだった。
「外傷がなかったし軽く打撲しただけだったから回復が早いな」
病院に回収されていた物を返されながら会話をする。
「まぁ、これでも旅人だからな。体は丈夫な方だと自負してるし」
指輪をはめて、粒子放出をして白のコートを身に着ける。
「粒子を使って衣装変更できるのか・・・?」
「できるけど、白のコートぐらいしか出来ないかな。このコートは馴染み深いから」
「なるほどな、あ、それで最後だ。最終確認しておけ」
荷物自体はもともと少ないので確認してもすぐに揃っていることが確認できた。
「ゼノンさん、お世話になりました。ありがとうございます」
「構わないよ、君と話せたのは楽しかったよ。短い間だったけどね」
握手を病院を離れて、渡された地図を頼りに久崎の待つ家へ向かった。
久崎が住む家は風神の国であるロウラスから少し離れたところにあった。
「待ってましたよ、鏡夜先輩」
家の前で待っていた彼女は扉を開けて出迎えてくれた。
靴を脱ぎ「お邪魔します」とつぶやいて家に入る。
「腰を掛けてください。飲み物持ってきます」
そういわれ少し大きなソファに座れされる。待っていると机の上にあの時渡された資料があるにに気が付いたのでもう一度読み返すことにした。
今から80年程前のに人類史を白紙に戻して、完璧な歴史を作ろうとした人物。
俺と意見が合うことがなく殺し合いをする羽目になった人物だが、
「人類史・・・奴と対立した理由だったな・・・」
「私はその人類史ついてどうお考えなのか聞きたいのですよ」
そう言ってティーカップを二つ持ってきた久崎は俺の目の前に座った。
「学校の課題でもあったよな。人類史について考える課題が」
「ありましたね、私はあの時から考えは変わってないのですよ。私は一人の人としてこの世界と人々の歴史、人類史を見ていたのです。神になるつもりもありませんでしたし。だからこそ鏡夜先輩を殺せませんでした・・・」
「久崎は俺を殺したかったのか・・・?」
そう聞くと彼女は驚いて顔をして前のめりで
「そんな訳ではありません!!ただ、怖かったんです・・・憧れの先輩が苦しむ姿を見るのを・・・だからこそ聞きたいんです。必ず鬼神になると分かった鏡夜先輩からこの先の人類史をどうするのかを!」
実際、どうしたらいいのかわからなかった。人類史と言われてもどんな歴史があったのか、どんなことがあって現状に至るのかもわからなかったからだ。
「まだ、はっきりとして答えが出ていない・・・記憶も曖昧な部分もあるし・・・でも、後悔はしたくないと思ってる。少なくとも俺は積み上げた歴史を壊したくないと思っている」
「なんだ、先輩はあの時から変わってないんですね」
そういって席を立った久崎であった。
to be continued…
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