九節「ネトラス・ロストシティ」
ゼロ・・・やはりこの名が出てきた。
『言っただろ?君を導く者だと。私の名はゼロ、この世の抑止力だ』
あの洞窟で言われたことを思い出す。刀を鞘に納めて改めて問うことにした。
「その男はどこで会った?」
「それについては私が答えよう」
そう言って男がイズミの後ろから出てきた。
「あんたは・・・?」
「私の名前はレグルス。レグルス・アステラだ」
苗字持ち・・・!おそらく神々以外では彼が初めてだろう。
「よかったのですか?レグルス隊長。フルネームを明かして」
「構わない。彼にはどうせバレるだろうし」
俺たちに向けられていた銃口を下すように指示していた。
「君の名は?」
「イズミです」
「イズミ君に鏡夜君。君たちをネトラス・ロストシティに案内しよう」
あれからイズミは彼らの車で。俺は自前のバイクでの移動を開始してしていた。ゼロという男は黒崎涼也より謎めいてきた気がした。
「ん・・・?あいつが持っていた刀・・・今の俺の刀に似ている気がする・・・」
あまり考えても仕方がないと思い運転に集中することにした。
ロストシティ自体は俺の記憶を刺激する街並みをしていた。数千年前の街並みがそのまま錆びて目の前にあるような光景だ。
「確か、2000年代の街並みがこんな感じだったな・・・」
千年戦争以前の街並みだろう。ロウラスの病室で暇していた時に本で読んだ気がするのだ。整備された道路というものはよく見るが、ここまでボロボロなのは俺は見たことなかった。ビル街のところもあれば、住宅街もあるし、何なら人が普通にいるからさらに不思議に感じる。
「完全に戦争の後だな・・・」
80年前に自分たちが戦っていたからこそ出てくる感想である。
「ここの土地は岩神の意向で都市開発をしていた。そのおかげで粒子魔法での影響が大きいが・・・」
車を降りてきたレグルスはこの街の状況を語ってくれた。
簡潔にまとめると岩神はすでにいないらしい。五年の間に殺されたとのことだ。そのせいで機械化魔獣や魔物達が攻めてきていたが守護龍が対処しているとのこと。
「ここの守護龍は人に優しんだな」
「優しいわけではない土地の管理者であるからその土地で暮らす人の平和をながって行動しているだけで外から来たよそ者は皆、守護龍から嫌われているよ」
「なら俺もイズミも嫌われるな」
荒廃したビル街のある建物内に俺たちは案内された。
「ここは俺達、ネトラス・ロストシティを奪還するためのレジスタンス基地だ」
武装した兵士が多くいて、威嚇する者もいれば歓迎する人もいる。
「キョ、キョウヤさん・・・怖くないのですか・・・?」
「怖くないぞ、アルダマラに喰われかけた時より百倍マシだ」
「それほんとにシャレにならないですよ・・・」
「仲がいいな、お前たち。羨ましいよ・・・」
「え、レグルスさんにも仲間が・・・」
「イズミ、野暮なことは聞くな。人によっては掘り返してほしくない内容だ」
「構わんよ、鏡夜君。私には友がいたよ。けれどこの戦場のせいで皆戦死してしまってね。だから仲がよさそうな君たちが少しだけ羨ましいと思ってしまったのだよ」
その言葉を聞きイズミが少しだけ悲しそうな表情をするが俺が軽く肩をたたくと深呼吸をして元の笑顔に戻ったのだ。
「いい顔をするんだな。君はいい戦士になりそうだ」
そうして彼は作戦室のような部屋に案内してくれた。
中に入りレジスタンスの会議を聞いていると時間が過ぎていた。レグルスは会議が終わると俺たちのもとへやってきた。
「鏡夜君にイズミ君、待たせてすまなかったな。明日は君の目的である桜の丘に向かおうか」
「いいのか・・・?戦場を離れることになるが・・・」
「構わない。だって万全な状態で攻め入りたいからね」
そう言いレグルスは会議室を離れた。
to be continued…
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