鬼神 神々にとっての人類史

坂月霞

第一章「ソル」

一節「目覚め」

牢獄から連れ出され両手を拘束され、鎖の音を鳴らしながら歩かされていた。

「もうすぐ外だ。日差しが強いかもしれないから気をつけておけ」

鎖を軽く引かれ、横にいる男性にそう言われゆっくり頷く。松明たいまつの火が灯った道の先には強い光を感じる。その光には吸い込まれるように俺は進んでいた。外に出るとあまりにも強い日差しが身を焼き尽くすように照りつけて光の強さに思わず両手で目をふさいでしまったのだ。

「この辺は火山地帯だ。気温が高いから喉が渇いたら言え」

そう言って白い騎士は頭につけていた兜を外した。短髪の金色がキラキラと光って見え美しく感じる。

「ん?俺の髪になにかついてるのか?」

「あ・・・う・・・ついて、ない」

ことに違和感を感じる。会話ができないということは百も承知だ。それでも疑問があったからある質問をしたのだ。

「ここは・・・どこなん、ですか?」

「あぁ、そういえばまだ言ってなかったな。ソル大陸にある島一番の繁盛国。ソルリアスだ」




鎖を両手につながれたまま城内に案内された。彼は兜を置きカギを取りだして、俺の手錠を外したのだ。すると大きな扉の前まで連れてこられて

「炎神様、彼を連れて来ました」

彼がそう言うと少し間が空いて声がかってきた。

「入っていいぞ」

その声を聴いた彼は大扉を両手で開いたのだ。目の前に広がった光景はまさしく王室に相応ふさわしい場所であった。中央の王座に座る赤い騎士はとんでもないオーラを感じ取れる。一目で炎神と分かるほどのものだったのだ。王座から立ち、炎神のもとへ歩いていた俺の前で赤い兜を取ったのだ。

「初めまして、俺の名前はアレス。人々からは炎神と呼ばれているものだ」

彼が差し伸べた手を握ろうとするが、体にうまく力が入らず、震えながら手を挙げた。やっとの思いで握ると俺の意識は吸い込まれるように消え、体ごと倒れてしまったのだ。


暗く、暗く。

痛む、痛む。

全身が蝕まれるような感覚。

ある景色が広がる。月光に照らされている一人の男。

その男を見るとなぜか殺意がわいてくる。

「あいつを、殺さないと・・・」

なぜ?そんなことをしないといけない。

「あいつを、止めないと・・・」

顔も名前も思い出せないのになぜか忘れられない・・・

何かつかもうと手を伸ばすと意識は落下する・・・



意識が覚醒する。先程より力が入るようになり、起き上がる。

「君、大丈夫なのか?俺と握手した瞬間、倒れだしたからびっくりしたぞ?」

頭痛がするから頭を押さえながら返答する。

「俺は、大丈夫。ただ誰のか分からない記憶が見た気がして・・・」

自分でも驚くほど会話がスムーズにできていたので目の前に居るふたりは不思議な顔でこちらを見ていた。

「なぁ、ハヤセ騎士。彼は先程までうまく話せてなかったよな・・・?」

ハヤセ騎士と呼ばれた金色の短髪の騎士は腕を組み顎に右手を当て

「そうですね、覇気のない声だった気がしますが・・・」

「ひとまず君の、名前を聞いていいかな?」

「俺の名前は、鏡夜・・・です」

「キョウヤ?聞き覚えがあるな。どこかで会ったことがある?」

彼はあったことがあるらしいが、残念ながら俺には記憶がないからわからないのだ。もしあったことがあったらそのうち思い出せると思うが・・・

「まあ、いいや。恐らく、俺自身ではなくこのがそう思っているだけかもしれないし。ハヤセ騎士長。彼の面倒を見てやってくれ、おそらく、彼は

「わかりました。炎神様、模擬戦でもやってみます。キョウヤ、行くぞ」

そう言われ俺はハヤセと言う男に連れられその場を離れた。


俺はハヤセ騎士長に連れて行かれ1VS1の模擬戦を申し込まれた。

「初めまして、この決闘の審判を務めます。炎神特務騎士えんしんとくむきし偵察ていさつ部隊長、ルミナと申します」

ルミナさんが模擬戦のルールを説明してくれたのだ。


1.お互いの鎧及びアーマープレートは外す事。

2.使用武器は木剣。怪我をさせないこと。

3.どちらかが武器を落とすか降参したら負け。


とのことらしい・・・

「キョウヤ、俺は手を抜かんぞ。お前がどんな状態であれ関係なくやるからな」

鎧を外し、肩が出ているタンクトップ姿になっていた。

「大丈夫ですよ、ハヤセさん。戦いの仕方を思い出しましたし。多少は戦えると思いますよ」

白のロングコートを脱ぎ、紺色の半袖シャツと黒の長ズボンを整え準備をする。

「いいことを聞いた。それなら遠慮なく戦える」

そうして訓練場へと足を運んだ。




to be continued...

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