私の両親が亡くなった時期

  「あの、この世を去ったって.....どうして」


 私は黙っていられなくて口を開いてしまった。


 一斉にみんなの視線を集めたが、気になってしまったんだから仕方ない。


 だって、死亡フラグを遠ざけられるかも知れないと思ったんだもん。


 それなのに死んだって。そんな馬鹿な話ってある?



「カースさんは呪術士とも呼ばれていまして。常に闇を好み、黒魔術の研究をされていたと聞きます」


 呪術士って、


 陰陽師みたいなものよね、多分。


 竜騎士なのに呪術士でもあるって.....なんというか、ラスボス感あるんだけど。


「魔王と噂されてる人物で謎が多いのですが.....」


 キースさんは言いづらそうに話す。


 呪術士の次は魔王ですか。なるほど。


 ラスボス確定な気がするけど、乙女ゲームであってSFゲームでは無いというのを忘れちゃいけない。


 まぁ、もしかしたらSF展開は真相エンドであるかも知れない。


 真相エンドだけラスボスって.....いや、違う。


 他のエンドのラスボスは私自身。

 悪役令嬢であるソフィアがラスボスになっていた。

 そして、真相エンドだけ真の黒幕みたいな人物が出てきたと考えるのが自然ね。


 悪役令嬢って、ヒロインのライバルって認識だったけど見方を変えればラスボスにもなるってことね。


 そのカースさんという人物は『聖なる乙女』と同様に謎が多い。

 でも、『聖なる乙女』はなんで聖女とは呼ばれてないんだろう。


 この世界では聖女を『聖なる乙女』と呼んでいるんだろうけど、なんか引っかかるんだよね。


「亡くなった時期が五年前になります」


 そっかぁ。五年前って、え


 イアン様以外、みんなの視線が私に集中する。


 私に視線が集まったことでイアン様は眉間に皺を寄せたが、黙って様子を見ている。


 五年前。それは私の両親が亡くなった時期。


 でも時期が同じだけであの事件とは関わりがないという可能性もあるけど。


「.....なら、イアン殿が見た人物は誰だ?」

「分からない。でも、俺の知ってる人ではなかった」


 殿下が難しい顔をしながら疑問を口に出すとイアン様は答えた。


「手がかりといえば薬瓶がここに」


 ノア先生は薬瓶を見せる。

 今のところ、これが唯一の手がかりなのだろう。


「これは、感染症対策に開発した薬の失敗作で動物になる副作用があります。この薬は廃棄処分になったはずなのです」


 それが、何故かここにある。


「今私の友人が調べてるところです。時間がかかるそうですが、そろそろ結果が出る頃かと」

「あっ、そういえば奇妙なことがあったんです」


 なにかを思い出したようにキースさんは口を開いた。


「イアン様の行方不明になる数日前にカース・コールドの死体が消えたんです」


 ということは生きている可能性があるってことになる。


 生きている? でも、死んだ人が息を吹き返すなんてありえない。


 なにがどうなってるの?



 でも彼はどうして死んだのか。

 その疑問を言っていいのか迷ってしまう。


 私にも関係あることって言ってたけど関係あるって私の両親と何らかの関わりがあるかも知れないってことなんじゃ。


「その詳細がわかるまでは帰すわけには行かないが」

「ああ。だから、帝国に行かせたんだろ。あの人を」


 ん?なんだろう。


 殿下とイアン様が意味深なことを言ってる気が。


 帰すわけには.....?


 どこかで保護する形になるのかな。



 その夜、帰宅したお義父さまからイアン様をしばらく滞在させることになったことを聞かされた私は、ノエルに連絡を取る事にした。


 ノエルが留学したのはイアン様がいるからなんだから。それがこの屋敷に滞在することになるんだから、ノエルはどうするのか気になる。


 なんで、この屋敷に滞在するということを思いつかなかった。

 考えるまでもなく、デメトリアス家が保護するのは自然な流れ。


 なんか、自分の考えがズレててこの先大丈夫かなって不安になってきた。

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