ドロドロの沼の中身は。

私は大好きな人がいたのです。

特別かっこいいわけではなかったけれど、絶望の底にいた私に話しかけてくれたあなたが大好きなのです。

でもこれは叶わないから。

諦めていたのです。今までは。


私が絶望の底にいた時は小5の9月21日ごろでしたっけ?

親が事故で死んでしまったのです。

でも祖父も祖母も私のことをもらってくれない。

きっと私は人見知りであまり人に頓着をしなかったからでしょう。

厭々もらってくれた叔父さんはあまり私に興味を持たず放置していました。

いわゆる育児放棄ってやつなのです。

もう小5だったけれど。


私は叔父さんの家に引っ越したことで学校も変わりました。

前述で話した通り私は物静かだったので学校では馴染めませんでした。

嬉しくはなかったです。

でも不思議と寂しくはなくただただ時間が過ぎていきました。

そのまま学年が上がり気が付いたら小学校を卒業していました。

時の流れは早いものです。


中学生になってからも私は変りませんでした。

毎日特に何も考えずにふらふらとしていた私に話しかけてくれたのは先生でした。

べつ担任ではなかったし、週3にしか会えない理科の先生だったです。

特別に縁があるわけでもなかったです。

でもこんな私に話しかけてくれたのは先生、あなただけだったのです。

先生は私に友達がいないことを気にかけてくれました。

担任が気にかけるようなことを気にかけてくれました。

いったいどこで私を見ていたのでしょうか。

まぁそんなことはどうでもよくてですね。


反抗期の皆さんならきっと鬱陶しいと思うかもしれませんが私に話しかけてくれた人は貴重でとてもうれしかったことは覚えています。

今までこつこつ組み立てていたプラモデルが完成するときのような喜びです。


だから先生が気にかけてこないように、もう友達がいると安心させるように。

攻略本のようなものも読み友達作りに励みだしました。

友達作りはテストよりも難関でどれが正解かが分からなかったのです。

でも先生のためなら何でもできたのです。

だから一軍女子と言われるような分際にはなれました。

他の一軍女子には全く興味は持たなかったけれど、友達と言うものの良さを感じなかったけれども。

先生の安心した顔を見れるだけで心が弾んだので友達を作ったことに嬉しさを感じました。


でも人間関係は儚いものです。

一軍女子のひとりが先生の愚痴を言っていました。

てっきりみんなに好かれている先生だと思っていたけれどそんなことはなかったのですね。

先生の良いところを知っていたけれどみんなは知っていなかったのです。

私だけが先生を独占出来た気がして少し擽ったかったけど、先生のことを悪く言うのが嫌だったのです。

段々愚痴がヒートアップしていって擽ったさよりも嫌気が増しました。


気が付いたら手は鮮血で汚れていて先生が私を抑えていました。

先生が私に触れてくれたこと、私に興味を持ってくれたこと、すごくすごく嬉しくて嬉しくて嬉しくて、、、。

思わず力が抜けてしまいました。

ぐったりした私を他の教師が支えて水道で手を洗いました。

数分経った後でしょうか。

叔父さんが慌てた顔で走ってきました。

私の方を先生の方へ向けてひたすら謝っていました。

ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、と。

謝る理由が良く分からなかったけれど場に合わせて私も謝ったその日はおじさんの車に乗って家へ向かっていきました。

車の窓ガラスから救急車の音が聞こえていました。


家に着いたら叔父さんはまず私を叱りました。

人のことを殴ってはいけない、人が悲しむことをしてはいけないと。

このことを守れていないのは叔父さんのほうだと思ったけれど。

私のことを叱る声はあったかく怒られるのも嫌な感じはしなかったです。


つくづく私は惚れっぽいのでしょうか。

ここで叔父さんを好きになっていれば、叔父さんが私に優しければ、私はまだこの沼にはまっていなかったのに。

もう駄目だったのです。

私のは言っていた沼は深くてドロドロだったのですから。


End




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