Love?

偏り

No.1 愛してる


「たっだいま~!」

「いい子にしてた?」

午後7時、どうやら帰ってきたようだ。


「、、、、、、、。」

どうやら帰ってきたようだ。

話したくないので口を閉ざす。


「おい!言えよ!」


「お、お帰りなさい、、。」

「いい子にしてたよ、、、。」


嘘だ。

今私は外に出ようとした。


「ふーん。」

「、、、俺さいい子いい子で仕事頑張ったの!」

「だーかーらー慰めてー!」


怪訝そうな顔に笑みがあふれる。

コロコロ変わる様子が未だつかめない。


「、、、、、。」


無言で私を見てくる。

いい加減怒らせたらいけないので、吐きたい衝動を抑えて声を出す。


「仕事、頑張って偉いね。」

結構そっけない言い方をしてしまった。

お世辞をしては頑張った方なのだが。


「むーん、、、。」


ちょっと不満そうな顔をしている。

怒らせてしまったか、、、?


「うーん、、、。じゃあさ!俺のこと好きって言って!」


「、、、す、、きぃ、、、。」

恥ずかしくてそっぽを向く。

なんでこの人を前にして恥ずかしいと思っているのか自分でもわからない。


「もっとかわいくー!」


「む、むり!」

咄嗟にでる本音。


「は?奴隷ならわかるよね、、、?」

「ここで何するか、、、。」


また言われた。

『奴隷』

昔はこんな上下関係もなかったのに。

なぜこんなにも差ができてしまったのだろう。


ー-------------------------------------


『アイス食べにいこーぜ!』

『、、!うん!』


初夏だというのに30度を上回る暑さ。

少ししみこむ汗。


今から9年前の5月中旬、私たちは付き合い始めた。


私から告白して付き合うことになった。

あの時の真っ赤な顔は今でも忘れられない。


最初の方は良かった。

2人で半分こしたアイス。

雨でびしょ濡れになった浴衣。

どれもこれも忘れられない大事な思い出だった。


でもいつからかその関係は崩れていった。


『まったく!お前はどうしてこんなに勉強ができないの!』

『出来損ない!』


私は元々頭が良くなかった。

テストでは良くて50点、悪いと、、、、思い出したくない。


周りは私を見捨てるのに、君はずっとに勉強を教えてくれる。

『なんで私にこんなにかけてくれるの、、、?』


『なんでって、、、』

『付き合ってるんだから当たり前だろ。』


その言葉で私は存在してると思えた。

でも今度は、、、


『つりあってない。』

『何であんな子とつきあってるんだろうね。』


私じゃなくて彼を悪く言い出した。

私だけが言われるのなら耐えれたけど彼までに影響を与えたくない。


10月の初め、少し肌寒い日私たちの関係は終わりを告げた。

いや、私が告げた。


いつも冷静な君では想像しがたい鬼のような形相をしていた。


『なんで?』


とげとげしい口調、きっと怒ってる。

なんで怒るの?

こんな私と付き合ってたら君の評価が下がるのに?


『私と付き合ってたら君が損する。』

『だって私は社会では下の立場で!』

『なにもできない ろくでなしだから!』

『君が私と付き合ってたら損する、、、。』


『俺はそんなの気にしてない!』

『だからよりを戻そう?』


『でもだからって君が悪く言われるのはいや!』

『私が馬鹿で、ろくでなしで、なにもできないから!』

2人の意見が対立する。


正直嫌いなわけではない。

いや、好きだ。

でも私のせいで君の評価が下がるのが嫌。

これは私情だ。

あくまで私が望んでること。

でも馬鹿な私は彼も心の中では望んでいると思ったのだ。


『じゃあさ、俺も君のこと駄作と評価するね。』


『は、、、?』


『だってさー俺のことよりも周りの評価を気にしてるんでしょ。』

『俺は気にしてないのに。』

『だから俺もさ、周りと同じ評価するよ!』


さらに意味が分からなくなっていった。

違う。違う。

私は周りの評価を気にしてるんじゃない。

キミを疑っていたんだ。


なんでこんなに私のことを過大評価するのかって。


、、、、そこからの記憶はあまりない。

これ以上話しても無駄だと思って帰ろうとしたんだっけ。

気が付いたら知らない場所にいた。


ー-------------------------------------


「ちょっと思い出に浸ってたかな?」


ふっと焦点を合わせると彼の顔がドアップで映る。


「なんの話してたっけ。」


「もっと可愛く好きっていって!、、、って話してたよ!」


「好き!」


ってばっかで話しかこんがらがる前に口にした。

これ以上頭で考えても仕方がないだろう。

どうせ抜け出せないんだし。


「へぇー。やっぱ俺のこと好きだよね♡」


彼は決して私に好きと言ってくれない。

嫌がらせ、、、なのだろう。


「でもさー、それ嘘だよな。」


「えっ?」


「だってさっきさー手錠外そうとしてたでしょ。」


図星だ。

何でわかるの、、、?


「俺が盗聴器と監視カメラでも入れてないと思ってたの?」

「やっぱ。そういうとこが馬鹿って言われるんだろうね。」


つくづくムカツク言い方をしてくる。

そういう人間なのだ。

違う、私がそうしたのか。


「ねー!愛してるっていって。」

「好き、、、だけじゃわからないよ、、、。」


「、、、、、。」

私には言えない。

だって、、、、、、


「おい。言えるよな、、、?」


私の首に皮膚が触れる。


「、、、、!」

「ゴホッゴホッ!」


苦しい。

首を絞められてる。


「ほーら。言えるでしょ?」

「言えるくらいには首を絞めてるからさ?」


「、、、、、。」


「おい!言えよ!」

「たった五文字だろ!」


「、、、、俺に言った好きは嘘なの、、、?」

「夏祭りで言ってくれた好きも勉強中に言ってくれた好きも!」

「全部全部全部全部嘘なの!!!!」


「ねぇ、、、。答えてよ、、、。」


「、、、、会いたかったな、、。」

「最後に家族に愛してるっていいたかったな、、、。」


「それは俺には言ってくれないの!」

「ねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇ!」


あはははは。

これでどっちも幸せじゃないね。

君だけ幸せになるなんて、、、許さないから。


end

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