第18話/家!
四人での夕食後。カークのお城での話、魔法の話。アレクサンドロスの村の話。いろんな話をした。中でも、盛り上がったのはフランの冒険譚だ。
「ゴブリンは雑魚だとか言うやついるけどな。寄ってたかられて殺されるやつはいるから、油断するなよ」
「そもそも、戦闘自体がしたことありませんからね。アルの武器は木の棒だし」
「石なげて鳥をおとすくらいだな」
「お前、そんなことできんの!?」
投石で鳥を落とせるって結構すごいだろ?
カークがうろうろと視線を
「ゴブリン……東南の森で目撃情報が多発しているから、増えてるのかも」
「え? 冒険者ギルドでは聞いたことないぞ」
「兵舎での話題でね。間引きはつい17日前にしたのに、4日後にもやることになったから、おかしいなって」
「王都でそれはおかしいな。お前ら、東の方には行くなよ」
「「はい」」
東と聞いて、思い出す。
「あのさ、カーク。4級くらいまで上がったらエリック兄さんのところに行こうかと思うんだ。お前も、どうだ?」
「……そもそも、エリック兄さんを知らないのだけど?」
「え? あれ? 話題に出したこと……ねぇなぁ、そういえば」
亡くした家族どころか、存命の家族の話題すら出なかったのに今まで気づかなかった。
「エリック兄さんは今25歳で……」
ふと、フランさんはいくつなのだろう? と気になって、そちらを見る。だめだ。顎髭で輪郭が分からない。
「東の方にあるエニーグ国境砦に赴任しているんだ。砦近くの町で世帯を持っているから、話題になったのも子供が生まれた時くらいだから、カークは覚えてないんだと思う」
「子供! 甥? 姪?」
「1男2女。長男はカークの一つ上だな」
「え……。あ、いや、19歳も離れているし、まあ、そういうことも?」
「へ、へぇ。エリックはそんなに子供がいるんだ」
「フランさんはけっこんしてんの?」
「いやー、はっはっ。してないわあー。どうせ俺は冒険者だし。住所不定の旅暮らしだし」
住所不定……。
「おおお……。カーク、本当にこの家頼んだぞ! エリック兄さんとこに行くのも期間限定にしてくれな。旅暮らしはいいけど、住所不定はなんかヤダ」
「おれの家もここにして!」
「あ! 俺も俺も! 住所登録はここで、ちょいちょい帰ってくるから! 住所不定って響き悪過ぎる!」
カークはコクリと頷いた。
「あのね、おじさん。それならお願いがあるんだけど。いい?」
「おう! 何でも言ってくれ!」
フランさんは胸を張って前のめりになる。実は、頼りにして欲しかった?
「保護者になってもらっても良い?」
「もちろんだとも!」
「家のことはちゃんとやるし、おじさんのお部屋も管理する。だから、後見人の書類を書いて欲しいんだ」
フランさんは頼られて嬉しいのか、照れたようにはにかむ。俺も、おじさんって呼んだ方がいいのかな。
「もちろん。何でも言いな」
「じゃあ、明日から、お役所とか諸々の手続きに一緒に行こうね。案内するからね。絶対だからね!」
「分かった、分かった。じゃ、寝る準備しようか」
「お風呂、沸かしてくる!」
「風呂だとぉおっ!?」
カークは風呂場に走っていく。アルはキョトリと目を丸くしてそれを目で追い、フランさんが叫んだ。
「へ、へぇ。風呂までできたのか、この家」
「カークが作りました」
「……なんて?」
「カークがレンガで作りました」
「風呂って作れるんだ?」
「要するに、でっかいかまどだよね。って」
「え? そうかぁ?」
「火を入れるところを二つにすれば、行けると思ってやってみた。と」
「行けたんだ?」
「今のところ、煙も外に出てるし、水も漏れてないから……多分? カークはとりあえず1年様子を見るらしいけど」
「それでいいんだ?」
「で、フロってなに?」
「あったかいお湯で水浴びするところだな」
「体をきれいにするところだよ」
走る音が近づいてきて、満面の笑みを浮かべたカークが話し出す。
「沸いた! 入るよ! 急いでね! 寝巻きは用意してあるからね! 今着ている服は洗うから、風呂場に置いておいてね!」
「汚れた服でベッドには入れないぜ!」
「「お、おう」」
フランは風呂を前に立ち尽くす。目の前にある風呂は1m四方に高さが40cm程度しかなかった。
そんな風呂を見て、アレクサンドロスはあったかい大量のお湯に「あったけぇ、あったけぇ」とはしゃいでいる。
「え? 風呂?」
「ごめんね、おじさん。僕がつかれる程度の湯舟しか作ってないの。腰かけて足湯くらいでも疲れはとれると思うから」
「そっかぁ。大人には小さいか。忘れてた」
「その。お金と時間に余裕ができたら、少しずつ積んでいくね」
「ああ、うん。ありがとな」
転生兄弟(兵士の息子達) 夜山 楓 @gard1
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