第6話 変装

「あっ」

「どうしたの」

「乳がんの可能性が有りますすぐに病院へ行って

診察してください」

「えっ」

絵里子は驚きで足がガタガタと震えた。


「大丈夫ですよ。絵里子さん、その大きさなら

手術の必要はありませんよ」

「本当?」

「はい」

亮が返事をすると絵里子は亮の顔を抑えて

キスをした。


「じゃあ、もう1ヶ所生きている挨拶をしてきます」

「うふふ、いってらっしゃい」

「はい、病院行ってくださいね」


~~~~~

市ヶ谷の家に戻った一恵と小妹が片付けをしていた。

「今夜、亮さんは家に戻らないのかしら」

一恵が小妹に聞いた。

「うん、戻らないよ、さっき飯田のお母さんが

言っていた、女のところへ行ったんだって」


「そう」

一恵は嫉妬と落胆の気持ちで複雑だった。

「亮さん香港ではどうだった?」

「もてていたわ、でも修行中だったから

エッチはしていなかったみたい」


「そうね」

「大丈夫よ。亮は一恵の事頼りにしているから」

「そうかしら」

「生涯使えます、なんて言われたら、

 男性はメロメロよ」

「はい、でもその気持ちは本当よ」

「私もずっと一緒にいたいな」


「あら、小妹も惚れちゃった?」

「ううん、兄貴としてよ」

「ずっと一緒にいれば良いのに」

「でも仕事だから、用が済んだら

 どうなるか分からない」

小妹はさびしそうな顔をした。


「良くわからないけど、大変な仕事なんだね」

「うん、国のVIPの命を懸けて

守るのが私の一族の使命よ」

「えっ?国のVIPって中国でしょう」

「うん」

一恵は小妹が亮を守っているか

分からず首をかしげた。


~~~~~~

「お疲れ様」

「やっと二人で話ができた」

亮は新橋のバーで美喜と会った。

「訓練は厳しくなかった?」

「うん、平気だったわ」

美喜は亮と一緒に香港にある組織で射撃訓練、

戦闘訓練を受け、逆に手裏剣を他の訓練を受けている

人間に指導していた。


「文明が一文字の暗殺命令を出した」

「えっ?いつ?」

「1か月後の5月8日」

「誰がやるの?」

「僕たちが訓練を受けた暗鬼メンバーがやるらしい」

「ざまを見ろだわ」

「いや、僕たちはその前に一文字を逮捕する。

美喜さん協力をお願いします」


「もちろんですけど、生かして捕まえるより

殺した方が早いのがつくづく分かったわ」

「うん、間違いなく悪党なのに善人のような

顔をして平気で悪い事をする。


刑務所に入れても出所したらまたやるだろう

でも5年以上刑務所に入れば世の中が

変わって何の力も無くなる」


「一文字の犯罪を暴いて10年刑務所に

入ってもらわなきゃ」

「うん、一恵さんから出来るだけ情報を

取るつもりだから、なんか気がついたら、

教えて欲しい」


「わかったわ、でも本当に一恵さん

信用できるの、もし裏切ったら小妹が殺すかも」

美喜は暗鬼の訓練をして裏切り者は

絶対に許さない考えを十分知っていた。


「美喜さん教えて欲しい事が有るんだ」

「なに?」

「仁兄さんが僕を守ると言っていたのは

僕の研究を知っているからかな?」

「そうだよ、亮の研究論文CIAが掴んでいるから、

この前仁さんに会った時、

亮の研究の進み具合聞かれたわ」


「そうか・・・それで美喜さんはどちらの味方?」

「もちろん殿の味方です」

「ありがとう、美喜さん明日から歌舞伎町で

キャバクラとマテリア渋谷店のオープンの

仕事をします」

「他には?」


亮はNEL教団と一文字の関係が怪しいことを話した。

「おそらく合成麻薬が絡んでいると思う」

「私はどちらを?」

「キャバクラの方を手伝ってください。

小妹は子供だからそちらに関われない」

「私、どこに住めばいい?」


「渋谷は遠いので市ヶ谷に来てください」

「了解」

美喜は亮と一緒に住めると思うと嬉しかった。


~~~~~~~

翌朝6時に亮のスマートフォンが鳴った。

「亮か」

「はい、おはようございます」

「何時に何処で会う?」

「美宝堂に9時でいいですか」

「分かった。ずいぶん早いな。

それで市ヶ谷の家はどうだ?」


「5LDKで住み心地が良いですよ」

「ずいぶん広いな」

「はい、しかも車が3台入ります」

亮が電話を切ると秀樹はニヤニヤ笑った。


亮はまだオープンしていない

銀座の美宝堂の社長室に入った。

「おはようございます」

「おお、久しぶり。元気そうだな」

「はい」

亮は応接室の椅子に座ると秀樹が伝票を見せた。


「スタジオD・USAの資本金の

払い込みは終わったぞ」

「ありがとうございます」

「しかし、凄いな、たった4,5日で契約を

終えてしまうんだからな」

「偶然です。それでナチュラル・グリルの冷凍食品

の販売の委託を受けました」


「なんだ、今度は冷凍食品か」

「はい、アジア担当責任者になりました」

「そりゃ頑張らんとな」

「はい、それでDUN製薬はどうしましょう?」

「今度は團亮で堂々と本業の研究室に入れ髭生やすか?」

「またメガネかけます」


「まぁ、悪い事していないからな美佐子と会って

スーツ買っていけよ、なんかキツそうだ」

秀樹は亮の体ががっちりしてたくましくなったのに

気付いていた。


「はい」

「ところでその時計どうした?」

「貰いました」

「誰にだ?」

秀樹は相場700万円以上の

ロレックコスモグラフデイトナを

亮がしていた事に驚いていた


「ランド不動産の社長です」

「ランドってスタジオDの株主か?」

秀樹は会社設立の情報を受け取って知っていた。

「はい」


「随分気前がいいな」

「そうですね」

「あはは、我が息子ながら面白奴だ」

秀樹は笑っていたが心の底から亮の事を

凄い男だと思っていた。


「グリーンコンドームの方は、シンディたちと

NPOを作ってアフリカに送る事にしました」

「なるほど、シンディがボランティアで

動けば彼女たちの評判が上がるわけだな」


「はい、それにコンドームは天然ゴムか

ポリウレタンで作られていますが

植物で作るポリウレタンポリオールで

環境にやさしい成分に変更する予定です」


「おいおい、そう言えばドイツからも

オファーファーが入って来ているから

年間1億個以上作らなくてはならなくいなるぞ」


「そうですね、僕の予想では

年間10億個以上売れると思います。

 そしてエイズ患者が10%以上減ると思います」

「なるほど、でも10億個となる年商500億円になる」

「すごい!!」

亮は自分が言って自分で驚いていた。


「隣の部屋にお前の机を用意してあるぞ、

ディーワンの名刺はいるか?」

「はい、お願いします」

亮はとりあえず自分の所属場所が欲しかった。


「うん、必要があったら作るぞ」

「はい、今日から渋谷マテリアの

オープンの準備がありますからアメリカからの

連絡を受けておいてください」

「ああ、分かったよ」

秀樹は亮の忙しさに驚いて返事をした。


「それと研究室を市ヶ谷の家に作りたいんですが」

「わかった、中村に言っておく」

「はい」

「ところで、飯田さん市ヶ谷の家と言うのは

あの砂土原のお屋敷か?」


「知っているんですか?」

「ああ、この前飯田さんからお前に

助けられたと連絡があってな

その時担保に取った家をお前に

上げたいって言っていたぞ」


「その件なんですが、

飯田さんが担保に取ったアリゾナの

土地にサボテンがいっぱい

生えているそうなんですが」

「うん、それがどうした?」


「サボテンからダイエット食品ができるんです」

「それ、本当か?」

「はい、サボテンには中枢神経を

刺激して満腹感を与える成分があるんです。

 そして血糖値も安定させます」


「それを利用すれば究極のダイエットができるわけか」

「はい、サンプルをいくつか作ってあります。

臨床をすれば発売できます」

「なるほど、健康食品か。それなら

臨床試験無しですぐに発売できるな」


「はい、資料を作ります」

「うん、頼む。連絡役に千成君を使おう。気が合うだろう」

「はい、お願いします」

亮は千成だったらまたシャンプーのような

ヒット商品が出来そうな気がした。


「ところで大原君とは連絡は取ったか?」

「いいえ、彼女は課長になったようなので僕は

現れないほうがいいかもしれないです」

「そうかなあ、彼女は待っているんじゃないか?」

亮はそれに対しては返事をしないでいると

秀樹は玲奈の話をした。


「アメリカとの連絡係は三島玲奈にやってもらおう」

「そ、そうですか」

「嫌か?」

「いいえ、ただ生きているのを説明するのが」

「あはは、もう知っているよ」

亮の後のドアが開くと三島玲奈が頭をさげた。


「お久しぶりです」

亮が挨拶をすると三島は亮の元気な姿を

見て秀樹がいなかったら抱きついていた。

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