第35話一恵の目覚め

亮は一恵の全身をくまなくの見ると

体のあちこちや髪の毛に白い粉がついているのに気が付いた

「すみません、彼女の体を洗いましたか?」

「いいえ」

亮が医師に聞くと首を横に振った


「美咲さん全身洗浄しよう」

「どうして?」

「例のFBIで見た物が身体についているようです」

「本当?」

「先生、刷毛とシャーレのようなもの無いですか?」


「はい?」

「身体に麻薬のようなものがついているんです。

もう一度血液監査を」

「は、はい」

医師は慌てて部室を出て行った


「どうするの?」

「さっき見た液体は皮膚から吸収する物で、

多分一恵さんは全身に液体を

 被せられたんでしょう」

「それがまだ残っていると言う訳」


「そうです。かなり強力な物でこれを洗い流さないと

こん睡状態から目を覚まさないと思います」

「そうか」

「すぐにFBIのブラウン捜査官を呼んでください」

「OK」


医師は一恵の血液を抜き取り医師が持ってきた

道具で身体についている粉を丁寧に摂取した

「亮、捜査官すぐに来るそうよ」

「ありがとう」


亮は一恵の手を握って

「もうすぐだよ。がんばって」

言うと一恵の手が握り返してきた

亮はそれを感じて耳元でしゃべりだした

しばらくすると一恵の閉じた目から涙が

一筋こぼれてきた


「な、泣いている」

美咲が一恵の涙を見て言った

「はい、少し意識が戻ってきたようです」

「どうやったの?」

「四季の歌を唄っていました」

「四季の歌?春を愛する人は~」

「けっこう好きな人多いでしょ。あはは」


そこへブラウン捜査官入って来て

その後にFBIの鑑識が数人来た

亮は採取した粉を渡し

髪の毛を切って持ち帰るように指示をした


「また、会えましたね」

ブラウン捜査官が亮に手を差し伸べた

「はい」

鑑識の方が終わったら彼女の

身体を洗ってあげたいのですが

「はい、分かりました」

ブラウンは鑑識の人間に聞いた


そこへ医師が入ってくると

「すみません、血中に薬物がまだ残っていました」

「やはり」

亮は医師にメモを渡して聞いた。


「この薬品ありますか?」

「私は薬剤師じゃないので保管所へ案内します」

亮は保管所に入ると何種類かの

薬をビーカーに入れて混ぜた

「これでOK」

亮はそれを持って病室に戻り

一恵を抱きかかえると浴室へ連れて行った


亮は一恵を裸にしてベッドに横にして

髪の毛から全身に作ったヌルヌルとした

液をかけ、それは小さな泡を立て

全体に染み渡り一恵の髪についた

危険な成分を中和していった。


亮は手術用の手袋をつけて一恵の

頭皮をマッサージしながら

身体全部股間の隅々まで丁寧に洗い、

時々亮の指先が一恵の敏感な部分に

当たると一恵の身体は反応していた


「良かった、意識が戻ってきた」

亮の姿を見ていた美咲はそれを見て微笑んでいた

洗浄が終わりベッドに運ばれた一恵の

身体にはぬくもりが戻り呼吸が穏かになった


「もう大丈夫ですね」

「はい」


そこへブラウン捜査官が何処からともなく戻ってきた

「あの粉の成分は例の物と同じだったよ」

そう言って亮の肩を叩いた

「そうですか。と言うことは・・・・」

NEL教団の物だと亮は確信した。


「ん?」

ブラウン捜査官は何かを聞きたそうだった

「あれは皮膚や髪のたんぱく質に

反応してアンフェタミンかメタンフェタミンの

覚醒物質に変化して長い時間をかけて

吸収される物かもしれません」


「それは」

「そして彼女はかなり高濃度の物を

かけられたようです」

「わかった。ところで彼女は

どれくらいで目が覚める?」

「目が痙攣を起こしていますからもうすぐです。

ちょっと席をはずしてください」


ブラウンと美咲に言うと

亮は一恵の手を握り囁いた。

「もう大丈夫です、僕は日本人です。

あなたを助けに来ました」

一恵は深く息を吸うとゆっくりと目を開いた


「ああ、あなたは・・・・」

「はい」

「松平さん?」

「新村一恵さんですね」

「はい」


「もう大丈夫です。僕と一緒に日本に帰りましょう」

「ありがとう」

一恵は亮の首に腕を回して抱きつい涙を流した

「あなたには四年前にもセントラルパークで

助けられた、これで二度目です」


「どうだ、彼女から事情聴取したいんだが」

ブラウンはしつこく美咲に聞いてきた

「分かったわ」

美咲が病室のドアを開けると

美咲は声を潜めて聞いた。

「亮、どう?」


「一恵さんFBIの人が事情を聞きたいそうです」

亮がやさしく言うと一恵はうなずいた

「OKです。美咲さんその前に医師を呼んでください」

「はい」




医師と入れ替わりに亮は病室の外へ出てブラウン捜査官に

「一文字にホテルの浴槽で薬に付けられたそうです。

 そしてそれから先の記憶は無いそうです」


亮が言うと

「なるほど、これで繋がったか」

「NEL教団と一文字ですか?」

「知っていたのか?」

「はい、まあ」




ブラウンは横になったままの一恵から事情聴取したが

記憶が消えているためにあまり有力な情報は取れなかった

「彼女の記憶がはっきりとしたら、日本から連絡をします」

美咲がブラウン捜査官に伝えると


「では待っています。出来たら日本に行きたい。あはは」

立ち去ろうしているブラウンに

「あの、ブラウン捜査官の奥様はラテン系ですか?」

「はい」

ブラウンは不思議そうな顔をした


「奥様も働いているっしゃる」

「はい、どうしてそれを?」

「いえ、勘です」

「あはは、美咲さん勘がいいですね。

それともダンさんの方かな?」

ブラウンが亮の方を見ると亮は

一恵の手を握りながら話をしていた


「彼は忙しいようだ」

ブラウンが病室から出て行くと美咲が

一恵に説明した。

「一恵さん、良かった。後一日こん睡状態が続いたら

薬の影響で精神障害起きたそうよ」

「良かったですね。一恵さん」

亮は一恵の手を握った。


「ひどい、一年使えていて性格は知っていたけど・・・

許せない」

「非情な男なのね。一文字は」

美咲は一文字に関係した女性に同情していた

「私、日本で身の危険を感じてアメリカに来たのに、

 こっちでもこんな目にあって。

私これから何処でどうやって

生きていったらいいか分からない」

一恵は声を出して泣き出した


「一恵さん、一緒に日本に帰って

僕のアシスタントしてくれませんか?」

「えっ?」

「あの一文字の捕まえたいんです。

それにはやつの事を良く知っている

 あなたの協力が必要なんです」


「はい、あなたに二度も助かられた

私の命、何でもします」

「いいえ、僕が命を狙われた時、僕に電話をくれて

教えてくれたじゃないですか」

「は、はい」

一恵は女を利用してゴミのように女を捨てる一文字

が許せなくて亮を助けたかった。


「いいの、元の彼なんでしょ。それに元上司だし」

美咲が一恵に気を使って聞くと首を横に振った。

「冗談じゃないわ、秘書と言う名の都合のいい女。

 何度私の目の前で女を抱いた事か」


「そんな男なのね。あの男は」

美咲は一文字と言う男がとことん許せなかった


「私の前任の秘書が二人自殺していて、

何人もの女性は堕胎させられ

生徒たちだけではなく母親の

何人かとも関係がありました」

「それはひどい」

「ま、待ってそんなに?」

「はい、だから私も恐くて」


「ちょっと待って」

二人の会話を聞いていた亮は

恐ろしいことが頭に浮かんだ。

「もしかしてプレステージの美容師にも」

「もちろん」

亮は麻薬を日本に運ぶ方法を思い浮かべた。


「ひょっとしたら、例の物を

シャンプーか毛染めに混ぜたら」

「え?何?」

一恵が聞くと体を震わせた。

「そうか、毛染めなら手袋をするから

美容師には影響がないわ」

美咲が手を叩いた


「もしこれが美容院で使われたら

お客は中毒症状を起こし言いなりになってしまう」

「はい、簡単に信者にできるわ」

「くっそ!」

亮は珍しく乱暴な言葉を使った


「一恵さん、僕達は明日日本に帰ります」

「私も一緒に帰りたい」

「大丈夫ですか?」

「はい。ところでどうやって

私の事を見つけたんですか?」


「あなたの隣に住んでいるジャネットが

心配して僕に頼んで来たんです」

「ジャネットの知り合い?」

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