聖女だけど、男です。〜肉食系女騎士に愛されて、困っています〜

清水柚木

〜肉食系女騎士に愛されて、困っています〜

第1話 序章

 晴天の空の下、4頭引きの馬車がゆっくりと歩を進める。


 汚れのない雪の様な白馬は、クレマチスの紋章を掲げる純白の馬車を宙を滑る様に軽やかに引く。その馬車の歩む道は、白の騎士服に身を包んだ神殿に仕える聖騎士団によって守護される。馬車に乗っている佳人を一眼でも見ようと、人々は注目するが、馬車のカーテンは厚く、中を窺い知る事はできない。


 向かう先は大聖堂正面にある大門。辿りついた先には、深い海の様な青い衣装を身にまとい、長い銀糸の様な髪を横に束ねた青年が待ち受ける。

 彼の手に導かれ、その馬車の人物は地上に降り立つ。穏やかな笑みを浮かべ、周囲の人々を見回し、踊る様に滑らかにカーテシーを繰り広げた。


 その輝く様な美しさに人々は一瞬、声の出し方を忘れる。次に訪れた歓喜の声は、この地上を揺るがすように大聖堂に響く。

 

 軽やかな歩みで、自身の兄にエスコートされながら大聖堂に向かう、その人物の名はアーマンディ・ウンディーネ。今日、この大聖堂にて、聖女の儀を受け、聖女となる人物。

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