第22話 恋愛事情
ある日の学校での事。
「夕美」
「何?」
「夕美、私に遠慮しなくても良いから」
「えっ?」
「オーナーの事。私、何とも思ってないし」
「優奈」
「私ね…バイト先の人と出掛けたりしたくないんだ。公私混同したくないから。好きになれば良いんだろうけど、その前に…好きになれない。それに、恋愛したい気持ちにならないのもあるし…だから…夕美が羨ましい」
「優奈…」
「オーナーなら夕美の事、大切にしてくれるよ。ゆっくりで良いんじゃない?色々あったからこそ幸せになるべきだよ」
「…優奈…」
私は夕美を抱きしめた。
「きっと大丈夫!応援してるから」
「うん…」
その日のバイト先での残業中での事。
「ねえ、雪渡」
「何?」
「雪渡って今迄、何人と付き合った?」
「えっ?急に何?」
「いや…みんな恋愛しているんだろうなぁ〜と思って。やっぱり人を好きになったりして付き合ったりして恋愛するわけじゃん」
「まーな」
「私…この間、オーナーに告白らしい事…されて断ったんだ。夕美…オーナーの事が好きみたいだったし。だけど…バイト先の人を好きになれないのもあって…それに…公私混同したくないのもあって…」
「優奈…」
「だから正直に自分の想いにオーナーに伝えて…まあ、借金もあるし、好きな人もいないんだと思う」
「気付いてないだけとか?」
「えっ?」
「今迄に一人や二人は出来ただろう?」
「それは…確かに好きな人いたりしたよ。だけど、想い伝えないまま。告白された事も確かにあったけど、相手の事を好きって思えなくて…」
「優奈…」
「友達以上、恋人未満…でも…気持ち気付くのも遅くて、相手が他人のものになった時、あったりもした」
「そうか」
そして、バイトも終わり帰る事にし、店を出る。
その直後――――
ドンッと人影にぶつかった。と、いうより相手からぶつかられ、相手が地面に転倒した。
「ってーな!…ヒック…」
中年親父の酔っ払いだ。
酔っ払いはフラフラと立ち上がる。
「あれ〜ぇ?…女子校生が〜…ヒック…こんな時間にぃ〜何してんのぉ〜…ヒック…」
《関わりたくない》
「バ、バイト終わって帰る所ですけど?失礼します」
グイッと腕を掴まれたかと思うと肩を抱き寄せられた。
「は、離して下さい!」
「良いだろう?女子校生なんだからーー」
顔を、近付けて来る。
「女、女子校生だから何?意味、分からないんだけど!?」
私は顔を、そむけるようにする。
するとグイッと私のもう片方の肩を抱き寄せる人影。
そして、中年の酔っ払いを押しのけた。
「な、何すんだよ!」
「彼女に何か用ですか?」
「お、お前には関係ないだろう?」
「それが、関係あるんだよ。おっさん誰からもの許可もらって彼女に手を出そうとしてんの?」
ドキン
「雪渡?」
「俺達の大事な、みんなのアイドルで看板娘なんで、馴れ馴れしく触んなよ!」
ドキン
「所詮、女子校生なんだ!SEX して、俺達からお金巻き上げてんだ!」
「所詮、女子校生…その台詞聞き捨てならねーな!」
そう言うと酔っ払いと私の間に割って入る。
「おっさんの思い込みだろう!?巻き上げるとか、あんたが相手してんじゃん!!」
「このクソガキっ!大体、お前らみたいな若い奴等がいるから世の中、おかしくなってんだよ!!」
「若い子限定みたいな言い方辞めろよ!汚いやり方しかしねー大人に俺達が振り回されてんだよ!大体、今の世の中おかしくさせてんのは大人も子供も変わんねーだろ!?自分守んのに精一杯なんだよ!!」
「………………」
「みんな自分が大事なんだよ!支え合ったりしなきゃ世の中、やっていけねーんだよ!」
酔っ払いは、チッと舌打ちをし帰って行った。
「全く!」
振り返る雪渡。
「つーか、何でお前と一緒にいると、変な奴等ばかり絡まれんだよ!」
「し、知りません!」
「てめーは疫病神かっ!」
「や、疫病神って…酷くない?」
「事実だろ!?店の人気者かと思ったら、外に出ると疫病神。お前は2つの神様が絶対いんだろ。タチ悪いな!」
「勝手に決めつけるの辞めて!帰る!ありがとうございました!」
「………………」
「おいっ!優奈っ!」
「何よっ!」
「気ぃつけて帰れよ!」
ドキッ
「へ、変に優しくすんの辞めてよね!」
「なっ!お前っ!」
歩み寄る雪渡。
ムニュ
両頬をつまむ。
「何…?痛いし…」
「疫病神だから心配してんだよ!」
「余計なお世話!」
パッと両頬から両手を離す。
「あっ!お前、借金もあるから貧乏神もいるんじゃ?トリプルゴッド。戸西優奈だな?」
「酷っ!」
ドキン…
オデコにキスされた。
「…雪渡…」
「帰り着いたら連絡しろ!お前、今迄、色々ありすぎて心配なんだよ。本来、送ってやれれば良いけど、そういうわけにはいかねーし。じゃあな」
「…うん…じゃあ……」
そう言うと私達は帰って行く。
そんなある日のバイト先での事。
オーナーと一緒に残業中での事だった。
「優奈ちゃん」
「はい」
「優奈ちゃんは今後も変わらない?」
「えっ?」
「俺の事、恋愛対象としてなる事なさそう?」
「…オーナー…多分…いや…多分という言葉もないですね…」
「そっか」
「すみません…」
私は頭を下げる。
「いや良いよ。優奈ちゃん…もしかして…過去の色々な事件が恋愛に影響しているのかもしれないね」
「えっ…?」
「異性に対する恐怖感があるかもしれないよ。後は自分の想いに気付いてないとか?」
「オーナーも、雪渡と同じ事言いますね」
「もし、優奈ちゃんが恋愛の感情が芽生えるなら、相手は雪渡かもしれないね」
「えっ?」
「アイツ、いつも優奈ちゃんに何かあった時、傍にいてくれた相手だろうし」
「………………」
気付けば、そういう事、思い当たる節は沢山ある。
今迄、何度、雪渡に助けられただろう?
「言い合ったりしてるけど気付いてないだけ。何かきっかけがないと、優奈ちゃんは恋愛感情は異性に生まれないんじゃないかな〜?」
「オーナー」
頭をポンポンとするオーナー。
「俺…夕美ちゃんとゆっくり付き合っていこうと思う」
「オーナー」
「何回か出掛けていたけど、彼女の色々な部分が見えてきて」
「夕美、喜びますよ。オーナー、夕美を宜しくお願いします」
頭を下げた。
「優奈ちゃんから言われちゃうと変な感じもするけど…」
「そうですか?私は、恋のキューピットですから」
「ある意味そうかもしれないね」
そして、夕美からもオーナーとの事を聞かされた。
――― 恋 ―――
私に出来る?
私の心には
誰が存在する?
オーナーが言うように
何かきっかけがないと
私は恋愛は
出来ないのかもしれない―――
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