第2話 バイト探し〜イケメン揃いの店〜
次の日――――。
「えっ!?ええーーっ!?」
「しーーっ!」
「あ…ごめん…」
親友の、瀬木元 夕美(せきもと ゆみ)に、戸西家の借金の事情を話した。
「1億5千万って…宝クジ並みじゃん!」
「本当だよ…もう参っちゃった…毎月、10万の支払いしてくれって…マジ最悪だよ…」
「10万って…食費とか光熱費とか含まれた金額だよ。10万あれば、色々と生活費、1か月ありだよ」
「年誤魔化して夜のバイトしちゃう?」
「キャバ嬢とか?」
「ホステスとか?」
「もっと大人の仕事?」
「体張るのやだよ!まだ、女の子なのに…」
私達は、軽快なテンポで、話をする。
「学校退学するかな?」
「えっ!?」
「学費も払えなくなるよ…」
「でも高校は卒業していた方が良いって言うし」
「はあぁぁぁ〜…」
私は大きい溜め息を吐いた。
その日の学校帰り、私は一日も早くバイトを探しに街に出た。
時間は刻一刻を過ぎ、日も暮れるけど、バイトは一切、見付からない。
すでに街は若い男女が客の呼び込みで、サラリーマン含む会社帰りの人達に声を掛けていく。
街も随分、大人達が増え、きらびやかな街化している。
「…そろそろ、帰らなきゃ…」
―――― そこへ ――――
「君、可愛い〜♪ねえ、ねえ、高収入のバイトあるんだけど、どう?やってみない?」
ビラを私に見せる。
「…高収入…日給、20万〜50万…」
《こういうのって…ヤバ系なんだよね…》
《年誤魔化しバイト…》
「どう?どう?君くらいで訳ありバイトしてる子いるし。行こう、行こう」
手を掴まれた。
バッと振り解く。
「い、いいえ!大丈夫です!」
私は走り去った。
その途中―――――
ドンッと誰かとぶつかり弾き飛ばされそうになる。
「きゃあっ!」
「おっと…大丈夫?」
グイッと私の手を掴み支えてくれた。
「すみません…」
ドキッ
《うわぁ…イケメンっ!》
「あれーー?これ……」
「えっ…?」
ぶつかった拍子に、さっきのビラが地面に落ちたようで、私とぶつかった男の子がビラを見ている。
取り返そうとしたが、ヒョイっと交わすように意地悪された。
「あっ!」
「えっ!?もしかしてするの?」
「えっ?……いや…確かに一瞬、揺れ動きましたが…断りました。本当は来月までに、10万必要で…その後も支払わないといけないんですけど…」
「そうなんだ。はい」
「すみません…」
「借金か何か?」
「えっ?はい…まあ…父親の借金なんです」
「いくら?」
「えっ?それは…」
「………………」
グイッと手を掴まれ、男の子は歩き出す。
「ま、待って下さいっ!私はまだ何も……」
「名前、何?」
「えっ?優奈…あっ!いやちょっと離して下さいっ!」
「取り敢えず来なよ」
「いやいや、強制的!」
「良いから来て!」
「ちょ、ちょっと困ります!」
そして、とある場所に連れて行かれた。
「オーナー」
「オーナー!?えっ!?若っ!!」
《しかもイケメン。王子様みたい》
「その美女は、どちら様〜?」
「バイトを探しているそうです!」
「ちょっと!勝手に…ここは、どう見たって……」
「大丈夫だよ。奥に来て」
「えっ!?いやいや、大丈夫じゃないでしょう!?わ、私、体には自信ないんで!あの!ごめんなさいっ!」
スタッと走り去った直後―――――
ドンッと誰かとぶつかる私。
「痛っ!」
「ごめんなさいっ!」
ドキッ
《うわぁ…またイケメン!》
「目、開いてんのかよ?お前は!」
ムカッ
ぶつかった私も悪いけど、イケメンと思った矢先、初対面でありながら、失礼な言葉に腹が立つ。
「し、失礼な人っ!開いてますっ!あなたこそ、ボーッと突っ立てたんじゃないんですか?」
「はあぁぁぁっ!?テメーっ!」
「まあまあ、雪渡(ゆきと)」
私を連れて来た人が仲裁に入る。
「彼女、事情あるみたいで、雇わせようと思って〜」
オーナーと言われている人が言った。
「えっ!?確定?いやいや、私はまだ……」
「コイツには無理でしょ!?」
「それは、雪渡個人の意見じゃないのか?」
別の所で声がし、声のする方に目を向けると―――
ドキッ
《またまた、イケメンの登場!》
「あっ! 令二(れいじ)さん」
「彼女は?」
私を見ては周囲に尋ねた。
「あー、新しいバイトに雇わせようと思って。タクミが連れて来た女の子。事情あるみたいだよ」
オーナーである人が言った。
「女の子のスタッフいないし、一か八か連れて来ました!」
令二さんと呼ばれている人は私に歩み寄ると、アゴをクイッとした。
ドキッ
「名前は?」
「優奈だそうですよ」
連れて来た男の子が言った。
「優奈?元彼女(カノ)と同じ名前だ。珍しい事もあるんだな」
「えっ?」
「その制服は、雪渡と同じだな」
私に対して失礼な人を言って来た人を横目でチラッとみた。
目が合う私達。
「あっ!本当だ!」と、連れて来た人。
「へえー…雪渡と?」と、オーナー。
「ここは、高校生のみの溜まり場だ。16〜18までしか入れない。オーナーである佑吏(ゆうし)と俺以外、みんなお前と変わらない年齢だ」
「えっ?」
私は見渡す。
しかし、こうして見ると、良くもまあ、こんなイケメンが揃うものだ。
高校生が通えるホストクラブと言うべきだろうか?
店内は、テレビなどで見た事があるような、まばゆい光で、キラキラ綺羅びやかな雰囲気の店内。
「それで?お金、いくら欲しいんだ?」
「いや…いくらと言われても、とにかく父親の借金を返さなきゃいけなくて」
「10万は、毎月必要なんでしょう?」
連れて来た人。
「ま、まあ…」
「取り敢えず、奥に入って詳しい話を聞こう」
「君が勘違いしているような場所じゃないから安心して良いよ。おいで。優奈ちゃん…だっけ?」
「は、はい…」
そして、私は取り敢えず、佑吏さんと令ニさんの二人から説明を聞く事となり、私の家庭の事情を佑吏さんと令ニさんという人に話をした。
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