第18話 帝国皇子に領都に連れて行ってもらう約束をしました
オーバードルフ王国からの謝罪使は全然来なかった。
お母様はイライラして待っていたが、私はどうでも良かった。
奴らは私を婚約破棄したという意味をおそらく判っていないだろう。おそらくだが、婚約破棄された脳筋の辺境伯令嬢が乱心して、王太子はじめ多数の死傷者を出した、としか認識していない。その結果として私と辺境伯に、その責任を取らさねばとでも思っているのではないか。そんな使者がこちらに来た日にはオーバードルフ王国が終わるだけなのだが・・・・。
会議に出ている陛下はそんなことはないと思うが、陛下の子供があのベルンハルトだ。あまり期待はできないかもしれない。文官達は最悪の状況も鑑み今早急にいろんな時の案を策定していた。
私はそれよりもフェルのお相手するのに疲れてきた。
だってフェルは「婚約破棄されるのなんて最低だ」
「危うくさらわれそうになるなんて、なんて無防備なんだ」
と散々ブツブツ言われて、「だから俺がついていくと言ったのに」
最後はここで終わる。
本当にウジウジウジウジ、鬱陶しい。
「でも、ついてきてくれなかったの、フェルよね」
私はあまりにも何度も同じようなことが言われたので、流石にキレた。
そうだ、こいつ、ついて来ると言っておきながら、帝国の事情で帝国に残ったのだ。自分の都合でついて来なかったくせに、グチグチ言うな!
私はフェルを睨みつけてやった。
しかし、次の瞬間私は驚嘆した。
「その点は大変申し訳なかった」
な、なんとフェルが頭を下げたのだ。
あのプライドの塊で、今まで悪いことをしても私に頭を下げたことのない、あのフェルが頭を下げたのだ。
明日は槍が降ってくるのだろうか?
私は思わず空を見ていた。
「何をしている?」
「いや、フェルに謝られたから、何かあるのかと」
「俺も帝国の皇子だ。悪いことをした時は当然謝る」
えっ? こいつが・・・・・
私にはどういった心境の変化かはよく判らなかった。
「今後は、二度とエルを一人では危険な所にはやらない、と俺はここに誓う」
うーん、何か言っているけど・・・・。それって私の行動が心配だから、監視するっていうこと?
そこまでしてもらわなくて良いんだけど。
でも、待てよ。それは使えるかも・・・・
「えっ、それって、私の行くところにどこでもついてくるということ?」
「エルに頼まれれば」
「本当に?」
「ああ、当然だ」
フェルは頷いた。
「じゃあ、領都に出来た、帝国堂に行きたい」
「えっ、帝国堂?」
「そう、そこのチョコレートパフェとかいうものが食べたいの」
私はダメ元で言ってみた。昔はそんなところは女が行くところだと一顧だにせずに断られていた。
「良いぞ。それは帝国堂という限り帝国の資本が入っているのだろう。全然問題ない」
「えっ!」
その一言に本当に驚いた。これでお兄様なら絶対にフェルのほっぺたを私にやったみたいにつねっているはずだ。でも、どう見てもフェルだし、流石に帝国の皇子のほっぺたをつねれない。昔はやっていたけど・・・・。
「じゃあフェルのおごり?」
ダメモトでもう一つ言ってみた。
「いや別に、それで良ければ全然問題ないぞ。何なら、宝石でも衣装でも何でも買うけれど」
ええええ!、ケチな、フェルがおごってくれるなんて絶対におかしい。宝石とか衣装とかって何だ?・・・・。
こいつ昔は衣装は着れればいい、とか言いながらとても高価な衣装を無造作に汚していたような記憶がある。そのフェルが衣装を贈ってくれるだ?
何か変!
予算を使い切らないといけないのだろうか?帝国はそれほど儲かっているのか?
「うーん、それはいらないから、そう言ってくれるなら屋台で串を食べたい」
「いや、別に良いけど、安上がりな女だな。それも食いもんばっかりだし」
「だってお母様が、婚約破棄されたところだから、超過保護になっているんだよね。一人で出歩くのは禁止とか言って。そうかと言ってついて来てくれるかというと、忙しくて、一緒になかなか連れて行ってくれなくて。フェルの護衛付きなら問題なく行けると思うの」
「それは当然だ。喜んで、我が姫!」
フェルが何か話した。
えっ、何かフェルが変?。今まで、面倒くさいとか散々文句言っていたのに、どういう風が吹いているんだろう? 熱があるのか? そうか変なきのこでも食べたんだろうか?
そうか! 誰か、こいつにもついに想い人が出来たんだ。絶対に! それでこいつ、私相手に練習でもしているつもりだろう。そうに違いない!
私はやっと納得した。
でも、フェルの気に入るのってどんな奴なんだろう? お姉様に必死に何か頼んでいたけど、ひょっとしてお姉様とか? うーんねでも相変わらず下僕って感じ出し・・・・。まあ、それは明日でも、おいおい聞いてやろう。
でも、せっかくついて来てくれるのだから、久しぶりに色んな所に行きたい!
私はフェルを連れ回して、どこに行こうか、といろいろ画策し始めた。
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