第12話 お姉さまは南国の軍使が話し出す前に、目の前の軍を殲滅しました

「父上、ゲフマンの相手をして参ります」

お兄様とお姉さまが席を立上った。


「私も行きます」

私も慌てて立上った。


「貴様が来た所で足手まといになるだけだろう」

お兄様は冷たく言うが、

「お兄様。エルにその言い方はないのではなくて。王国でひどい目に合ってきたのに」

お姉さまが怒って言う。

それに対してお兄様は明後日の方向を向く。


「でも、エル、あなたは疲れているでしょう。お母様の傍で休んでいなさい」

「お姉さま。私もいつまでも子供ではありません」

私は少し怒って言う。姉はいつまでも過保護がすぎるのだ。お母様の所で静かに待っていろなんてお姉さまは私がいくつだと思っているのだ。もう18なのに。


「でも、疲れているでしょう」

「でも、ゲフマンに逃走した兵が王都にいたのです」

「あなたが一物をちょん切ってくれた奴ね」

「ちょん切ってなんていません!」

私は姉の言葉に反論した。何で男のそんな汚らしい物をちょん切らないといけないのだ。


「えええ、あなた、婦女暴行未遂はちょん切るって決まっているのよ」

「それお姉さまの部隊だけですよね」

「おい、先に行くぞ」

兄は呆れて言うや出ていった。


「で、何、時間がないんだけど」

「ゲフマンに逃走した兵が王都にいるっておかしくないですか」

「そう?、私だと一瞬だけど」

「お姉さまは別格です。普通は魔術師でさえ休み休みで5日はかかります」


「たしかにそうだな。エルはゲフマンと王国が手を結んだのではないかと疑っているのだな」

父が言ってくれた。


「はい。敵軍を見れば何か判るかと」

「見た瞬間に何か判るの?」

姉が疑り深かそうに聞いてきた。


「そんなの判るわけ無いでしょ」

「じゃあ来る必要ないじゃない」

「言葉の綾です。確かに見た瞬間にはわからないですけど、雰囲気とか違うかもしれないですし、敵から何か言ってくるかもしれないじゃないですか」

私が必死に言い募った。姉の言うとおりにしていると絶対に私は現地にいけない。


「判ったわ。でも、あの雷と訳のわかんない剣の攻撃はやめてよ。調子が狂うから」

「出来る限り努力はします」

私はそう言うしか無かった。だって雷は私がやばくなると勝手に守ってくれるし、やばくなったら剣で攻撃するしか無いじゃ無い。


まあ、お姉様には言えないけれど・・・・



お姉さまは私の手を掴むと即座に転移してくれた。


そこは要塞の城壁の上だった。


我が領都は、前面にはサウス湖と山脈がひろがっており領都に繋がるこの街道がこの要塞を貫いていた。

ゲフマンからの道は険峻な山を超えるか、この要塞を攻略するかのどちらかしか無かった。


その街道の全面にゲフマンの大軍が展開していた。

というか、道幅は10メートルもないので展開は出来なかったが・・・・・


この狭さなので1万だろうが10万だろうがそんなに変わらなかった。


姉は前に進軍してくる敵を見つけると


「よし、行くわよ」

早速、攻撃魔法陣を自分の周りに5つ出す。


そもそも私が敵情を見る暇もないではないか。姉はこういう時はせっかちなのだ。敵と認識した瞬間から攻撃に入る。兄に邪魔されないために。


そして、5つの魔法陣から一斉に爆裂魔術を弾き出したのだ。


「おい、待て、我らは」

何か兵士たちが言おうとしているみたいだったが、お姉さまは待っていなかった。


前の兵士たちに次々に爆裂魔術が命中し、戦列が大いに乱れる。


「よし、準備運動終わり」

お姉さまはニヤリと笑った。


何か真ん中あたりで軍使のような白旗を掲げた男が目に入ったが、お姉さまは待ったなしだ。


お姉さまは軍を率いた軍使は胡散臭いと絶対に話を聞かないのだ。

「ちょっとお姉さま」

私は折角話を聞こうとしたのに、お姉さまはやはり待ってはくれなかった。


「行っけーーーーー」

お姉さまの掛け声で5つの魔法陣から凄まじい攻撃魔術が一斉に放たれた。


その5本の力の本流は平行に確実に道を潰していく。


道の上をすべて覆って、深い5本の深い穴の軌跡を一直線に引いていく。と言うかその上にいる兵士たちを攻撃していく。


凄まじい爆発音がして、見える限りのゲフマン軍は消滅していた。

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ゲフマン国王は、果たしてエルを人質にとったと言えるのか?

次は先を越されたと怒り心頭のお兄様の登場です。

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