第185話 グラデュースに驚くダークエルフ!

あのステーキを食べた日の長老は急にご機嫌となり、食べ終わった瞬間全員が走ってきて「儂らもいくぞ」と言ってきた。キュレーネは見事に成功したなとほくそ笑むのだった。


「早くこんか?もう行くぞ」


ガトーが早く行こうと急かしてくる。他の長老も準備万端のような感じで待ちくたびれている。


「クソジジイとクソババア手伝え!こっちには子供や赤ちゃんもいるんだぞ」


あれからキュレーネは、長老をクソジジイ・クソババアと呼ぶようになり口調も普段通りになっている。最初のうちは文句を言っていた長老達も今や何も言わなくなっている。


「儂らはか弱いジジイとババアじゃからな。腰が痛いんじゃ」


ジバイがわざとらしく腰を押さえながら言う。それを聞いたキュレーネは「チッ」と舌打ちをして赤ちゃんを抱っこして転移する場所まで連れて行く。


「キュレーネ、長老に凄い口調で話すようになったわね。何があったの?」


「長老は老害だと認識しただけ。無駄に歳だけ食った頭の堅い奴らなんだよ。じゃあそろそろ転移するから集まって」


集落の住人200人が広場に集まる。


「長老のジバイじゃ。向こうは未知じゃ。どんな危険が待っとるかわからん。気を張っておくんじゃぞ。そして、ダークエルフ以外は信用してはならんからな」


バチコーン!


思いっきりジバイの頭を叩くキュレーネ。


「おい!クソジジイ黙れ!みんないいか、未知でもなければ怖い場所でもない。困っている我々を受け入れてくれた唯一の場所だ。まず向こうについたら従い迷惑をかけるなよ。ちゃんと掟通り私と向こうの戦士の決闘を承諾してくれたんだ。粗相をするやつは私が許さない!わかったね?」


みんなはそれを聞いて「はい」と返事をする。もうどっちが長老なのかわからない状況だ。ジバイは本気で痛がり涙目になっており他の長老から慰められていた。

それからすぐ転移して村に着く。見慣れない建物やそびえ立つ壁に驚くダークエルフ達。長老も「なんじゃなんじゃ」と無駄に騒いでいる。


「皆さん、私は村長のアレンと申します。ようこそお越し下さいました。歓迎致します。あちらに料理を用意しましたのでよかったら食べて下さい」


アレンがやってきて軽い挨拶と食事を用意していることを伝えた。

ダークエルフはお腹が減っていたのか一斉に料理が用意されたテントまで走っていく。馬鹿な長老は挨拶もせずに同じように走っていく。


「アレンさん申し訳ない...お礼もなしにはしたない行動をして。それにクソ長老共は舐めているとしか思えない。アレンさん申し訳ないがダークエルフが萎縮する程の何かを見せつけてはくれないだろうか?」


キュレーネは、ダークエルフの常識のなさに頭を抱える。どこかしらでまだダークエルフの方が上位の存在だと思っており舐めているのだろうと考えている。


「大丈夫だと思いますよ。ほら来ました」


頭上を見ると三匹の竜がホバーリングをしていた。グラデュースのあまりの大きさに地上が暗くなる。変に思ったダークエルフ達がテントから出てる。


「ギャァァァァァ」


ダークエルフ全員が大声を上げて尻餅をついて動けなくなる。失神する者まで現れる。


「アレンよ、今日はパーティーか何かか?」


わかっていながらわざとらしく聞くグラデュース。


「ダークエルフが移住してきたんですよ。お腹が空いているかなと思い食事を用意したんです。食事が終わり次第、ここにいるキュレーネさんと試合をしてもらいますから降りてきて貰えますか?」


「わかった。すぐに戻ってくる」


離着陸場にそのまま飛んでいくグラデュース。上空からの警備はテオフィロとドゥルシッラに任せたようだ。


「ア、アレンさん、私あれと戦うのですか?」


驚きすぎて敬語になるキュレーネ。

足がガクガクと震えている。


「そりゃそうですよ。最高の戦士には最高の戦士をでしょ?うちの村で1番強いグラさんが相手です」


わざと大声でダークエルフ全員に聞こえるように言うアレン。


「アレンさんあれは無理です。どうにかなりませんか?」


「不戦勝でいいですか?負けを認めてもらえるなら戦わずに済みますよ。それか、あの〜長老様〜キュレーネさんの代わりに戦われますか?」


長老は、ギョッとした目でアレンを見る。何を言ってくれんじゃぁぁぁと言うように。


「長老様というくらいですから、さぞかしお強いんでしょうね?キュレーネさんは戦わなくていいですよ。代わりに長老様に戦ってもらいますから」


アレンが普段見せないような顔をしながら長老達に近づいていく。長老はカタカタと歯を鳴らしてブルブル震えている。


「長老様方、どうしますか?戦われますか?」


「むりじゃぁぁぁぁ。もう許してくれ」


「むりだぁぁぁぁ。あんな化け物死んでしまう」


「無理ですわ無理ですわ無理ですわ」


「儂は絶対戦わんぞ。あんなもの自殺行為だぁぁぁ」


「そうですか...なら不戦勝ということでこちらの暮らし方に従ってもらえますね?」


カクカクと首を縦に振る長老とダークエルフ達。


「よかったです。じゃあ冷めないうちに料理を食べてください」


パンパンと手を鳴らして言う。従う他ないダークエルフはお通夜状態で食事に戻る。子供達は逆にはしゃぐように食事をする。まだ強いとか弱いとかしょうもないことを考えない純粋な年代なのだろう。それを見たアレンはカワイイ子供達だなと笑顔になる。


「この骨付きのお肉おいしい。皮がパリパリでお肉が凄いジューシーだよ」


「え?こっちの薄いパンみたいなのもおいしいよ〜ビヨーンて伸びるし甘酸っぱい味が合うの」


骨付きチキンとピザを食べて感想を言い合う子供達。


「わかってないなぁ。この魚凄いよ。口に入れたらとろけるんだ。こんなおいしい魚初めて」


刺身盛り合わせを食べながら話す子供達。


それを見ていたキュレーネは、子供達が1番肝が据わっているなと思うのであった。


グラデュースはというと「え?戦わないの」と言い悲しい顔をしていた。

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