第171話 大好物を食べるファーニャとエルドレッド!
ファーニャは、エルドレッドを護衛に付けて、村へ取り引きにやってきている。最近景気がいいのか、魔物もすべて引き取ってくれている。憩い亭の営業時間が近付くにつれて、ファーニャがソワソワしだす。早く魚を食べたいのだろう。やっと取り引きが終わると、足早に憩い亭に向かうファーニャ。
「エル、早く行くにゃ〜」
「魚は逃げないだろ?ってわかったから手を離せ」
小さい体のどこにそんなパワーあるのかというくらいの力で竜人のエルドレッドを引っ張っていくファーニャ。
カランカラン
「うにゃ〜この匂いおいしそうにゃ」
久々の憩い亭のホールに広がる料理の匂いに顔がとろ~んとなるファーニャ。
「ファーニャ、さっさと座らないと迷惑になるから。ほら、行くぞ」
エルドレッドは、動こうとしないファーニャを片手で持ち上げて運び席へと座らせる。
「ふにゃ?いつの間にか、椅子に座っているにゃ!にゃにがあったんだにゃ?」
バチコーン!(頭を叩く音)
「お前が、入り口で動かないから抱えて運んだんだ。それより、何を食うんだ?」
頭を押さえて涙目になるファーニャ。
「痛いにゃ...にゃぐらにゃくてもいいにゃよ。そうだったにゃ!にゃにを食べるかは決まっているにゃ。刺身と焼き魚にゃ」
ほわほわと頭上に焼き魚と刺し身の映像を浮かべながら、嬉しそうに語るファーニャ。ヨダレも垂れそうになっている。
「わかったわかった。ラリサ、麻婆豆腐とミラガーの実のウォッカをくれ」
「こっちは、まぐろの刺し身とビールをお願いするにゃ」
「畏まりました。少々お待ち下さい」
ラリサがすぐに厨房へ注文を知らせに行く。
「今日も取り引きはうまくいったのか?」
護衛としてずっと共にいる所為か、何気に商売がうまくいっているのか気になるエルドレッド。
「バッチリにゃ。少し缶詰とお酒の量を増やしてもらえたにゃ。それに、魔物も魔境でしか手に入らにゃい物や高品質にゃ魔石も取り引き出来て最高だにゃ」
どうやらうまく行っているようで安心するエルドレッド。最近では、貴族の間でなくてはならない商会になっているくらいだ。
「お待たせ致しました。麻婆豆腐とミラガーの実のウォッカとまぐろの刺し身とビールです」
待ちに待った料理に、ファーニャだけではなく、エルドレッドも目を輝かせる。
「早速、頂くにゃ。うみゃ〜だにゃ。濃厚にゃまぐろの味がするにゃ。これは、もう肉と言っても過言ではにゃいにゃ。ぷひゃ〜ビールも相変わらずうみゃ〜だにゃ」
「ぷはぁ〜やっぱりこのピリっとくる酒...これが1番だ。何故、あんなエールを今まで呑んでいたのか不思議になるくらいだな。それに、やはりこの麻婆豆腐うまい!とろみのついたスープに肉と香辛料と何か加えることで、味を更に昇華させている。それから、なんの変哲もない白い豆腐というのもこのスープと一緒に食べるとうまいな。そして、ピリ辛のウォッカを呑むと...ぷはぁ〜ダブルの辛さがなんとも言えないハーモニーを奏でる。最高だ」
それぞれが、好きな物を食べて幸せそうな顔をする。周りを見渡しても同じように幸せな顔をしている人ばかりである。
「とろけるにゃ〜凄い脂だけど、全然しつこくにゃいにゃ!スーッと口から消えてにゃくにゃるにゃ。驚いたにゃ」
トロを食べて、あまりのおいしさと口からスーッとなくなる脂に驚くファーニャ。
「すいませんにゃ。おすすめの焼き魚とライスを下さいにゃ」
「俺は、キムチとこの酒のおかわりを頼む」
「は〜い!少々お待ち下さい」
「本当にファーニャは、魚が好きだな」
「魚が1番おいしいんだにゃ。それから、魚のにゃい料理屋は料理屋じゃにゃいにゃ
」
いやいや。魚以外を専門にしてる料理屋や海のない地方の料理屋や酒場はどうなるんだと思うエルドレッドだったが、わざわざそんな野暮なことを口にはしない。
「じゃあ、憩い亭は、料理屋として1番なのか?」
「そうだにゃ!ここ以上に、魚をおいしく提供する店はにゃいにゃ。って焼き魚がくるにゃ」
ファーニャの焼き魚を嗅ぎ分ける嗅覚は以上なのか、まだ厨房から出てきてもいないのに、確信している。
「おぉ〜本当に焼き魚がきたな」
ファーニャが言ってから数秒経ったくらいに、厨房からラリサが料理を持ってやってきたのだ。
「お待たせ致しました。ホッケという焼き魚とライスとキムチと追加のウォッカです」
「ほぅ、ピリ辛でシャキシャキの野菜がうまいな。これも、辛いと辛いのハーモニーが素晴らしいぞ。こりゃ止まらん」
辛いのはさて置き、ずっとウォッカを呑み続けているエルドレッドは、一切酔わない。バルト並の強さである。
「ホッケうみゃ〜だにゃ!こんな味の魚食べたことにゃいにゃ。脂が乗ってて甘くてパリパリのホロホロで最高だにゃ。止まらないにゃ。ライスとも合うにゃ」
ホッケの虜になってしまったファーニャは、骨に付いた身までしゃぶって食べる程である。
二人はその後、一切喋ることなく黙々と目の前の料理を食べるのであった。
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