第7章 魔境村の日常生活
第161話 一家団欒しゃぶしゃぶフェア!
バルトとリケは、まだ何かを建設中のようだ。拓哉的には、兵器的な物以外、自由に作ってもらって構わないので、アレンの采配とバルトとリケの創作意欲に任せている。
今日は、久々の営業ができるというのと、みんながワイワイしているのを見たいので、しゃぶしゃぶを作ろうと思う。
「桜花、オークの肩ロースとミノタウロスのロースを切るから手伝って」
今回は所謂、豚しゃぶと牛しゃぶの異世界版であるオークしゃぶとミノしゃぶをやろうとしている。
「こんな感じで、薄くでいいからな」
「うん。わかったんだよ」
アイテムボックスのお陰で冷凍をしなくていい為、無駄な血や色の変色などがなく、最高の状態を味わえる。
「うまいこと切れてるよ。とりあえず、湯を沸かしたからどんな感じか味わってみて。ここでしゃぶしゃぶして、ごまダレにつけて食べてみて」
今回は、ごまダレとポン酢を用意したのだが、子供に人気のごまダレを桜花に味わって貰おうと思う。
「しゃぶしゃぶするのおもしろいんだよ。じゃあ、頂きます。ん〜ドロっとした濃厚なごまダレとオークの甘いお肉が合うんだよ。あるじが、薄く切ってって言ったのがわかるんだよ。おいしいんだよ」
桜花は、ごまダレの虜になり、5枚程ペロリと食べてしまった。
「うまいだろ。お客さんに出す時は、野菜も入れるからより旨味が出て満足行く味になるよ」
まだこれは、湯にくぐらせただけで、野菜の甘みや旨さが溶け出していない湯なのだ。更に、おいしくなると聞いて、桜花は興味津々になる。
「料理は、不思議なんだよ。単純な一手間で、味がガラリと変わるんだよ」
「そうだよな。調味料だけで別の食べ物に早変わりしてしまうからね」
改めて、料理の奥深さを知る桜花。どんどん料理にのめり込んでいくようだ。
「あとは、残りの肉と野菜と豆腐を切って、お湯に昆布を入れて昆布出汁を取る感じかな」
「野菜と出汁取りは任せてほしいんだよ」
桜花の言葉通り、野菜の切るサイズを伝えただけで、淡々と熟していく。
そして、全ての調理が終わり、営業の時間を迎える。店内には、しゃぶしゃぶフェアと貼り紙を貼っているからか、営業が始まるやいなや、しゃぶしゃぶの注文が入る。
全員の所に、鍋を運んでから説明に入る。
「お待たせしました。いい感じに煮えていますので、お肉をこんな感じでしゃぶしゃぶとして、2種類の好きな方のタレに付けて食べてください」
早速、みんながしゃぶしゃぶしている。特にアカツキは自分でやりたいみたいだ。
「ぼくも、しゃぶしゃぶしゅるでしゅ」
「熱いからアカツキには、まだ早いかな。このお肉や野菜をいっぱい食べて大きくなったらしゃぶしゃぶしていいよ」
「そうよ。ほら、あ〜んして」
「おいしいでしゅ。もっと食べたいでしゅ。早く大きくなるでしゅ」
流石に、熱々の鍋は危ないし、まだ箸も握れないアカツキには早いと、親らしく優しく諭すフェンとサキであった。
一方こちらも、子供のいるアレン夫妻はというと。
「しゃぶしゃぶ楽しいですね。ん〜それに、このドロっとした甘いタレとオークのお肉が合います」
「そうね。このタレおいしいわぁ。それに、新鮮野菜もおいしいわよ。見たこともないキノコだけど、噛む度にキノコの旨味が溢れ出ておいしいわ」
モニカは、しいたけを食べているようだ。
「二人の言う通りうまいが、私はポン酢が好きかな。さっぱりしていて、ミノタウロスの肉によく合う。うまい!ヤナもちゃんと食べているかい?」
「はい!父上、おいしく頂いています。俺も、ポン酢派ですね。薬味のねぎを入れると更においしくなりますよ」
アレンがヤナに尋ねたのだが、ヤナも教養を深めるにつれて、しっかり敬語などを使えるようになった。
「どうじゃリケ?うまいじゃろ?」
「はい!親方、うまいっす。こんなうまい肉初めてっす。それに、このタレ凄いっすね。それより親方、いつもより呑む量が多くないっすか?」
「そんなことないじゃろ。いつもと変わらんわい。飯がうまいと酒が進むのは事実じゃがな」
本当は、愛弟子が来てくれたことを、密かに嬉しく思っているバルト。その所為で、酒の量が増えているのだ。
「他の愛弟子に教えてはいけないと言っていたっすけど、この料理を食べさせてあげたいっす」
「ダメじゃダメじゃ!愛弟子ならまだしも、絶対にいらんやつらまで来よる。考えてみぃ...酒だ酒だと暴れ回って拓哉に迷惑をかけるぞい」
「あ!やめておくっす。他の人の分まで、リケが食べるっす」
リケも、取り返しのつかない惨状を想像して、考えを改めるのであった。
家族持ちの一家団欒鍋は、見事に成功を収めたようだ。バルトも、愛弟子という家族を新たに迎えてより元気になっているようだった。
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