第158話 最終日の朝食作り!和食の虜になる王様!

3日間は、あっという間に過ぎ去り、帰宅前に朝食を作って帰ろうとしている拓哉。

何故か、当たり前かのように王様が席に座って待っていた。


「サリアさん、何故平然と王様がいるのですか?」


「お見送りに来たらしいですよ。そしたら、朝食を食べられると聞いてそのまま居座っているようです」


「そうなのですね。本当に、そんな自由でいいのかと疑問に思ってしまいますよ。じゃあ、朝食を作ってきますね」


借りている厨房に向かう拓哉。娘たちにも手伝って貰おうと思っているのだ。


「桜花は、白ネギと豆腐の味噌汁を作ってくれないか?ラリサとアニカは、一緒にだし巻きを作ろう」


桜花は、手慣れたもので、なんの心配もなく作り始める。

こちらも、作業に取り掛かる。


「ラリサとアニカは、卵を溶いて出汁と薄口醤油とみりんと砂糖を俺と同じ分量入れて混ぜてくれないか?」


二人は、「うん」と言って拓哉の真似をしながら混ぜ始める。


「次は、卵焼き器を中火で温めてサラダ油を加え、キッチンペーパーで拭いてなじませてから、箸先に卵をつけて卵焼き器に落としてジュッとなるか確認して、卵焼き器が温まってたら、卵を入れて奥から手前に巻き、奥にやる。また油を加えて、キッチンペーパーで拭いて、さっきの要領で卵を入れて巻いての繰り返し。失敗してもいいからやってみよう」


拓哉は、やり方を何度も見せてから、二人にチャレンジさせる。

うまく巻けなかったり、焦がしてしまうが拓哉は一切怒らない。


「パパ〜難しいの。くるくる巻けないの...」


「アニカの言う通り巻くの難しいです。それに、お父さんみたいに綺麗な表面になりません」


真っ黒に失敗したの以外なら、丼ぶりにしたり、何かと和えて食べることができるから、気にしていない拓哉。


「失敗したのは、俺達が食べたらいいから。それに、段々うまくなってるよ」


そろそろ、ご飯も炊きあがり、焼き魚も焼けそうである。

桜花も、味噌汁が完成したようでこちらにやってくる。


「味噌汁いい感じだよ。うわぁ、おいしそうだよ...あるじ、焦げたのでいいから食べたいんだよ」


どうせ、あとで食べる用だし、構わないかと思い「いいよ」と返事をすると、娘たち全員が口に入れる。


「ん〜出汁の味がじゅわ~っと出ておいしんだよ。焦げも気にならないんだよ」


「本当です。桜花の言う通り、おいしいよ〜。卵の濃厚な味と出汁が相まって最高のだし巻きです。それに、ふわふわしてます」


「アニカの作っただし巻きもおいしいの。形は悪いけど味で勝負なの」


拓哉も食べてみたが、確かに多少焦げていても全然気にならないし、ふわふわである。うまい。


「味は、申し分ないよ。あとは、形さえちゃんと作れるようになったら、お店でも出せるよ」


ラリサとアニカは、かなり喜んでいる。普段から給仕ばかりさせていたので、偶には一緒に料理もいいもんだなと思う拓哉。


「桜花の味噌汁はどうかな?うん!完璧だね。辛すぎることもなく素材の味を活かされるような味わいだよ。うまい」


それを聞いた桜花も、二人と一緒に喜ぶ。

これこそが、のんびりのほほんと望んでいた光景だと思うのであった。


「よし!出来上がったのを並べて持っていこう」


ちなみに、だし巻き・味噌汁・白米・鮭・納豆である。


「お待たせ致しました。どれもライスと合うおかずです。その匂いが強い豆は、醤油と黄色いからしというのを少し入れて混ぜてからお召し上がりください」


果たして、納豆を食べてもらえるのかと思う拓哉。


「凄いネバネバしますね。匂い独特です」


「でもおいしいよ。食べて見てよ。豆の味がしっかり感じられて素晴らしい食べ物だねぇ」


「本当ですね。醤油と豆の味が合わさっておいしいです。それに、ライスとの相性もいいです」


納豆は、エルフの人には受け入れてもらえるようだ。ちなみに、娘たちは鼻を押えて嫌がっていた。獣人だから鼻が効きすぎて辛いのだろう。


「魚とライスを食べた後に、味噌汁を飲んでみて。凄く落ち着くわよ。なんと言ってもおいしいわ。それに、全然しつこくないからいくらでも食べられそうだわ」


そうそう、和食は体にとてもよくて、胃もたれしない物ばかりなのだ。


「ん〜卵もおいしい。出汁が聞いていて最高です」


「あ〜もう和食を朝に食べないと生きていけない体になったよ。私も、ドリア様のところに移住しようかねぇ?」


王様が有り得ないことを口走る。それに、王様が来たところ...この人ならすぐ順応しそうだなと考えを改める拓哉。


「王様、だめですよ。ちゃんと退位したあとにしてくださいね。それに、拓哉さんにしっかりお願いしないといけませんよ」


何故か、母親のように言うサリア。


これは、いけないと思い、拓哉は足早に厨房に逃げるのであった。いい人でも王様が来るとか、怖くて受け入れたくないからね。

でも、いつか本当にくるのではと恐怖する拓哉であった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る