第156話 サリアに新しい料理を教える!
「では皆さん、好きな具材を乗せましょう」
エルフの料理人が数名気合いの入った眼差しで拓哉を見つめながら言われた通り具材を乗せている。
一体これは、どういうことなのか遡ろう。
「拓哉さん、お願いします。料理を教えて下さい」
最終日の朝、拓哉は観光を楽しもうと、準備をしていたのだが、サリアが土下座をする勢いでお願いしてきたのである。
「料理ですか?でも、ラザニアにグラタンにドリアと十分なくらい極めていますし、お店も大繁盛じゃないですか。急にどうしたのですか?」
「昨日の料理を食べて、私はまだまだだと痛感しました。拓哉さんは、色んな料理を作れますが、私は3種類しかありません...もっと学びたいのです」
う〜ん?そもそもコンセプトが違うお店だからなぁと思うのであった。拓哉の店は、なんでも出す料理屋。サリアの店は、決まった物...同じ系統の物を出す料理屋である。
「そうですねぇ...教えるにしても、ラザニアとかと出してもおかしくない料理ですよ。それでもいいなら教えます」
「はい!それで構いません。むしろ、ずっとお願いばかりして申し訳ございません。拓哉さんに迷惑ばかりかけていけないとは思いながらも、料理に対しての探求心が抑えられないのです」
理解しながらも、追い求めてしまう気持ちもわかるので、拓哉は承諾しようと思った。サリアが、常識人であることが大きい要因だろう。
「わかりました。ラリサ アニカ 桜花ごめんな。夜は、一緒に見に行くから許してくれないか?リーリヤさんも、2日連続ですいませんが、娘たちをお願いできますか?」
夜のイルミネーションは、絶対一緒に見に行こうと思う拓哉。
「私は、大丈夫ですよ。サリアさんを助けてあげてください」
「パパと行けないのは寂しいけどサリアお姉ちゃんを助けてあげてほしいの」
「料理を作る僕も、その気持ちはわかるからあるじ教えてあげてほしいんだよ」
「私は、構わないわよ。いつも、拓哉のおいしい料理をご馳走になっているし、この子達といるのも楽しいから」
4人とも快く許してくれるようだ。
昔なら駄々をこねていた娘たちが他人を想いやれる優しい人間に育ったことを嬉しく思う拓哉。
「ありがとうな。夜は楽しもう」
「う〜皆さんありがとうございます。拓哉さんをお借りしてすいません」
こんなことが、朝繰り広げられて、今の料理教室に至るわけである。あと、何故かサリアの店の料理人も是非ドリア様から学びたいとのことで参加しているのである。
「今日は、ピザを作っていきます。まずは、強力粉 60g 薄力粉 40g 塩 小さじ1/3 ドライイースト 小さじ1/2を入れて、お湯を注ぎます。これを、粉っぽさがなくなるまで混ぜましょう」
全員がコネコネ混ぜ合わせていく。ドライイーストに関しては、後で天然酵母の作り方を教えて代用品を作る予定である。
「次に、オリーブオイルを混ぜていきます。これに関しては、代用品になりそうな油を見つけてください。オリーブオイルが馴染んだら台の上に置いて、均等に表面がツンるとなるように再度混ぜてください」
みんなコネコネして均等に混ぜていく。流石、料理人というところだろう。綺麗に混ぜ合わせてミスなくこなしてくれる。
「みんなうまいこと作りますね。次は、発酵という大事な作業なのですが、40℃...今の季節より少し暑いくらいの熱さでこれを包み込むように温められる魔法を使える人はいますか?」
サリアが手を上げ代表して答える。
「火の精霊にお願いすれば可能です。火の精霊達も拓哉さんの料理を食べたいのか。やる〜やる〜とさっきから拓哉さんの周りを飛びながらアピールしていますよ」
人間の拓哉には見えないが、どうやら精霊がアピールをしているらしい。見てみたい気もするが叶わない夢だろうと思う拓哉。
「では、精霊さんにお願いしようかな?精霊さんに俺の声は聞こえてるのですか?」
「はい!昨日から拓哉さんに興味を示した精霊が1人付いて回ってますよ。指示をしてあげれば、行動してくれます」
昨日の料理で興味を示してくれたのか?上位精霊のシャーリーとビーチェといるからか?興味を示して拓哉に付いて回っているようだ。
「じゃあ、精霊さん、さっき言った熱さでこの生地を俺がいいと言うまで温めてください。うまくいったら食べていいですからね」
その直後、ほわ~んと温かい?少し熱いくらいの光が生地を包み込む。他の生地は、サリアが指示を出して同じように温めているようだ。
それから、30分くらいが経っただろうか。
生地は、2倍ほどの大きさになる。
「精霊さん、ありがとうございます。魔法をやめてもらっていいですよ。完成したら呼びますからね」
ほわ~んとした光が収まる。
「次に窯を俺がいいというまで熱してください」
200℃と言ってもわからないので、目視と経験で確認するしかない。
それから、マルゲリータ用のニンニクと玉ねぎをみじん切りにしてトマトソースを作る。
「生地をこのような感じで丸く平たく広げて、作ったトマトソースを塗ってチーズを乗せてください。あとは、焼くだけです」
200℃だろうと思われる窯に入れて、ピザを焼き始める。
焼き始めて暫くするとチーズが溶け出して綺麗な焼き色が付いてきた。それを、取り出すとフワ〜っと香ばしくチーズとトマトのいい香りがする。そこに、バジルの葉を乗せたら完成である。
「皆さん、これがマルゲリータというピザです。切り分けて熱いうちに食べてください」
エルフの料理人とサリアが「は〜い」と言って切り分けて食べ始める。
拓哉は、精霊の為に小さく切って与えてみる。
「精霊さん、お待たせしました。熱いから気をつけて食べてくださいね」
言った直後から、切ったピザが見る見るうちに無くなっていく。
「サリアさん、もうピザがなくなったのですが、俺に付いてる精霊ってそんな大食いなんですか?」
「ん?んぐっ!はぁ〜ピザおいしいです。チーズの味とトマトとハーブとモチモチふわふわの生地がなんとも言えません。って精霊でしたね。あまりのおいしさにピザに集中しすぎました。えっと、拓哉さんの周りに有り得ない量の精霊がまとわり付いてるので、その精霊達が食べたのでしょう。正直、足りないよ〜と叫んでいます」
周りのエルフ達も、まだ食べたりない様子である。
「じゃあ、次は自分達で好きな具を乗せて作りますか?」
「はい!こんなおいしくて、みんなでワイワイ交換しながら食べられる料理初めてです。きっとお客さんも喜びますよ」
その後は、色んな食材を用意して思い思いのピザを作った。拓哉が作るピザには精霊が相変わらず群がり、拓哉は一切れしか口にできなかったのである。
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