異世界のんびり料理屋経営

第83話 閑話休題 のんびり露天風呂！

カキンガキンカキン

拓哉と小次郎が、稽古で剣を交えている。　マリーがお客さんとしてくるようになり、ポーションを買うことができるので、真剣で打ち合うことができるようになった。

拓哉は、少しでも体力をつける目的でスキルを一切使っていない。その為、時間が経つにつれて息を切らして防戦一方になる。

最後は、小次郎の一撃を受け止めきれず後ろに吹き飛ぶ。

「ぐはぁ...はぁはぁはぁはぁ。　師匠、手加減してくださいよ」

切り傷と服がボロボロになる拓哉。

「まだまだ先は長いようだな。　攻撃からの次の攻撃への一連の動作が遅い。それから、無駄な動作が多すぎる。　明日からはもっと厳しくするからな」

拓哉の悪い点を挙げる小次郎。　

「俺料理人なのに...師匠に弟子入りした過去の自分のバカさ加減が悔やまれるよ」

へたり込みながら下を向きぶつぶつとつぶやく拓哉。

「何か言ったか？　元気そうじゃないか？　まだやるか？」

聞こえていたのか！　追い討ちをかける言葉を投げかける小次郎。

「なにも言ってませんよ。それより、そろそろ風呂に入りましょう」

ここ最近、拓哉と周りの仲間達のテンションが1番上がったのが露天風呂である。　なんとバルトが魔境の森から天然温泉の湯を引いて露天風呂を作ってしまったのだ。　しかも、魔力を大量に含んでいる為、魔力回復や肌もいい。　そのせいか、気がついたら入浴をしているヴィクトリア。

「そうだな。　風呂に行くか。　拓哉、あれを忘れずに用意してくれ」

あれとは、日本酒のことである。　拓哉がこうするとおいしいですよと勧めたところどっぷりとハマってしまったのである。

「わかってますよ。　アイテムボックスに、ちゃんと入ってますから」

拓哉と小次郎は、露天風呂に向かう。

脱衣所で服を脱ぎ、カラカラと引き戸を開けて浴場に行く。　そこは、拓哉が注文した通り、日本の露天風呂に近い作りになっている。　立ち込める湯気は、いい香りがしてそれだけでも癒される空間を演出している。

「おっ！来よったか。　はよ、酒を出してくれんかのぅ」

バルトは、先に入浴をしていたらしく大好物の酒を求めてくる。

拓哉は、お酒を渡して小次郎と体を流す。

流し終わった2人は湯へと浸かる。

「ふぅ〜気持ちがいいですね。　バルトこんないい露天風呂を作ってくれて本当にありがとうな」

頭にタオルを乗せながらお礼を言う拓哉。

「気にせんでええ。ワシがしたいようにしとるだけじゃ。　自由に開発してええと言われるとなんでも作ってみたくなるじゃ」

豪快に笑いながら言うバルト。

「それにしても、今後はどうしていくんだ？　もうただの料理屋がある魔境とは言えないだろう？　何か考えがあるのか？」

肩を揉んだり腕を揉んだりしながら聞いてくる小次郎。

「そうですね。　正直、ここまでなるとは思っていなかったんですよ。　細々と料理屋を経営して生活していくつもりでしたから。　でも俺は、これからも料理人として料理屋を経営していくだけです。　代表とか柄じゃありませんし、みんな自由に生きてくれたらいいですよ」

上を見上げながら語る拓哉。

「確かに、代表とかになって料理を食えなくなるのはいかんな。　アレンが代表をすればいいんじゃないか？　元貴族だろ？」

「ぶっははは、あいつでええじゃろう。　人間にしては珍しく種族差別はせんし、教養もあるしのぅ」

アレンが残ってくれたらありがたいけど、事件が解決して貴族に返り咲く機会が訪れたら戻ってしまうだろうなと思う拓哉。

「どうなるかはわかりませんが、残ってくれたら嬉しいですね。　でもアレンさんの人生ですから無理強いはしないでおきましょう。　では、俺は朝食の支度があるので先に上がります。　あまり呑みすぎないようにしてくださいよ」

拓哉は、そう言って先に上がる。　浴場から脱衣所に行くとアレンさんが、どうしたものかと言う表情をしていた。

「すいません。　先程の話、聞こえていましたか？　あまり気にしないでください。　残ってくれたら嬉しいですが、アレンさんとご家族の人生ですし、今は家族の無事を祈りましょう」

「ありがとうございます」

それ以上、言葉にせず浴場へと向かったアレン。　浴場では、バルトと小次郎と一緒に笑い声が聞こえる。

それを聞いた拓哉は、心配いらないかと感じて服を着て外へ出る。

ちょうど、ヴィクトリアさんとマリーさんと居合わせる。

「あら、拓哉さんも入っていたのね。　今日の朝食はなにかしら楽しみだわ」

いやいや、旅館にきた客ですか？貴女は！と思う拓哉。

「おはようございます。　ここは天国ですね。　もう引っ越そうかと思うくらいです」

貴女も、何日宿に泊まってるんですか？もう引っ越したも同然ですよねと思う拓哉。

「おはようございます。　バルトが次から次に良いものを作るから、どんどん住みやすくなってますよ。　今日ですか？和食にしようかなと。　最近、肉系が多かったので、魚とかもいいかなと」

そう言うと、ヴィクトリアは目をキラキラさせる。

「いいわねいいわね。　早く行きましょう。　楽しみだわ」

早く作れと引っ張って行くヴィクトリア。

そこに、シャーリーとビーチェが来る。

「神獣様と他の皆様が戻られました。　早く来てください」

マルクス王国の遠征組が戻ったことを慌てて伝えに来てくれた2人。　果たして、無事に戻ってきたのか？拓哉は急いで遠征組の元へと向かうのだった。