第64話 お菓子とフリフリエプロンのおじさん!
店の前
綺麗なケーキ屋をイメージするようなお店である。 着いた時は、30名近く並んでいたが、やっとあと1組のとこまできた。
「凄い人気ですね。 出てくるお客さんも満足そうにしてますし、期待できますね」
「お父さん、本当に行きますか? 私的にあまりおすすめしないのですが...」
ラリサがあまり行きたくなさそうにしている。
「えっ!?どういうこと? ラリサは来たことがあるの?」
その返答を聞く前にセバスが話しかけてくる。
「拓哉様、次は私たちですよ。 さぁさぁ入りましょう」
あのお菓子で驚かせたいセバスは急かすように言う。
何故か、ラリサが落ち着かない様子だ。
店内を見渡すと少数のテーブルと椅子がある。あとはカウンターがあり、そこで購入して持ち帰るかここで食べるか選べるらしい。
お店の人が、近づいてきた。
「いらっしゃいま...え?ラリサ様ですか? 今日はどうされたのですか? 今すぐ、店長お呼びしますね」
「ちょっと、待ってください! 店長呼ばなくて...あ!行っちゃいましたか...」
ラリサが声をかけるも、女性店員が慌てて店の奥に行く。
店の奥から凄い音が聞こえたと思ったら、奥からフリフリのエプロンを付けたゴツいおっさん!?が出てきた。 一直線にラリサの方に走り出し抱きしめる。
「ラリサちゃ〜ん、来てくれたのね。 あれから顔も見せないからお姉さん心配しちゃったわよ。 あら!セバスに、そちらはお連れさんかしら。 それにしても、いいオ・ト・コがいるじゃない...ウフフ」
ラリサは、されるがまま抱きしめられて苦笑いを浮かべる。
オカマ店長に見つめられた拓哉は、悪寒が走りぶるっと震える。
「もう、ジュリアーナさん早く離してください。苦しいです。 それから、この人は私のお父さんでこっちがアニカこっちが桜花さんです。 お父さんを変な目で見ないでください」
ラリサが、必死になりながら言う。
「うふふ、あら、貴方が噂のお父様ね。 ラリサちゃんから色々聞いているわ。 それから、エルマーナ(マドレーヌ)のこと感謝しているのよ。 大盛況なのよ」
あ〜お菓子ってマドレーヌのことか!見事に広まったのね。 それにしても、ジュリアーナさんパンチ効いた人だな。 顔面の圧が凄い。
「そうだったのですね。 いや〜お役に立てたのならよかったです」
ジュリアーナが近づいてきて、拓哉に話しかける。
「是非、食べてほしいわ。 それに、エルマーナを参考に新しいお菓子も開発したのよ。 まだ販売前なんだけど試食していって」
そういうと、ジュリアーナが拓哉の腕を掴み引っ張って席まで案内する。 あまりの腕力に振り解けない拓哉。
「すぐ用意するわ。 飲み物は紅茶でいいかしら?」
みんなが頷く。 ジュリアーナは、腰をクネクネさせながら奥に行く。
「ふぅ〜ラリサ...あの人、凄い人だな!」
拓哉が疲れた表情で言う。
「悪い人ではないけど、スキンシップが凄くて大変です」
「それにしても、見事に広めてラリサよくやったな! それにしてもアニカと一緒に教えに行かなかったのか?」
「ヴィクトリアさんが、城下町の活性化に繋がるから知り合いに教えてもいい?って言われて許可をしたら、いつの間にか知れ渡って私が教えにいくことに...アニカは、勉学の時間がなくなるからってことで、アニカは今日初めて来ました」
「そうだったのか。 ヴィクトリアさんらしいな。 ラリサも時間なかった中、本当に頑張って偉いぞ」
頭を撫でながら褒める拓哉。 ラリサも、頬を赤らめて嬉しそうにする。
「拓哉様、ジュリアーナですが、元は第一部隊の将軍でして、長い軍歴の中で目覚めてしまったといいますか...それから、1年前に将軍を辞めて、お店を開くと言い残して城を去って行ったのです」
あ、そういうことか、男性が多い軍で目覚めたパターンか。
「納得しました。 先程の振り解けない腕力、只者ではないと思いましたが、そんな遍歴があったんですね」
何か後ろに気配を感じて振り返るとジュリアーナがいる。
「あら〜2人して私の事を話していたのかしら。 モテる女は辛いわね。 それからね...」
拓哉とセバスは隣同士で座っていたのだが、その間に顔を突っ込ませドスの効いた小声で、「あまり人の過去をぺちゃくちゃ話すなよ。殺されてぇのか!?」と言ってくるジュリアーナ。
次に、みんなに聞こえる声で
「拓哉さん、セバス〜私、か弱いかわいい女性よね?」
思わず恐怖から首を縦に振る2人。
「ウフフ、かわいい2人だこと。 それより、エルマーナと新しいお菓子よ。食べてみて」
何食わぬ顔で話すジュリアーナに、絶対逆らってはダメだと思う2人。
ビクビクしている2人には気づいていない3人は、エルマーナと新しいお菓子を食べる。
「あれ? ジュリアーナさんエルマーナの味変えましたか? ほのかに花のような香りと食べると爽やかな感じがします」
「よく気づいたわね。 ハチミツを入れたのよ。 より女性が好む味になったと思うわ」
「僕は、どっちも好きだよ。 バターが効いた方も濃厚でおいしいんだよ」
「新しいのアニカ好きなの。 外がサクサク中がふんわり柔らかくて、甘い味がいいの」
拓哉は、それを聞いてあれではないかと思い新しいお菓子を口に入れる。
「あ!これ! フィナンシェだな。 アーモンドの甘さに、焦がしたバターの香ばしい感じ...うまいな。 ジュリアーナさん、これよく見つけましたね」
まさかの、フィナンシェを自力で作り上げていたのだ。
「頑張って試行錯誤したのよ。 でも、拓哉さんはやっぱり知ってたみたいね。 悔しいわ」
「いやいや、自力で発見したのが凄いですよ。 それに、まだ誰も売り出してませんし、新しいお菓子を生み出したのはジュリアーナさんですよ。 あと、参考になればいいのですが、チーズや紅茶を練り込んでもおいしくなりますから試してみてください」
この人の努力は、本物だしこれからも新しい物を作り続けて人々を笑顔にするだろうと思いアドバイスをする。
「そう言って貰えると嬉しいわ。 それに、チーズに紅茶とは恐れいったわ。 まだまだ、試す価値のあることがいっぱいね。 色々勉強になったわ。 ありがとうね」
「これからも、おいしい物を作り続けてください。 それから、お土産にしたいので30個程包んでください」
「50個包んであげるわ。 もちろんお代はいらないわよ。 このお菓子を教えてもらってからお礼がしたかったのよ。 受け取ってくれるかしら?」
「では、有り難く頂いて帰ります」
外を見ると夕陽が射し、いい時間となっていたので、お土産を持ちながら帰宅したのだが、城に着くなりメイドさんや執事さんが、一斉に「おかえりなさいませ」とお出迎えをしてくれてすれ違う使用人全員から「ありがとうございました。 幸せな気持ちになりました」と言われた拓哉。
後々、セバスに聞くとキャラメルが、あまりにもおいしかったのが原因で、拓哉の株が勝手に上がったらしい。 残ったキャラメルも争奪戦になったようだ。 そんな喜ばれるならまた作ろうと思う拓哉であった。
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