第42話 骸骨様は常識人!?それとも変な骨!?

バルトと師匠が森から帰宅したと桜花が知らせにきた。


バルトと小次郎が厨房までくる。


「オリハルコンを手に入れてきたわい。 あと珍しいヒヒイロカネも出よった。 今日は刀とナイフを作るでのぅ。これから鍛治場にこもるわい。 すまんが冷えたビールを何本かと飯を作ってくれんか?」


え?ヒヒイロカネって日本で伝説になってる鉱石だよな!?こっちにもあるのか。 是非ヒヒイロカネの刀を見てみたい。


「おかえり、遅いから心配していたけど、2人が無事でよかったよ。先にビールは渡しておくよ。 飯は後で桜花に届けさせるから。 代金もその時に」


「すまんすまん。オリハルコン以外にも鉱石が色々あって、時間を忘れて掘っておったらこんな時間になってしまったわい。 ワシは鍛治場にこもるでのぅ。飯を頼んだぞい」


色々?どんだけ掘ってきたんだ! まぁバルトが楽しければいいか。


「俺もバルトと一緒に鍛治場に行ってくるから。 飯とキンキンに冷えたビールを頼む」


「え?師匠もですか。わかりました。ビールは渡しておきます。 料理は後で持って行きますね」


頷いて2人は鍛冶場に行った。


じゃあ今日は、お客さん少ないかもなと思う拓哉だった。


18時


「あ!もうこんな時間だ。 桜花、看板出しといて」


「うん」


看板を外に出しに行く桜花。


カランカラン!


「ヴァレリーさんいらっしゃいませ」


「今日は冷酒と適当につまみを頼む。 うむ?バルトと小次郎がおらんみたいだが...」


いつもの席に座りながら話すヴァレリー。


「鉱山で色々鉱石を入手したらしく、刀とナイフを作製してますね。 今日は外へ出ないと言ってましたよ」


「アハハハ。ドワーフらしいな、 酒と鍛治しか興味がないからな」


「まぁそのおかげで、道の舗装や武器やナイフ作ってくれますから助かってますよ。 ちょっと待ってください。作ってきますから」


拓哉は注文のおつまみを作りに厨房にいく。

程なくして完成したので桜花を呼ぶ。


「桜花、きてくれ」


「どうしたの?」


「これをヴァレリーさんのとこに持っていてくれ。 黄色いのがだし巻きで、こっちが明太子入りチヂミで、あとは冷酒な。 お盆から落とすなよ〜」


バルトと師匠用の料理を作るので、桜花に配膳を頼む拓哉。


「わかってるもん。 これくらいできるんだよ」


そう言いながら厨房を後にする桜花。


ちゃんと手伝いもできるし、桜花はいい子だな。 う〜ん...それにしても、なにを作ろうか? 冷たいものは、すぐぬるくなるし。 あ!スタミナ丼大盛りにするか!ビールにも合うしな。


大量のご飯とお肉を盛り付けていく拓哉。


「作ってみたが、直径30センチの器デカすぎたな。それにニンニク入れすぎたし鍛治場が大変なにおいになりそうだ。 まぁ作ってしまったものは仕方ないか」


拓哉はまだ知らなかった。 明日元気になった2人が地竜を越える大物を狩ることを...ちなみにニンニクは1つ丸ごと入れている。


ホールに戻る拓哉。


「ちょっと重いけど、これを2人に持って行って」


「わかったよ」と言って鍛治場に向かう桜花。


カランカラン


入れ替わる様にお客さんが入ってきた。


「いらっしゃいませ」


あ!久々のフェンリルだ。 後ろにだれか...骸骨?もしかして以前言ってたノーライフキングか!


「またきたよ。 今日はね〜前言ってたノーライフキングも連れてきたんだ。 おいしい料理食べさせてね」


以前と変わらずフランクなフェンリルだなと思う拓哉。


「初めまして。ノーライフキングさん。俺はここで店主の拓哉です。よろしくお願いします。 そう言えばフェンリルさんにも、名前名乗ってなかったですね。すいませんでした」


見た目は聖職者のような衣装をきているが、顔が骸骨だからか、凄い怖いノーライフキング。 でも拓哉は平常運転である。


「これはこれはご丁寧なご挨拶ありがとうございます。 フェンリルからここで料理屋をしてる人間がいると聞いた時は、揶揄(からか)われているかと思いましたよ。 それと拓哉さん、私達は名乗れる名前がないんですよ。 フェンリルは名付ける習慣もないですし、私に至っては、今やただの骨ですからね。適当に呼んでください」


カタカタ骨を鳴らしながら笑うノーライフキング。

凄い気さくだけど、骨カタカタ鳴らすのやめて怖いから。


「では、フェンリルはフェンさんでノーライフキングさんはボーンさんで如何でしょうか?」


「フェンリルのフェンはわかりますが、何故私はボーンなのでしょう?」


「私の生まれた所では、骨をボーンと呼んでまして。 ダメでしょうか?」


流石に安直過ぎたかな?


「ボーンボーン!?素晴らしい!骨の私にピッタリですね。 拓哉さん、行きますよ! 骨だけにボーン」


ちょっ!いきなり骨を飛ばすな〜!あぶね〜。 ダジャレにもなってないし、おもしろくないわ。 急に骨飛ばして恐怖しかないぞ。


「いきなり何してるんですか!危ないですよ。 その骨どうなっているんですか!!」


カタカタ鳴らしながら笑うノーライフキング。


「申し訳ございません。 久しぶりに人間と話せたことと、名前を頂きましたから興奮してしまいました」


仕方ないけど骨飛ばすのやめてねと思う拓哉。 


骨は知らず知らずのうちに、ノーライフキングに吸収されて元の位置に戻っていた。


「拓哉ありがとうね。 僕にも名前を付けてくれて。早速だけど、ビールと暑い時期に食べられそうな料理をお願い」


「わかりました。お席に座ってお待ちください」


カランカラン!


桜花が戻ってきた。


「おかえり。 帰ってきて早々悪いけど、桜花ビールを出してもらっていい?」


「うん。わかったよ。 お客さんいらっしゃい」


早くも慣れた感じで対応する桜花。 拓哉は厨房に向かう。


ノーライフキング・フェンリル・魔王の会話


「ノーライフキングにフェンリル...いや、今はフェンにボーンか久しいな。 最近見なかったが、どこか行っていたのか?」


ヴァレリーが2人に話しかける。


「私は、部屋にこもって新しい魔法の研究をしてましたね。 フェンは、人間の街を見に行っていたそうですよ」


ノーライフキングが言う。


「そうなんだよね。 ここの料理が美味しかったから、人間の料理スキルが上がったのかと行ってみたけど、全然ダメだったね。 拓哉程の料理人は1人もいなかった」


そこにビールを持ってくる桜花。


「お待たせ。 生ビール3つだよ」


みんながありがとうと桜花に言う。


「では、久しぶりの再会を祝って乾杯」


ヴァレリーが音頭を取り、みんなと乾杯をする。


「ぷはぁ〜これこれ。街の温いエールとは大違いだね」


「ほほぉ〜これはフェンが言うだけのことはありますね〜疲れた骨に沁みますよ」


なんでも骨基準なノーライフキング。


「本当にここの酒と料理はうまいからな。 ボーンも料理を堪能していくがいい。 ぷはぁ〜キンキンのビール最高だ」


ヴァレリーが上機嫌に言う。


そんな感じで盛り上がっていると、拓哉が厨房から料理を運んできた。


「お待たせしました。 皆さんお知り合いだったのですね。 今日の料理は、冷やし中華です。 暑い日にピッタリですよ。 お好みでマヨネーズかけてください」


暑い季節は、"冷やし中華始めました"の文字を見ると食べたくなるんだよな。 それを思い出しての冷やし中華だ。


「見たことない料理だね。 見た感じ麺と乗ってる具材と一緒に食べる感じかな?」


「私も見たことがありませんね。 それにしても美しい料理ですね。斬新な美しさがありますよ。 フェンそろそろ頂きましょうか?」


2人は同時に口に含む。


ズルズルモグモグモグモグ!


「燻製!?に似たお肉(ハム)と麺をスープに絡めたらさっぱりしてるけど、肉の味もあるし、おいしい! どんどん食べれちゃうね」


「このシャキシャキした野菜(きゅうり)との相性もいいですね。 酢の酸味が食欲を掻き立てますね。見た目も味もいいです」


「次はこのまよねーずだっけ?かけてみよ。ん〜これ凄いよ!ボーン早くかけて食べてみて」


フェンリルがはしゃぎながら言う。


「そんなにですか? ほほぉ〜ほんのり酸味があり、こってりまろやかな風味が何故かこの卵と麺に凄く合います。 そのまま食べるのもいいですが、まよねーずをかけたらよりおいしいですね」


マヨネーズは、かける派かけない派に別れるけど、味変にはもってこいだからなと思う拓哉。 次は胡麻ダレで作ってみるか。


それよりボーンさんはどこで消化されるのだろう? 謎過ぎる。


「拓哉おかわりね」 「私にもおかわりをお願いします」


2人がおかわりを注文する。


「すまんが、俺にももらえないか?」


ヴァレリーが、うまそうに食べる2人を見て注文してくる。


「わかりました。 皆さん待ってください。 桜花の賄いも作ってくるから席に座っといて」


「やった〜僕も冷やし中華食べたかったんだよ」


今日も憩い亭は、新たなお客さんと常連さんで盛り上がるのだった。

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