第24話 (前編) 再びエルフと新たなエルフ!

妖精が帰ってから4日が経った。

拓哉が4日間のことを回想する。

毎日のように開店前からヴァレリーさんがきてくれて、昨日が初めてラリサに魔法の稽古をつける日だった。 丹田(お腹のへそ付近)にある魔力を探ることから始めたらしい。俺は魔法のことが全くわからないので、全てヴァレリーさんに任せている。

アニカも鍛えたいらしく、毎朝俺と一緒に家の周りを走ったりしているが、普通について来るので6歳児の体力ではないことに驚いた。

しかしお客さんは、4日間ヴァレリーさんだけで...本当に悲しい。


19時


いつものように、ヴァレリーさんが開店直後からナポリタンを食べて、満足したのか今は日本酒とキマイラのたたきで晩酌をしている。


カランカラン


「「「いらっしゃいませ」」」

3人で出迎える。


ドアが開いた先には、初日に来店されたエルフのリーリヤさんが居た。その後ろから、もう1人絶世の美女と言ってもいいエルフの女性がいた。リーリヤさんとは違う綺麗系で、この人の方が年上だと思う。しかもデカい...2つのメロンが、たわわに実っているのだ。リーリヤさんは言わずもがなだ。言った瞬間、血の雨が降る予感がする。


拓哉が言う。

「リーリヤさんお久しぶりです。お元気そうでよかったです」


リーリヤが言う。

「拓哉久しぶりね。また拓哉の料理が食べたくなってきちゃったのよ。あとは横にいるサリアなんだけど、ここで前食べたハンバーグの話をしたら行きたいって言って。なにか聞きたいことがあるみたいよ」


サリアが話しだす。

「拓哉さんよろしくお願いします。私はエルフの国で、ラザニアのお店をしてるサリアと言います。まず初めにお聞きしたいのは、ラザニア ピザ グラタン わしょく カレーライスは作れますか?」


いきなりこちらにないはずの料理名を言われて驚く拓哉。


「えぇっと、改めまして拓哉です。今あそこにいる魔族といるのが、娘のラリサで私の横にいるのが娘のアニカです。正直こちらの世界にない料理名が出て焦りました。確かに、私は全て作れますが、どこで知ったのか教えてもらう事はできますか?」


自分以外に転移した人がいるなら純粋に知りたいので聞く。


サリアが言う。

「ちょっと待ってください!?もしかしてヴァレリーさん!?貴方はまだ子供でしたけど、私は茂三さんのお店に通ってたサリアです。覚えてますか?あんな小さかったのに立派になりましたね」


ヴァレリーが答える。

「おぉ〜誰かと思えば、サリアではないか?茂三が死んでからだから300年振りか!まさかこんなとこで再会するとはのぅ」


サリアとヴァレリー以外は置いてけぼりを食らっている。


「葬儀以来ですもの久しぶりですよ。これは時が巡るというやつでしょうか。あ!他の皆様申し訳ございませんでした。まずは、ラリサちゃんとアニカちゃんよろしくお願いします。先程は急にヴァレリーさんと話し出してごめんなさい。300年前に火乃国で40年くらい料理屋をしてた茂三さんて人がいたのですが、私とヴァレリーさんの父とヴァレリーさんは、常連だったのです。久しぶりに再会したものだからつい」


300年前、火乃国に素晴らしい料理人がいたことを知る拓哉。


名前からして同じ日本人だよな。だから火乃国は和食文化があるのか。一度でいいから同じ料理人として、茂三さんの料理食べてみたかったなと思う拓哉。


「ラリサです。よろしくお願いします」


「アニカだよ。よろしくなの」


2人も改めて挨拶をする。リーリヤも2人に挨拶をしている。


「一応どのような経緯があったかわかりました。それで、私に聞きたいこととはなんでしょうか?」


サリアが、何を知りたいのか聞く拓哉。


「色々話しが脱線してしまってごめんなさい。300年間、私はラザニアのお店をしてきました。エルフの国では、私しかラザニアを作れないので繁盛はしています。グラタンも試行錯誤して作れるようになりました。ですが、他の料理もお客様に食べて頂きたくて虫がいい話だとは思いますが、何かレシピを教えては頂けませんか?」


いきなり言われて困惑する拓哉。だが料理人として新たな料理を求めるのはわかる。しかもサリアさんはこの世界ではなく、地球の料理に魅入られた人なのだと思う。

教えるのはいいけど、まずは料理スキルを見てからだな。俺が納得できるなら、あれを教えよう。


「レシピを教えるには、条件があります。サリアさんのラザニアを、私に食べさせてください。ここの厨房も食材も使って頂いて構いません。設備が違うと思うので説明はします。サリアさんのラザニアを食べて、教えるに足る人物ならば、ラザニアに似た料理ドリアを教えます」


偉そうではあるが下手な料理人、ましてや料理に対する愛情がない人物には教えたくない拓哉。少し迷っていたサリアだったが、拓哉の求めることを瞬時に理解して承諾する。


「わかりました。私がこれまでやってきたことを全てぶつけたいと思います」


「そうですか。では厨房に行きましょうか。あ!そうだ出来上がったら、ヴァレリーさん リーリヤさん ラリサ アニカも一緒に試食しましょう」


「おう!試食なら任せてもらおう」「サリアのラザニアおいしいから楽しみよ」「凄く楽しみですね」「アニカもいっぱい食べるの」


それぞれ返事をする。


厨房に2人で向かい、設備の使い方を教えて必要な材料を用意し、拓哉は離れたところから調理風景を見させてもらうのだった。

サリアは慣れない厨房で、額に汗を滲ませながら作っているが、流石300年作り続けただけあり手際はスムーズで、すぐに設備にも慣れ5人前を作るのだった。


「拓哉さんお待たせ致しました。ラザニア5人前です」


拓哉は出来上がったラザニアに目を奪われた。綺麗な仕上がりは当たり前なのだが、チーズの焦げ目から何から何まで、5人前全てがクローンかのようにそっくりなのである。

正直、出来上がりに称賛するのだった。


「運ぶの手伝いますし、みんなのとこに行きましょうか」


はい!と大きく返事をするサリア。


「みんなお待たせしました。サリアさんのラザニアできましたよ。食べましょうか」

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