恋路の決断その2

 Side 朝倉 梨子


 パトロールタイム。


 空中を飛び回り、辺りを探索する。


 周りには本野 真清、愛坂 マナの二人もいる。


 私はアインブラッド・ガンナー。


 マナはアインブラッド・セイバー。


 真清はアインネクスト。


 何時も通りである。


 最近は暇さえあれば本音をぶつけ合ってのシュミレーターに付き合っている。

 逆の立場なら私も同じような事してたんだろうなとつくづく思う。


『あ~あ。いい人見つかるかな~』


『マナってば最近そればっかりね』


 マナの呟きに真清はそう返すが『でも~』とマナは続ける。


『私だって頑張って探してるけど、何だかんだで私達戦果挙げすぎて恐れられてるのよね――』 


 ハァと溜息をついて真清は心中吐露した。


『あ~確かに。竹宮高校の木里君達もそんな感じなのよね』


 マナの言う通り木里 翔太郎達もそんな感じだ。

 かく言う私もそんな感じだったし。 

 

『で? さっきから黙ってるけど、やっぱ申し訳ない気持ちとかあるわけ?』


 と、真清に言われて――


『あるに決まってるでしょ。どれだけ吹っ切ろうとしても中々ね』


 私は本音を出す事にした。


『はあ・・・・・・相手を見つければいいんだけどね。何かこう、寂しさを埋めるために恋するのって何か違うような気がするのよね』


『真清の言う通りで中々ね。ステキな人いないかな~」


 などと言い合いながらパトロールする。


 やはりと言うか、アレだけの事をしたのにまだ私達は色々と吹っ切れてない感じがする。 


 逆に言えば真清が言うようにそれだけ本気で好きだったのだ。


 だけどこのままではいけないなとも私は思った。


(そうだ――)


 そこでふと私は近々行われる大規模模擬戦を利用する事を思いついた。

 




 Side 木里 翔太郎


 レクリエーションがてらに大規模模擬戦が開催される事になった。


 まあ練度向上や士気向上のためもあるけどお祭りムードである。


 五人一組でのフラッグ戦。

 フラッグを所持している機体をやられたらアウトと言う戦いだ。


 また何時も使っている機体などは諸事情で禁止で何時ぞや見たいに鹵獲されていたり他の部隊で使われている機体、アインブラスターも禁止となった。


 そして竹宮高校チームと比良坂学園チームとで別れてやる事になり。


 竹宮高校チーム――つまり自分達はと言うと。


 木里 翔太郎 クリーガーⅢ


 手毬 サエ ネイキッドローダー 


 豊穣院 ミホ ネイキッドローダー


 牛島 ミク ネイキッドローダー


 和泉 ツカサ 富嶽


 の五人になった。


 相川 タツヤは豊穣院さんに頼まれて交代と言う形になった。


 シュミレーターを使い、舞台は市街地。


 フラッグはお互い秘密の状態でやるが直ぐに分かるように目視されたらデーターに表示されるようになっている。


 大勢の観客がモニターに集まる中。

 学校対抗の模擬戦が始まった。





 Side 荒木 将一


 此方側は自分を筆頭に


 荒木 将一 零戦二型


 加々美 瞬 零戦二型


 朝倉 梨子 ネイキッドローダー


 愛坂 マナ ネイキッドローダー


 本野 真清 ネイキッドローダー

  

 と言う組み合わせになった。


 梨子やマナ、真清の組み合わせは最近起きた出来事なので不安ではあるが本人達も気にしているらしく、三人一組出動となった。


 俺と瞬は実質三人の補佐役と言う立ち回りになるだろう。




 

 Side 木里 翔太郎


 俺と手毬を中心にフォーメーションを組んで戦い、他の味方で連携を行いながら戦うと言うのが自分達のやり方だ。


 だが今回はフラッグ戦で機体も何時もと違うので勝手が違う。


 それに此方の手も彼方に読まれている。


 ヘタに戦力を分散させてどうこうするとダメなのでここは――


「私達で行くわよ!!」

 

 手毬が二人に呼びかけ、


「分かりました!」


「行けますサエさん!」 

 

 牛島さん、豊穣院さんが応じる。


 対する相手も朝倉 梨子、愛坂 マナ、本野 真清の三人がぶつかる。


 ネイキッドローダー・・・・・・頭の悪いラノベに出てきそうなメカ娘。

 それも各チームの美少女がぶつかり合うまさかの展開になった。





 Side 荒木 将一


 完全に衆人観衆の目線は 美女同士の戦いに目が行っている状況だ。

 それをサポートするように援護射撃を入れる。


 相手チームの男性陣二人も同じ考えだ。


 何というか、こう、邪魔をしてはいけないような気がして。


 女性陣に白い目で見られそうだが男性陣の目も恐いんじゃよ。


 それに彼女達も――


「ちゃんと将一と上手く行ってるんでしょうね!?」


「じゃないと承知しないんだから!」


 真清とマナの二人が明るい調子で問いかけ、


「ううん! なんか二人を振った事、まだ気にしてっぽい!」


 梨子がそう答え――


『ってそれ今言うこと!?』


 これ皆見てるんだけど!?

 不特定多数の大勢が!?


「「「今じゃないとダメなの!!」」」


 ピシャリと三人から同じ返事が返ってきた。

 あの、これ模擬戦ですよね?


 なんか激しい撃ち合いしながらガールズトークで盛り上がってるんですけど。


『世の中ギャルゲーのよういには行かないわよね・・・・・人間早々そんな割り切れる方がおかしいんだからちゃんと見守ってやんなさい』


 と、ビームライフル撃ちながら相手チームの手毬 サエさんが三人を聡すように語りかける。


 そして通信で語りかけてきた。


『ほら、アンタも――三人とも覚悟見せたんだからアンタも男見せなさい』


『え? 今?』


『うん、今』


 と、手毬さんに促されて度胸を出す事になった。


 なんだこの空気?


 戦闘がピタリと止んだ。


 視線が俺に集中し、そしてシュミレーター外からもコールが鳴り響く。


 俺は耐えきれず――


『あーもう!!』 


 と叫んで。


『俺は朝倉 梨子が好きだぁああああああああああああああああああああ!!』


 踏ん切りを付けるように叫んだ。


『マナさん、真清さんもこんな俺を愛してくれてありがとうございました!! 本音を正直に言うと三人と添い遂げたかったです!! でも、この先の事とか産まれてくる子供とかの事を考えたらダメだと思いました!!』


 そして一旦息を整え直して――


『梨子を選んだのは悩んで悩んで悩んだ末に出した結論です!! 正直言うと、どうして梨子なのか問われても困ります! それぐらいにマナも真清さんの事も同じぐらい大好きでした!』


 自分の想いを正直に、あの日の決断を出した覚悟を思い出すように泣きながら、

 

『でも梨子さんを選びました! 選んでしまいました! 理屈とかじゃないんです! マナと真清も積極的にアプローチしてきましたけど、心が惹かれたのは梨子さんなんです!』


 そして改めて問いかける。


『だから言います!! こんな自分でも愛してくれますか!? 梨子さん!!』


 シュミレーターが強制終了され、マシンから出ると拍手喝采で迎えられ、そして梨子が涙を流しながら抱きついて俺達はキスをした。





 Side 手毬 サエ


 望んだ形ではなかったけど、模擬戦は大円談で終わったわね。


 将一も本当に悩んで悩んで出した結論なんだと思う。


 そう思うと涙を流していた。


 これはこれでレクリエーションになったわね。

  

「なあ手毬――いやサエ」


「・・・・・・私をサエって呼ぶ事は、決めたのね。覚悟を・・・・・・」


「あんなもん見せられたら俺も腹を括るしかないだろう」


「いいの? 私で」

 

 強引に唇を塞がれた。

 また一層拍手が鳴り響くが、周りの目なんてどうでもいい。

 ただただ嬉しかった。


 ロクでもない目に遭ってきたけど、生きててよかった。

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