僕たちは恋人を寝取られたくない!~次に寝取られたら女の子になっちゃう呪いにかかった彼氏と、そんな彼氏が実は美女を引き付ける異能持ちだと知って頭を抱える彼女の物語~

タカテン

第1章:戸惑い気分、ワクワク気分

第1話:分からない

 それは偶然か。

 それとも必然だったのか。


 昼間の喧騒がウソのように静まり返った夜中の大学キャンパスを、穂崎渚ほさき・なぎさは足取り軽く歩いていた。

 手には自販機で買ったホットカフェオレと甘酒。

 目指すは美術研究室美研


 美研は講義棟から離れた、敷地の端にある。

 四月とは言えまだまだ冷え込む深夜の星空の下、わざわざそこまで赴くのは関係者か。

 ――あるいは関係者と特別な関係のある者ぐらいだろう。


 渚が美研の女の子と付き合い始めたのは、ちょうど一ヵ月ぐらい前のことだった。

 コンパで知り合い、意気投合した。

 渚は書道研究室書研に属しているので、芸術肌同士で気が合ったのだ。

 

 それからはお互いの研究室に赴いては、それぞれの作品を前にして活発な意見交換を――そして、今日みたいに夜遅くで誰もいない時には密かに身体を重ね合わせていた。


 もっとも今日の渚はそういうのを求めていない。

 風邪気味だった。

 彼女も同様だった。


 だから今日は夜の活動(作品制作のことである。他意はない)はやめて、家に帰って早く寝ようと一緒に大学を出たのに、ふと深夜に創作意欲が沸き出てきて大学に来てみれば、遠くにある美研のアトリエから光が漏れている。


 きっと彼女も自分と同じ理由だろう。

 そう思うと渚は嬉しくなって、自分の分の甘酒とは別に、彼女がいつも飲んでいるカフェオレも買って美研へとやってきたのだ。


 そして渚は見てしまった。

 窓の外から中の様子を。

 服を脱がされた彼女が床に押し倒され、見知らぬ男に抱かれているところを。

 

 信じられなかった。

 信じたくなかった。

 もしかしたら無理矢理されているんだろうか、と思った。

 だけどすぐ、そうじゃないことに気付いた。


 彼女の浮かべる恍惚とした表情が。

 外にも漏れ聞こえてくる艶めかしい声が。

 男の動きに合わせて揺れる裸体が。

 渚しか知らないはずのそれらが、冷酷に現実を告げてくる。

 

 なんで?

 どうして?

 呆然として後ずさり、渚は両手の缶を地面へ落とす。

 その事にも気付かないぐらい、渚は動揺していた。


 頭の中はひたすら「どうして?」「なんで?」の二文字を繰り返していた。


 

 

 渚には分からない。

 昼間まであんなに仲が良かった彼女が、自分の知らなかったところで別の男に抱かれている理由が。

 

 渚には分からない。

 大学に入って約一年、その間に付き合った女の子たちを悉く他の寝取られてしまうその理由が。


 分からない。分からない。分からない……


 きっと幾度もの寝取られを経験して、渚の頭は破壊されているに違いなかった。




 ――作者より――


 第一話をお読みいただき、ありがとうございます。

 またしても恋人を寝取られてしまった渚君、どうしていつもそんなことになってしまうのか?

 興味を持っていただけましたら、是非小説をフォローしてくださいね。

 よろしくお願いいたします。

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