第115話 ルナとテイミング1【アリソン視点】

 初日にしたのは、なるべくルナと一緒にいるということ。それに観察すること。ルナはいつもは地面に突っ伏してぐったりしている。闇の魔力がアニミウムのベルトの近くから漏れ出している。頭をなでると少しだけ気分が落ち着くのか、ルナは体の緊張を解く。

 

 それから一週間毎日ルナのそばにいたけれど、どうやってテイミングしていけばいいのがわからなかった。と言うより、この子の体調がよくなければテイミングなんてできないんじゃないかとおもう。


 コルネリアはふらふらと暇そうにしていて、アリソンは少し申し訳なかった。


「ごめんね、コルネリア。私のわがままのせいで」

「気にしてねえよ。……それよりさ、なんか前より魔力が増えてる感じがしないか? いや、微々たるものなんだが」

「魔力が増えてる?」


 アリソンは首をかしげて、ルナをなでる手を離した。コルネリアは気づいたようにうなずく。


「ああ、そいつのせいか。なでてる間は魔力が流れ込んでくるのかもな。ニコラに触れられたときみたいに」


 それって……。


 アリソンはじっとルナを見た。たぶん、辛さを紛らわすために、ずっとなでているアリソンに魔力を送っているんだ。テイミングができたわけじゃない。意思の疎通はまだできない。でも……。


「ねえルナ。私にもっと魔力を流していいよ!」


 なんとか伝えようとアリソンは必死だった。今は多分この子からあふれている魔力が体に流れ込んでいるくらいなのだと思う。ちょうどアニミウムのブレスレットをつけたニコラのそばにいたときのように。もしもこの子が意思を持って魔力を流してくれたら、もっと効率的にこの子の魔力を減らせる。つまり、症状を改善できる。


 しかし、ルナはアリソンの言っていることなどわかるはずもなく、また地面に突っ伏してしまった。


「このままじゃだめ。なんとかしないと」


 アリソンは建物から駆け出した。テディを見つけるとすぐに尋ねた。


「魔力のコミュニケーションで『魔力を流していい』ってどうやって伝えればいいの?」

「はあ?」


 テディは首をかしげていた。アリソンがことの経緯を説明すると彼は考え込んでしまう。


「いや、そんなことなんか伝えたことないからな。ビーに頼んでみたらどうだ」

「あ」


 言われてアリソンは改めてビーがテレパシーで話していたのを思い出した。と言うよりそれが自然になってしまっていたので完全に忘れていた。


「忘れてただろ、アリソン」


 コルネリアが少し馬鹿にしたように言った。






 ビーの元に向かうと彼女は部屋でゴロゴロしている。この城の人々に毎日貢ぎ物をされて部屋はまるで祭壇のようになっている。まあ吉兆だからそうなるのも当然かもしれない。


『毎日挨拶されて堅苦しいったらないわ』


 そんなビーにアリソンはルナのことを話した。彼女は二つ返事で了承した。


「ありがとう。本当にいいの?」

『だってここをでる口実がないとなかなか出してくれないから!』


 敬われてれるのもいいが、監禁されるのは嫌だな。

 ビーは窓枠に足をのせた。


『場所はわかってるから空を飛んでリフレッシュしてから向かうわ』


 そう言って彼女は飛び出した。これができるならすぐに飛んでいってしまっても良さそうだけど彼女はけっこう律儀な性格なんだなと改めて思った。


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次回は火曜日更新です。

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