攻略レベル1「幼馴染」終幕
【グロ注意】
※グロが苦手な方はお次の”攻略レベル1「幼馴染」終幕 グロなしver”をお読みください。
数ヶ月前、俺はとある8階建て商業ビルの屋上から飛び降り自殺をした。理由は目の前で次々と大事な人が果てていく姿を目撃し、心に深い傷を負ったからだ。
正直死ぬのが怖いとかそういう感情はなかった。ただただこの世界から消えてなくなりたい、いっそ俺という存在が無かったことになればいい。そんなことを胸に抱きながら俺は命を捨てた。
でも、それは第2の人生のきっかけに過ぎなかったんだ。
———ようこそ桐谷京太、死後の世界へ。
その時はただ唖然と奴を見上げてた。黒いロングコートを羽織り、深々と被られたフードによって顔が隠れていたその男は、初対面の僕に向かってこう言い放った。
———復讐がしたいか?
そいつは俺について何も聞かず、それだけを尋ねてきた。
———力を与えてやる。貴様にうってつけな奴をな。
初めて見せたそいつの手は骨だった。ゲームでよく見るスケルトンのような。その手に宿った紫色の光は俺の元へフワフワと飛んでくると、静かに俺の胸に吸い込まれていった。
———その力は”死生回帰”俗に言う死に戻りの力だ。貴様が死ぬ限り延々と世界をループする。
事情を知っていたそいつは、俺の人生の破滅を迎える一年前に死に戻らせてやると言った。詩織と出会う一年前に。
だが俺は死神の行動を静止させた。ただ死に戻るだけでは同じことを繰り返すと思ったからだ。
やるなら徹底的に俺の復讐を実現させる。そう思った俺は即座に考えついた案を死神に提案した。
———つまり貴様の彼女が寝取られた原因を、そして情報を入手したいから。一度貴様が生きていた世界に死に戻ると?
死神は不思議そうな顔でそう尋ねてきたが、初回特典サービスということで許可してくれた。
あの世界に俺が生きる理由がないとしても、一年前の世界に戻る前に俺が復讐すべき相手を把握しておきたかった。
死神の力を利用して再びあの世界に戻った俺がしたことは、目の前で彼女を犯した元凶。安藤武光の始末だった。
闇の力を得ていないただの人間である俺がしたことは、家にいる奴を宅急便を装って近づき包丁で頸動脈を切った。
この後すぐ再び俺は自殺して一年前の世界に死に戻るわけだから警察とか一切関係ない。
奴の部屋の机に置かれた開きっぱなしのスマホを直前まで電話していた者の名前とそいつらに関する簡易な情報全てを脳に記憶させ、安藤を殺した包丁で自身の命を絶った。
「そして今俺はこの世界にいるというわけだ」
「なるほどね。足りない頭なりにも考えていたことがあったということかしら」
いちいち言葉に棘があるなコイツ。
「ただ気になる点が一つあるわ。何故まだ彼女と出会ってすらいない一年前に死に戻ったの?せめて付き合ってからでもいいと思うのだけれど」
「理由は2つある。1つは彼女と出会う前に俺自身が強くなりたいからだ。今回のように傀儡を死神に与えて、ひたすらdpを溜めてな」
「懸命な判断ね、今の貴方じゃ並の格闘技集団にも敗北しそうだもの。それで最後の理由はなに?」
「俺の彼女、望月詩織と出会う前に。この一件関わっていた人間全てをこの世から排除するためだ。それが直接的でも間接的でも関係ない。俺の理想卿を邪魔する因子は全員な」
一瞬の戦慄が夜風と共にこの場を駆ける。その言葉にルナでさえ息を飲むことがやっとだった。
「それは随分と私情が入っているわね」
「私情で結構。メンヘラと呼ばれようとも、病んでると言われようとも俺はそれら全てを肯定してやる」
あの液晶画面に刻まれたの13名の名前。俺は今でもしっかり脳裏に焼き付いている。
「だからこそ俺は今回の依頼を引き受けたんだ。あいつと直前まで連絡を取り合っていた人間、桜坂綾乃を知るために‥‥最悪殺すためにな」
「望月詩織が寝取られるまでにあの女が関わっていたと」
「さぁな。あいつのLIMEが見れたら何か分かったかもしれないが鍵が掛かっていて無理だった。ただ奴と関わりがあると言うなら、それだけで俺は奴を殺す理由になる」
「ほんとに溜まったものじゃないわね。この狂人」
それだけ彼女は言い残すとルナはこの場から姿を消した。
「何をやっているんだ?お前」
ルナと別れてから俺はすぐに地上に降り立ってレストランへと向かった。
室内は特に血が飛んでいるとかの惨状は広がっておらず、椅子や机が散らばっている程度だった。
ウサギの無駄のない仕事に賞賛を送りたいところだが、目の前の光景を見てそれは取り消しとなった。
「ハデス様に申し上げられた通り、鎮魂歌を弾いているのです。知りませんか?これはモーツァルト作曲、レクイエムのニ短調です。幼い頃からピアノは習っていたのでなんとか弾けました」
困ったな‥‥これは誉めてあげるべきなのだろうが、鎮魂歌を比喩ではなく直接的受け取ってしまったウサギに何を言えばいい?
目をキラキラさせてこちらに「どうでしょう!」と言いたげにこちらを見ているが‥‥
「この場に
「えへへ」
取り敢えず誉めたら懐いてくれた。とりあえずよかった。
「さて山崎。随分と勝手な真似をしてくれたな」
「ハ、ハデスさん‥‥」
桜坂の膝下でダウンしている山崎を睨みつける。
「死んでいたら取り返しがつかない。それは貴様との契約前に何度も警告したことだ」
「わ、わかってました。でも————ッ!」
「でもはない。死んだら次はないだろうが」
そう言うと山崎は飼い慣らされた犬のように大人しくなった。桜坂にも目をやると頭をペコリと下げ、山崎の許しを乞いた。
「さてと死んだ奴らは———————」
「あの、ハデスさん」
思考を巡らせていると、桜坂の声によって中断される。彼女は山崎を入り口のドアに寄りかからせてると、俺の元へ近寄った。
「どうした?」
「貴方は一体何者なんですか?状況が状況だったので聞けませんでしたが‥‥それにあの‥‥ウサギちゃん?でしたっけ?あの子のことも‥‥‥」
「それは今貴様がすることではない」
「え?」
俺と桜坂の話が続く中、ウサギはピアノ椅子から降りると山崎の手当てに移るため彼の元に急いで駆け寄った。
「状況が状況か‥‥それが演劇のことを指しているのであれば、まだ物語は終わりを迎えてはいない」
「それって——————」
それは桜坂はとって突然の出来事だった。すぐ隣でウサギさんが彼女の真横を通り過ぎたその瞬間、奥の木製カウンターが激しい崩壊音を立てながら隆起したのだ。
一瞬でも何事なのか把握できなかったのが運の尽き。頭から血を流し、呼吸を荒げながら満身創痍でこちらに駆けてきたのは食事用テーブルナイフを握った伊藤弘樹だった。
「綾乃ぉぉぉおおおおお!!!!」
刃の矛先が彼女であると宣言される。
咄嗟の判断で体を起き上がらせようとした山崎はウサギによって上半身を押さえつけられ、彼女の身代わりになる未来を途絶えさせられた。
「————だめだ‥‥綾乃さあぁぁぁあん!!!
その瞬間彼女は悟った。これが彼を裏切った罰なのだと。自分勝手に未来を妄想し、山崎真也を巻き込んだ私への宿命なのだと。
凶刃が迫り来る中、私は命乞いをするのでもなく。恐怖で絶叫するでもなく。そんな中私がした行動は——————
「今は、違うな」
「え————————」
一瞬の判断。彼は
コイツはまだ見ぬ敵を誘き寄せるための
彼女の首にナイフが刺さる寸前で俺は綾乃を胸は抱き寄せると、自らの手のひらに突き刺した。
「なっ———!!」
そして流れるような行動で俺は残った片手で奴の頬に拳を撃ち抜くと、店の壁を貫通させながら伊藤を外に追い出す。
「お前達はここにいろ!俺が行く」
突き刺さったナイフを抜き、傷口を塞げると邪悪な笑みを浮かべてハデスは向かう。
それだけ言い放って俺はその場から飛び跳ね、奴が吹き飛んだ場所まで移動する。
「ハァハァハァハァハァ——————ッ」
「意識があるか、大した奴め。サッカー部キャプテンのフィジカルは伊達じゃないということか」
首元を掴み上げ、壁に貼り付けるようにすると奴に自身の生力を移した。
「喋れるくらいまで回復したはずだ。俺がわかるか?」
「あんたら‥‥一体何なんだよ!」
「俺からしたら、どうやったらお前みたいな家畜が人の腹の中から産まれてくるのか聞きたいところだ」
「そんなこと言われ—————お、おいお前ら!!俺を助けろ!!ここだ!ここ!」
するとぞろぞろとこちらに歩いてきたのは先程テーブルを囲んでいたコイツの仲間だった。
「へ!ざまぁ!今からお前を俺たちでリンチにしてやんよ!!」
「死にかけてもまだその台詞が吐けるか。これは今日のエンディングも期待できるな」
今の言葉を聞いていたかはさておき、仲間が俺のすぐ背後まで迫っていた。
「とりまコイツしばけ!そしたら俺も一緒に———」
「抑えろ」
「かしこまりました。ご主人様」
伊藤の命令を無視すると、4人の仲間は伊藤は俺の代わりに取り押さえた。
「は?お前ら何やってんだよ!?ざけてんのか!?あぁ!?」
「騒ぐな落ち着け、余計な体力を使うな。楽しみが無くなる」
「いいから離せお前ら!!さっさとコイツをランチにしてや———————え?」
人差し指で俺は伊藤の眼球を抉りとると、一瞬にして夜の静けさが現れる。
だがそれも一瞬。奴は人間が死ぬ前に出す阿鼻叫喚を放つと、俺は構わずもう片方の眼球を抉り出した。
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いぃぃぃぃぃ!!!!」
俺はその眼球を口に入れ飴玉のように舐めますと、手のひらに吐いた。
「悪い悪い。痛いよな?返すよ。だから口開けろ」
「見えない‥‥何も見えないって!!」
「人の話を聞けよまったく。おいお前ら、そいつの口を開けさせろ」
従属達は伊藤の口に親指を入れてこじ開けると、奴の口に放り投げた。
「お、おええぇぇぇぇぇぇ—————っ。もういい!やめて!やめてやめてやめて!離せ!あいつを殴れ!」
「咀嚼させろ」
「御意」
1人の仲間は顎を、もう1人は頭を抑えると強制的に眼球を口の中で破裂させた。
————そして15分。俺は絶え間なく左右と拳を奴の頬に叩きつける。5分のインターバルで己の生力を分け与えて奴の意識を取り戻させる。その繰り返しだった。
「頼む‥‥もうやめてくれ‥‥頼む。俺を殺してくれ‥‥」
「何言ってんだ、死んだらそこで退場なんだぜ?お前に死なんて生ぬるい。一生女を弄び、寝取ったことを後悔しながら自身の寿命が尽きるまで生きていけ」
俺は従属達に伊藤の拘束を剥がさせると、地面に横たわった奴の顔面を手のひらで覆った。
「お前に相応しいエンディングを用意した、その生涯が尽きるまでご覧頂こう」
【エンディングNo.001 王子と18人の花嫁】
———————————————————————
「あ!ハデス様!お帰りなさい!」
「ただいまウサギ。お前達も大丈夫だったか?」
レストランに帰る道中、夜のホテル街を歩くウサギ達を見かけた。闇の力が解け、現実世界へと返ったこの世界はガヤガヤと喧騒があちらこちらに聞こえる。
「あの‥‥ハデスさんごめんなさい。わたしのせいで手が」
「それなら心配ない。既に傷口は塞いである」
ポカンと口を開けてハデスの顔と手を交互に見ると、笑いが溢れた。
「それも闇の力ってやつなんですか?街中の破壊跡も消えてるし、貴方は本当に一体何者なんです?」
「えっへん!ハデス様を傷つけることができる人なんてこの世に居ませんから!」
あたりに元気な笑い声が響くと、俺が苦笑いを浮かべた。
何でお前が誇らしげなんだよ。まぁ確かにこの世にはいないか。
「本当にありがとうございましたハデスさん。最初貴方に出会った時は綾乃を取り戻せるのか心配でしたけど‥‥貴方に出会えてよかったです」
「わたしからもお礼を言わせてください。あの時貴方に諭されていなかったら今頃‥‥‥本当に感謝しかありません」
山崎が、そして桜坂が俺とウサギに頭を下げる。まだほんのりと心が温かくなるのは、まだ俺に善人の片鱗があるということだろうか。
「気にすることはない。俺はあくまで貴様との契約に従い遂行したまでだ。それより山崎、忘れてはいないと思うが貴様にはまだ対価を支払って貰っていない」
「あ、そういえば‥‥忘れてました」
「ちょっと真也君!?何対価って!わたし聞いてない!」
山崎の顔が一瞬にして青ざめると、始めてコイツに会った時のような弱々しい声で嘆願する。
「ごめんなさいハデスさん。ぼくにできることだったらこの生涯をかけてなんだってします!ただ命を対価にというのであれば‥‥僕だけをッ!!」
「980円になります」
涙を流しながら顔を上げたその先には、いつのまにか赤い額縁メガネをかけたウサギが山崎の前に立っていた。
「へ?」
「だから980円です。もしかしてお支払いできませんか?」
今までにない静寂が走ると、それを吹っ飛ばす勢いで桜坂の笑い声が響き渡る。
「闇の力とか凄いこと言っといて、対価はお金なの!?しかも980円って————ラーメン一杯分じゃん!」
「へ?」
ウサギのポカンとした顔の裏で、俺はしっかり焦り倒していた。
「う、ウサギ?980円って、なに?」
「あ!ごめんなさい!ハデス様に言い忘れていました!」
なにを?
「前にメールで送って貰った依頼料金ですけど、ハデス様間違えて0を2個増やしていたので訂正しておきましたよ!流石に人助けにそこまで貰わないと思ったので‥‥」
コイツゥゥゥ!!!!また余計な真似を‥‥‥ッ
すると事情を把握したのか、桜坂は笑みを浮かべながらハデスに尋ねた。
「ふふ、ありがとうございます。ハデスさん?」
コイツ‥‥調子に乗りやがって。
だがウサギがそうした以上。従わざるを得ない。
「そうだなウサギ、素晴らしい気遣いだ。褒めて遣そう——————ッ!」
そうして渋い顔をしながら俺はウサギの頭を撫でる。
時刻は22時。すっかり真夜中となった街中で、赤や青、ピンクなどと派手な蛍光が街を照らす中。雨も雲も晴れ、姿を現した満月の月は固く手を結び、まだ見ぬ明日へ向かって歩き出す2人を照らし続けた。
あとがき
この度は【初めての彼女を目の前で寝取られたので◯殺したら死神と契約したので1億倍でやり返します】をお読みいただきありがとうございました!プロローグからお読みいただいた方も、途中から読んでいただいた方にも感謝でいっぱいです。
これからもできるだけ毎日投稿は続けていきますのでご愛読よろしくお願いします!
ちなみに次話は外伝”伊藤弘樹のとある日常”となります。ハデスが伊藤に見せたエンディングも公開しますのでよろしくお願いします。ちなみにグロです。
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